米国ニューヨーク市のある男性が、法令を悪用してマンハッタンのランドマークであるニューヨーカーホテルに5年間無料で宿泊し、ホテルの所有権まで求め、検察に起訴されたことが明らかになり、注目を集めている。
23日、米国AP通信の報道によると、マンハッタン地方検察は14日(現地時間)、ミッキー・バレット氏(48)をニューヨーカーホテルの所有権を主張する虚偽の書類を提出した容疑(詐欺)などで起訴したことを明らかにした。
バレット氏の「度を越した」欲は6年前にさかのぼる。ロサンゼルスからニューヨークに来たバレット氏は2018年6月、ニューヨーカーホテルに1泊を予約した。ところがバレット氏は、ニューヨーク市の賃貸料安定化法令によって、1969年以前に建てられた建物のシングルルームの借家人は、6カ月間の賃貸を要請できる権利があることを知ることになった。賃貸料安定化法令は、高額なことで有名なニューヨークの賃貸料問題を改善して借家人の権利を保障するために作られたが、人々にあまり知られていなかった法令の条項をバレット氏が活用したのだ。
バレット氏は、1930年に建てられたこのホテルに、1泊の費用(200ドル)を払ったことによって、自身は「借家人」になったとして、6カ月間賃貸するとホテルに要求した。当然、ホテルは要求を受け入れなかったが、バレット氏は自身の持ち物を客室に残したまま、ホテルを相手取り訴訟を起こした。賃貸料安定化法令によって、自身が不当に追い出されたというバレット氏の主張は裁判所で認められ、裁判所はバレット氏がホテルの客室に滞在できるよう命令した。AP通信は、ホテル側の弁護士が裁判に出席しなかったためバレット氏が勝てたと報じた。
しかし、ホテル側は、バレット氏と正式な賃貸契約を結ぶことを望まなかった。それでも裁判所の決定によって、バレット氏をホテルの客室から追い出すこともできなかった。6カ月間の賃貸の要請を拒否したホテル側は、バレット氏の客室占有に対して特別な措置は取れず、どうすることもできない状況が5年間続いた。バレット氏は昨年7月まで5年間、賃貸料を1セントも払わずにホテルの客室で暮らしたという。
問題は、バレット氏の欲がそこで止まらないことで発生した。バレット氏は2019年、ホテルの所有者である統一教会(世界平和統一家庭連合)がホテルの所有権を自身に移転したという虚偽の書類をニューヨーク市のシステムに登録した。検察による捜査の結果、バレット氏はその後、自身が所有者になったとしてホテルの他の借家人に賃貸料を要求し、ホテルの銀行口座を自分のものとして移転しようとしたことが分かった。ホテルの上下水道の料金を納めるニューヨーク市環境保護局にも、自身の名前を登録した。また、ビジネスプラットホームの「リンクドイン」にも、自分をホテルの所有者だと紹介した。最終的に統一教会は、リンクドインの表示などを問題にして、バレット氏に対して民事訴訟を起こし、裁判所はバレット氏がホテルの所有者だと主張することを禁止する命令を下した。
マンハッタン地方検察は、バレット氏が提出した虚偽の書類などに対する捜査に着手した。検察は、2019年5月から2023年9月の間、バレット氏がホテルの所有者だと主張する目的で虚偽の書類を14件提出し、10回あまり侮辱などを行った疑惑で起訴した。マンハッタン地方検察のアルビン・ブラッグ検事は「バレットは都市のランドマークの一つであるこのホテルが自分の所有物だと繰り返し偽りの主張を行った」と明らかにした。
バレット氏はAP通信に「私はいかなる詐欺も犯していない。私は1セントも儲けていない」と主張した。また、統一教会と法的な争いを行うことについて、「統一教会の利益を否定する行動主義」だとする荒唐無稽な主張もした。AP通信は、統一教会は現時点ではバレット氏と残りの民事訴訟を進行中という理由で立場を明らかにしなかったと報じた。