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韓国軍・政府、北朝鮮偵察衛星に異例の警告…「南北軍事合意」廃棄へ口実作りか

登録:2023-11-21 06:04 修正:2023-11-21 09:55
合同参謀本部作戦本部長のカン・ホピル中将が20日、ソウル龍山区の国防部で、北朝鮮の軍事偵察衛星打ち上げに備え、北朝鮮に向けた警告声明を発表している/聯合ニュース

 北朝鮮が軍事偵察衛星を打ち上げる兆候が見られるとし、韓国軍が重ねて事前警告を行った。軍が北朝鮮の武力示威前に警告メッセージを出したのは初めて。前例のない動きをめぐり、さまざまな解釈が飛び交っている。

 合同参謀本部のカン・ホピル作戦本部長は20日、国防部が北朝鮮に向けて発表した「警告声明」で、「北朝鮮が韓米同盟と国際社会の度重なる警告にもかかわらず、『軍事偵察衛星』の打ち上げを強行しようとしている」とし、「(3回目の)軍事偵察衛星の打ち上げを直ちに中止するよう厳重に警告する」と述べた。カン本部長は「北朝鮮が警告にもかかわらず軍事偵察衛星の打ち上げを強行した場合、韓国軍は国民の生命と安全を保障するために必要な措置を講じる」と付け加えた。

 さらに、「北朝鮮の軍事偵察衛星は、韓国に対する監視偵察能力を強化するためのもの」だとし、「9・19南北軍事合意によって接敵地域(敵と接した地域)の情報監視活動に対する制約を受け続けるのは、軍の態勢を大きく阻害し、国民の生命と安全を守れない結果を招く」と述べた。「必要な措置」が南北軍事合意の効力の一部停止であることを明確にしたのだ。

 南北軍事合意は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が2018年9月19日、平壌で開かれた第3回南北首脳会談で合意したもので、軍事境界線を基準に地上は各5キロメートル、海上は各40キロメートル、空中は最大各25キロメートルの緩衝区域を拡大し、南北の偶発的な軍事衝突を防ぐことを骨子としている。

 前日にもシン・ウォンシク国防部長官が韓国放送(KBS)の「日曜診断」に出演し、「1週間前後に(北朝鮮が軍事偵察衛星を)打ち上げる準備が着々と進められている」とし、遅くとも今月中に(北朝鮮の軍事偵察衛星が)打ち上げられると断定した。

チョ・テヨン国家安保室長(右から4番目)が20日午前、ソウル龍山の大統領室庁舎で、国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開いている=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 国家安全保障会議(NSC)も開かれた。同日午前、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が英国とフランス訪問に出かける前、北朝鮮の武力示威がない状況で会議が行われたのだ。チョ・テヨン国家安保室長ら会議の出席者は、「大統領の海外訪問中、安全保障に一寸の隙もないよう万全を期していく」とし、「偵察衛星の打ち上げや中・長距離弾道ミサイルの発射など、北朝鮮による挑発の可能性に備え、韓米同盟や韓米日協力などを通じて必要な措置を進める」と述べた。

 軍とNSCが北朝鮮に対し異例の事前警告を行ったのは、南北軍事合意を廃棄するための準備作業とみられている。北朝鮮に対する警告に劣らず、国内世論を固めるという目的を帯びているということだ。延世大学統一研究院のキム・ジョンデ客員教授(元正義党議員)は、「このような警告メッセージを出せば、かえって衛星を打ち上げるよう北朝鮮を刺激する効果がある。南北軍事合意を廃棄するための事前手続きとしか思えない」と語った。

 尹大統領は、AP通信が14日付で報じた書面インタビューで、「北朝鮮が軍事偵察衛星の打ち上げに成功すれば、これは北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)能力のさらなる上昇を意味する。対策の強化が必要だ」と述べた。大統領室は、北朝鮮が軍事偵察衛星を打ち上げた場合、これ以上南北軍事合意を維持できないという立場だ。

 尹大統領の頻繁な外遊に対する厳しい世論を意識したものという分析もある。北韓大学院大学のキム・ドンヨプ教授は、「現政権に入って、軍が国内政治に利用する目的で北朝鮮の挑発が差し迫っていると主張するケースがたびたびあった。今回も尹大統領の外遊を擁護するなどの目的で、(軍が)声明を発表したのではないかと思う」と語った。

シン・ヒョンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1117091.html韓国語原文入力:2023-11-21 02:46
訳H.J

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