イスラエル軍の退避通告を受け、ガザ地区の北側から南側に避難した北部の住民たちが、南部でも人道危機と頻繁な空爆にさらされ、再び北部に戻っている。ガザ地区内のどこも安全ではないと、パレスチナ住民たちは嘆く。
BBCの報道によると、ガザ地区の国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のトーマス・ホワイト事務所長は「人道主義の危機と南部に対するイスラエル軍の空爆で、難民の一部は北部に戻っている」と伝えた。
■「イスラエルは、ガザ南部のハンユニスは安全地帯だと言っていたが…」
ホワイト所長はさらに「北部の人々は家や仕事、生活などすべてを残し、避難場所を求め孤軍奮闘して南部まで来たが、南部の状況は悲惨だ」とし、「避難民のほとんどが一日1リットルだけの水と、小さなパン1、2個で生活している。食糧は不足しており、多くの人が飲み水として使えない水を飲んでいる」と伝えた。
ガザ地区南部の主要都市ハンユニスに滞在している避難民のリヤド・ジャアバスさんは、「我々は(北部の主要都市)ガザシティから追放された。彼ら(イスラエル軍)は、ハンユニスは安全だと言っていたが、今ではガザ地区のどこにも安全な場所はない」と語った。
イスラエル軍は13日から15日までの3日間、3回にわたってガザ地区北部の住民110万人にワディ・ガザ(ガザ渓谷)以南に移動するよう通告した。20日、イスラエル軍がガザシティ上空に撒いたビラには「ワディ・ガザ以南に移動しない住民はテロ組織の同調者とみなされる可能性がある」という警告が書かれていると、BBCは報じた。
しかし、南部に避難した住民たちは凄惨な状況にある。南部のハンユニス近くには約60万~70万人の避難民が押し寄せたが、居場所が見つからず、食堂や病院などで寝泊まりするか、路上で生活している。国連が運営する保護所では収容定員の数十倍の人が暮らしている。国連はガザ地区の人口(約220万人)の3分の2程度に当たる140万人が避難民になったと推定した。
■ 国連の保護所には適正人数の11倍を超える避難民
南部の住民たちも自宅に数十人の難民を受け入れるのに苦労している。AP通信によると、ハンユニスに住む33歳の女性ユスラ・アブ・シャレクさんは、自宅で70人の避難民とともに暮らしているという。電気は途絶え、水は1人当たり1日300ミリのみ配給される。
朝になると2人の子どもに食べさせるパン1袋を手に入れるため、パン屋に数時間ずつ並ぶが、家に滞在している数十人の子どもたちの分をどのように手に入れたらいいのか分からない。それでもシャレクさんは、母親のいる20分ほど離れた国連の保護所よりは、自分の家の方がましだと語る。適正収容人数の11倍を超える人数を受け入れた国連の保護所では、男女が同じトイレを使っており、外にはゴミが散乱していると話した。
パレスチナ人たちが深刻な人道危機に追い込まれている中でも、爆撃は続いている。イスラエル軍は24日、ガザ地区で400以上の目標物を打撃したと発表した。この中には、ガザ中部のアルシャティ難民キャンプも含まれている。ガザの保健省は同日、この24時間でイスラエルの爆撃により704人が死亡したと発表した。ガザの保険省によると、7日から同日までガザでは2360人の子どもを含む5791人が死亡した。負傷者は前日までに1万5273人にのぼる。