韓国で現職の検察幹部らが、4月10日の国会議員総選挙への出馬に向けた不適切な行動により最高検察庁の監察を受けることになった。イ・ウォンソク検察総長が激怒し、左遷の人事発令を出して監察を指示したということだ。しかし、彼らの行動は検事個人の逸脱にとどまる問題ではない。現政権発足以来深刻になった検察の「政権癒着」が生んだ結果であり、ハン・ドンフン前法務部長官とイ・ウォンソク総長をはじめとする検察指揮部に根本的な責任がある。
最高検察庁は先月29日、ソウル中央地検のキム・サンミン刑事9部長とパク・デボム馬山支庁長をそれぞれ大田高等検察庁と光州高等検察庁に人事措置し、監察と懲戒手続きを進めると明らかにした。彼らが検察の政治的中立義務に違反したというのが理由だ。キム前部長は昨年の秋夕(旧暦8月15日の名節)の頃、知人たちに「私は骨の髄まで昌原(チャンウォン)の人間だ」と、総選挙出馬を暗示する携帯メールを送り、パク前支庁長は総選挙と関連して外部関係者と不適切な接触をしたという疑惑がもたれている。公職者の「政界直行」はそれ自体が非常に不適切だが、捜査権と起訴権を持つ現職の検察幹部の場合、より一層危険だ。検事が自分の政治的な目的のために捜査結果を歪曲し、罪のない人を起訴しうるという疑いを抱かれるからだ。捜査機関が政治的な目的で公権力を行使するなら、民主主義は決して守られないだろう。
イ・ウォンソク総長は彼らの行動について報告を受け「決して容認できない行為」と激怒したという。しかし、ハン・ドンフン前長官とイ総長の体制で、検察の政治的偏向はさらに激しくなった。ハン前長官とイ総長は任期中、最大野党である「共に民主党」のイ・ジェミョン代表に対する捜査を全方位的に進めた一方、キム・ゴンヒ女史の株価操作など不正疑惑に対する捜査はまともに行わなかった。過去の検察は、政治的捜査で与野党の機械的なバランスを取ろうとするふりなどもしたが、今の検察は野党だけを露骨に狙っている。また「梨泰院(イテウォン)惨事(雑踏事故)」など、現政権に不利な捜査はいい加減に済ませ、「統計操作疑惑」など前政権を狙った捜査には熱を上げる。検察総長出身の大統領を保衛するために政府に批判的なマスコミをむやみに捜査する。ついにこれを主導した法務部長官は、与党の非常対策委員長に直行することとなった。結局このような雰囲気によって、現職の検察幹部らが総選挙出馬の意思を露骨に示すほど、組織の健全さが損なわれたのではないか。総選挙に出馬しようとする現職検事を懲戒したからといって解決できる問題ではない。イ・ウォンソク総長をはじめとする検察首脳部の態度から変わらなければならない。