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韓国国家人権委員長、国際人権機関に「憲法裁判所非難」の書簡を送付

登録:2025-03-04 06:35 修正:2025-03-04 08:33
アン・チャンホ国家人権委員会委員長=チョン・ヨンイル先任記者//ハンギョレ新聞社

 韓国の国家人権委員会(人権委)のアン・チャンホ委員長が、各国の人権機関の等級を決める国内人権機関世界連合(GANHRI)の認証小委員会(SCA)事務局を受け持っている国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)に、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弁護団とまったく同じ論理で憲法裁判所を非難する書簡を送ったことが確認された。人権委はこの過程で、10日に全員委で議決された「尹大統領の防御権保障」案件に関する反対意見は除外し、多数意見だけで作成された決定文を添付して提出した。人権委が独立性を失い、尹大統領を擁護する姿を国際社会に見せ続けることで、長い間、GANHRIでA認証を受けてきた国際的地位の低下が懸念されるという批判の声があがっている。

 3日にハンギョレが確認した人権委のGANHRIへの答弁書によると、アン・チャンホ委員長は「尹錫悦即時退陣・社会大改革非常行動」(非常行動)がGANHRIのSCAに提起した「政府擁護に出た人権委」などの問題に対し、これに反論し憲法裁判所を批判する内容を盛り込んだ答弁書を送った。答弁書には、国民の50%近くが憲法裁判所を信じておらず▽憲法裁判所が法令によって刑事訴訟法を準用せず、証人と尋問時間を制限して不公正で不十分な裁判が行われており▽数人の憲法裁判官たちが属していた団体と過去の行動によって問題になっているとの内容が含まれていた。

 この答弁は、非常行動が先月14日、GANHRI側に「韓国の人権委が独立性を失い、12・3非常戒厳を正当化する案件を議決した」という書簡を送ったことを受け、GANHRIのSCAがこれを添付して人権委に答弁書を要請したことに伴うものだ。GANHRIは5年に一度、各国の人権委の等級を決めるが、昨年10月の韓国の人権市民団体の要請により、12日から開かれる総会で韓国人権委に対する「特別審査」の可否を決める。非常行動の書簡も、この過程で韓国人権委の状況を追加で伝えるためのもの。

 答弁内容を具体的に見てみると、アン・チャンホ委員長は「2020年2月4日に改正された刑事訴訟法によると、検事および警察が作成した被疑者尋問調書でも、公判の準備、公判期日にその被疑者だった被告人または弁護人がその内容を認める場合に限り証拠として使うことができる。ところが最近、憲法裁判所は被疑者だった被告人または弁護人がその内容を認めたことがないにもかかわらず、弾劾審判の証拠として使っている」とし、「弾劾審判と刑事裁判の重要な事実の認定が変わりうる」と指摘した。アン委員長はまた「刑事訴訟法によれば被告人は証言に対する反対尋問権が保障されるにも関わらず、憲法裁判所は原則的にこれを禁止している」と主張した。

 アン委員長が憲法裁を批判して根拠に挙げたのは、「弾劾審判の場合、刑事訴訟に関する法令を準用する」という憲法裁判所法第40条1項だ。ところがこの条項には「憲法裁判の性質に反しない範囲内で」という但し書き規定が設けられている。「憲法裁判の基本的な性質を守るものの、それに反しない範囲内で刑事訴訟法を準用せよ」という意味だ。チョン・ヒョンシク憲法裁判官も「当事者同意のない被疑者尋問調書の証拠認定は不当だ」という尹大統領側の主張に対し、「憲法裁判所は、弾劾審判が憲法裁判であるという事情を考慮し、刑事訴訟法上の専門法則を緩和し適用してきた」と答えている。これは2023年のイ・サンミン前行政安全部長官に対する憲法裁の弾劾審判の際もそのまま適用された。

 憲法裁判所の事情に詳しいある法曹人はハンギョレに「人権委の主張は、憲法裁が刑事訴訟法の手続きを守り、事実上刑事裁判を2回しろということで、最高裁の確定判決内容を見てから弾劾審判の結論を出せというようなもの」だと語った。さらに「『弾劾審判は刑事裁判ではない』という国民の常識を崩す違憲的な主張を、憲法裁判官出身のアン・チャンホ人権委員長が尹大統領代理人団と同じようにするとは思わなかった」と付け加えた。

 アン委員長はまた答弁書に、先月10日に全員委で論議の末に議決された「戒厳宣布で引き起こされた国家的危機に関する人権侵害防止対策勧告および意見表明」(いわゆる「尹錫悦大統領の防御権保障」案件)の決定文だけを添付した。ナム・ギュソン、ウォン・ミンギョン、ソ・ラミ委員の反対意見とキム・ヨンジク委員の別途反対意見は含まれなかった。憲法裁に対する批判意見だけを伝えたわけだ。

 GANHRIのSCAは12日からジュネーブで開かれるGANHRI総会期間中に会議を開き、韓国の人権市民団体が昨年10月に要請した韓国人権委に対する特別審査を行うかどうかを決める。アン委員長は8日にジュネーブで開かれる総会に出席するために出国する。人権委はこれまでA認証を維持してきたが、李明博(イ・ミョンバク)大統領の在任期間中、ヒョン・ビョンチョル委員長時代に等級保留になったことがある。

 人権委のある関係者はハンギョレに「アン・チャンホ委員長の書簡は多数委員の決定文よりさらに進んで憲法裁判所を非難し、裁判官の過去の行跡まで取り上げて批判した」とし、「もし大統領が弾劾されても不公正な決定なので認められないと、主張していることに他ならない」と強く批判した。同関係者はさらに「人権委が大統領を擁護する機関に転落したという国際的な恥さらしになるだろう」と語った。

コ・ギョンテ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1185099.html韓国語原文入力:2025-03-03 20:25
訳H.J

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