尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領など「内乱罪の被疑者と被告人」たちの防御権を保障するよう勧告する内容が含まれた案件が10日、国家人権委員会(人権委)全員委員会で修正議決された。尹大統領の非常戒厳宣布に対する意見表明すらしなかった人権委が、内乱を否定し、極右勢力が結集する雰囲気に乗って、むしろ尹大統領の防御権の保障を勧告することで意見がまとまった。この日、人権委会議を参観した野党議員たちは「人権委が死亡した日」だと批判した。
人権委は10日、全員委員会を開き、「戒厳宣言によって引き起こされた国家的危機克服対策の勧告の件」(危機克服案件)を再上程して議論した後、修正を経て賛成6票(アン・チャンホ、キム・ヨンウォン、イ・チュンサン、ハン・ソクフン、イ・ハンビョル、カン・ジョンヘ)と反対4票(ナム・ギュソン、ウォン・ミンギョン、キム・ヨンジク、ソ・ラミ)で可決した。
これに先立ち、キム・ヨンウォン委員が代表発議したいわゆる「危機克服案件」は、尹大統領の非常戒厳宣布を正当化し、内乱罪被疑者らの防御権だけを強調する内容だったため人権団体・市民団体や人権委の職員らの強い反発を買い、先月13日の全員委員会への上程が失敗に終わり、この日に再上程が予告された状態だった。同日の全員委の議論では、当初案件に含まれていたハン・ドクス首相弾劾訴追案の撤回と迅速審理勧告は削除されたが、修正案には、憲法裁判所は尹大統領弾劾審判の際に刑事訴訟に準ずる厳格な適法手続き原則を遵守し▽捜査機関は在宅起訴の捜査原則を念頭に置き▽憲法裁判所にパク・ソンジェ法務部長官などの弾劾訴追の乱用を積極的に検討し、乱用が認められた場合は却下するよう勧告する内容が含まれた。同日の会議では、アン委員長が早くから賛成の意を示し、意見表明を保留していたカン・ジョンヘ委員が修正案に賛成したことで、議決につながった。反対した委員の意見を摘示する手続きを経た後、早ければ1週間以内に実際の勧告または意見表明が行われる。
人権委内外では同日上程された勧告案件が当初極右勢力結集のために使われかねないという懸念が高まっていたが、それは結局現実になった。「大統領を弾劾するならば、国民は憲法裁判所を叩き壊して跡形もなく消してしまうべきだ」と主張したキム・ヨンウォン委員はこの日フェイスブックへの投稿で、全員委会議の開催を知らせた。さらに「極左派人権団体活動家ら50人余りが会議場の廊下に乱入し暴動を始めた」とし、先月13日、この案件の上程が失敗に終わった状況を説明し、尹大統領支持者らの「行動」を事実上促した。尹大統領の支持者らは同日午前から人権委の建物に乱入し、人権団体の出入りを阻止し、全員委会議を傍聴しながら、案件に反対する委員らの発言が出る度に野次を飛ばして怒号を上げた。
全員委会議を傍聴した最大野党「共に民主党」のコ・ミンジョン議員は議決後、記者団に対し「イ・チュンサン委員とカン・ジョンヘ委員は明確に(尹大統領の防御権保障案件に)反対意思を示してきたのに、今日になって突然賛成に転じた理由は何なのか」とし、「強圧的な雰囲気と行動があった。暴力が勝利した日」だと述べた。祖国革新党のシン・ジャンシク議員も「いくら言葉で言いつくろっても、尹錫悦と内乱勢力を解放し、裁判を遅延させるよう促す決定を人権委員会が下した日」だとしたうえで、「人権委員会は今日死亡した。尹錫悦の国選弁護人を買って出た人権委員たちによって命が絶たれた」と批判した。全国公務員労組人権委支部も声明を出し、「国家人権委員らの暴挙に憤りを隠せない」とし、「『内乱同調』案件を通過させた国家人権委員会委員長アン・チャンホ、常任委員イ・チュンサン、キム・ヨンウォン、人権委員ハン・ソクフン、イ・ハンビョル、カン・ジョンヘに対し、最後まで審判を下す」と述べた。