米国のスコット・ベッセント財務長官が先週の韓米通商協議で「最上の提案(A Game)」だと評価したのは、韓国政府が提示した造船業協力案だったことが分かった。ただし専門家は、今後の交渉過程で米国造船業への現地投資を約束することには、政府は慎重であるべきだと指摘する。立ち後れた米国造船所の現代化には莫大な投資が必要だからだ。
アン・ドックン産業通商資源部長官は26日、仁川(インチョン)空港で、「ベッセント長官が最上の提案だと評価した方策とは何か」と記者団に問われ、「韓国政府が提示した造船産業協力に共感したようだ」として、「韓国企業による対米投資、人材養成、技術協力のような方策を提示した」と話した。
アン長官の言うように、現在米国が渇望しているのは造船業だ。米国の造船所は21カ所に過ぎず、年間で5隻の船舶すら作れずにいる。船舶受注量が世界第2位の韓国は、進んだ技術力にもとづいた協力ができる。すでにハンファグループは昨年、米国のフィリー造船所を買収している。HD現代も今月初めに、米国最大の防衛産業造船企業であるハンティントン・インガルスと了解覚書(MOU)を交わし、技術協力はもちろん、生産人材の教育でも協力することにしている。
軍艦の維持・補修・整備(MRO)と新規軍艦の建造も、協力案として取り沙汰されている。米国の法律は自国の造船所のみに軍艦のMROおよび建造を認めているが、例外条項がある。海外が根拠地となっている米軍艦および沿岸戦闘艦は国外の造船所でもMROが可能となっており、大統領の承認があれば国外の造船所でも新規軍艦を建造することができる。このことと関連して、ジョン・フェラン海軍長官が早ければ今週中にも韓国の造船所を訪問する計画だ。
ただし、米国現地に直接投資するのはコストが非常に高くつくため、国内の造船企業のアプローチは慎重だ。米国内の協力会社、専門人材などの供給網も崩壊しているため、投資のリスク要因も大きい。匿名の貿易団体の幹部はハンギョレに、「米国造船業への現地投資は、確実な投資インセンティブが保障されるまでは、政府は下手に話を切り出してはならない」と述べた。