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[コラム]ジェノサイド、ホロコースト、イスラエル

登録:2024-01-23 07:58 修正:2024-01-23 09:00
//ハンギョレ新聞社

 通常「集団虐殺・殺害」と訳されるジェノサイドは、人を意味するギリシャ語「genos(ジェノス)」と、殺害を意味するラテン語「cide(カイド)」を合わせて作られた造語である。ポーランドの法律家ラファエル・レムキンが1944年にこの用語を作り、ナチスの組織的な人種虐殺の説明に用いた。ジェノサイドは1948年、国連ジェノサイド条約で国際法の地位を得た。同条約は「国民的、人種的、民族的又は宗教的集団を全部又は一部破壊する意図をもって行われた」行為をジェノサイドと定義しており、条約締結国に対してジェノサイドを防ぎ、犯罪者を処罰するよう求めている。

 その後、国際社会では複数回にわたって恐ろしいジェノサイドが起こった。1994年にルワンダではフツ族がツチ族などを集団虐殺した。1995年にはボスニア・ヘルツェゴビナのスレブレニツァでセルビア系勢力がイスラム教徒を集団虐殺した。国連をはじめとする国際社会が対応に当たった。

 今度はイスラエルのガザ攻撃がジェノサイドの審判に立たされた。ガザではこの3カ月間、イスラエルが武装組織ハマスの掃討を大義名分として爆撃を行い、民間人の死者が2万5千人を超えた。これに対し南アフリカ共和国が「イスラエルはパレスチナ住民を抹殺しようとしている」として国際司法裁判所(ICJ)に提訴したのだ。今月11日から2日間にわたって行われた審理で南アは「イスラエルはパレスチナ住民を無差別に殺害し、民間のインフラをすべて破壊している」、「イスラエルの攻撃は直ちに止められるべきだ」と主張した。これに対してイスラエルは「イスラエルは民間人の被害を減らそうと努力しており、国際法に則って行動している」と反論した。

 今回の提訴が直ちにパレスチナ住民のひどい苦しみを和らげるかは疑問だ。何よりも判決までには何年もかかる。ジェノサイドは戦争犯罪や人道に対する罪とは異なり、容疑者の犯罪意図を立証しなければならないという困難もある。またICJの判決には法的拘束力があるが、実際に実行されるかは別の問題だ。ICJは昨年、ロシアにウクライナ侵略の中止を命じたが、ロシアは従っていない。

 ユダヤ人は約80年前、ナチスによって絶滅の危機に直面した。ホロコーストは彼らが体験した恐ろしい苦しみを思い返す用語であり、二度とそのようなことが起きないようにしようという誓いだ。しかし今回、まさに彼らが逆に集団虐殺の法廷に加害者として立ったというのは歴史の皮肉だ。もはや過去を盾にして自らの行為を正当化することはできない時代となったことを意味するのではないか。

パク・ピョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1125413.html韓国語原文入力:2024-01-22 15:50
訳D.K

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