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半導体競争力「急場に立った」サムスン…「技術通オールドボーイ」が復帰

登録:2024-05-21 19:22 修正:2024-05-22 11:23
サムスン電子の瑞草社屋/聯合ニュース

 「半導体のトップ」を突然交替したサムスン電子の動きからは、緊迫した空気が読み取れる。定期人事から半年足らずでなされた「ワンポイント人事」であるうえに、会社が公言した世代交代の基調にもそぐわない「オールドボーイ」の帰還であるためだ。高帯域幅メモリー(HBM)をはじめとする半導体事業の状況が、知られている水準よりもっと悪いのではないかという噂が出ているのもそのためだ。産業環境が急変する時代に、オールドボーイを呼び戻したサムスン電子の戦略が通じるかに関心が集まっている。

 21日のサムスン電子の発表によれば、チョン・ヨンヒョン副会長(64)は、未来事業企画団長を務めて6カ月も経たずに半導体(DS)部門長の座に移ることになった。未来事業企画団は昨年11月末、サムスン電子が「既存事業の延長線上にない新事業を発掘する」として新しく作った組織だ。当時、サムスンSDIの理事会議長だったチョン副会長が初代団長を務めたが、今回再び半導体の首長に移ることになったのだ。そのため、この日の人事からは焦りが読み取れるという評価が出ている。

 これにはサムスン電子の半導体がそれだけ危急な状況だという判断が作用したと分析されている。昨年までは業況悪化で実績不振な側面が大きかったが、今年に入ってサムスン電子の半導体は、激化した人工知能(AI)ブームのなか「取り残されている」という評価を受けている。AIの必須材として浮上した高帯域幅メモリー競争で後れを取ったためだ。ライバル会社は今年3月ごろにはNVIDIAに第5世代(HBM3E)製品の供給を開始したのに対し、サムスン電子はいまだにNVIDIAに第4世代(HBM3)と第5世代のサンプルの検証を受けている。今回の発表をめぐり、キョン・ゲヒョン社長に対する「問責性人事」ではないかという裏話が出ている。

サムスン電子のDS部門長に選任されたサムスンSDIのチョン・ヨンヒョン前副会長が2021年3月、サムスンSDIの定期株主総会に参加した時の姿/聯合ニュース

 半導体事業全般においても暗雲が立ち込めている。今年第1四半期にも赤字が続いたファウンドリ事業は、シェアも下り坂を辿っている。台湾の市場調査機関「トレンドフォース」の集計によれば、サムスン電子のファウンドリ市場シェアは、2021年の15.5%から昨年は11.3%に落ちた。このようなムードは、今年第1四半期の実績にもそのまま表れている。サムスン電子の半導体部門は、今年第1四半期の業況改善に支えられ黒字に転換したが、営業利益の規模はSKハイニックス(2兆8900億ウォン=約3300億円)より小さい1兆9100億ウォン(約2200億円)にとどまった。ハイニックスの2倍にのぼる売上規模を考慮すれば、収益性は大きく劣ることになる。

 サムスン電子の内外では、チョン副会長がバッテリー事業で展開した戦略を再び駆使するかに注目している。サムスン内部では、チョン副会長がサムスンSDIの代表取締役として在職した際に無理な「規模拡大」ではなく安定した成長を導いたという評価を受けて抜擢されたといわれている。積極的な受注と大規模な投資で顧客企業を確保した他の二次電池メーカーとは異なり、サムスンSDIはシェアの拡大をあきらめ、事業を再点検するなど、内実を固めることに注力した。

 ただ、最近の急激なAI技術の発展や米中紛争で急変している半導体産業にも、このような戦略が通じるかは未知数だ。「オールドボーイ」を呼び戻したことに対する期待と懸念が共存している。チョン副会長は、チョン・ヒョンホ副会長(64)と共にサムスン電子の最高齢役員であり、会社が昨年末の人事の際「若いリーダー」と「世代交代加速化」を強調したのとは相反する人物だ。ある業界関係者は「人事はメッセージというが、今回の人事では明確なメッセージを見出しにくい状況」だとし、「危機的局面であるだけに、人事も保守的に行なったのではないか」と述べた。

イ・ジェヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/1141482.html韓国語原文入力:2024-05-21 18:19
訳J.S

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