核兵器を搭載できる米オハイオ級弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)が42年ぶりに釜山(プサン)の作戦基地に入港した。米国の戦略原子力潜水艦の釜山寄港は、南北が合意した「朝鮮半島非核化宣言」(1992年2月19日発効)に違反するのではないか。
国防部は19日、「法的検討の結果、違反しないと考えている」と表明した。朝鮮半島非核化宣言第1項は「南北は核兵器の試験、製造、生産、受け取り、保有、貯蔵、配備、使用を行わない」と規定している。朝鮮半島非核化宣言は、韓国が北朝鮮に非核化を要求するための重要な論理的、現実的根拠だ。もし韓国がこれを破れば、北朝鮮に非核化を要求する主要な大義名分が動揺する。
米戦略原子力潜水艦の釜山寄港と朝鮮半島非核化宣言との関係を判断するには、米原潜の種類をまず確認しなければならない。原子炉を動力として使用する米国の潜水艦は、大きく3種類に分けられる。攻撃型原子力潜水艦(SSN)、巡航ミサイル原子力潜水艦(SSGN)、核弾頭を搭載する潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)で武装した弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)だ。SSNは魚雷、SSGNはトマホークのような巡航ミサイル、SSBNは核弾頭の付いた弾道ミサイルを搭載する。
6月16日には米海軍のSSGN「ミシガン」が釜山作戦基地に入港している。この潜水艦は射程距離2500キロのトマホークミサイル150発あまりで武装可能だが、核兵器は搭載されていないため、通常は「戦略」資産には分類しない。
これとは異なり、今月18日に釜山に入港した米海軍「ケンタッキー」(SSBN-737)は核兵器を搭載できるSSBNだ。しかし、この潜水艦に核兵器が搭載されているかどうかは分からないというのが国防部の説明だ。通常、米国のSSBNが外国に寄港しても、その中に実際に核兵器が搭載されているかどうかを米国は知らせてはくれないということだ。
ただし、米国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官を務めるカート・キャンベル氏の発言に照らすと、今回釜山に入港した米海軍のSSBNには核兵器が搭載されている可能性が高い。キャンベル氏は18日、ソウル龍山(ヨンサン)の大統領室での初の核協議グループ(NCG)会議の終了後、SSBNの釜山寄港を公開した際に「核抑止を強く信頼するに足るものとして保ち続けることを願うという明確な意志であり、一連の活動」だと述べた。この発言に照らすと、今回釜山入りした米海軍のSSBNには核兵器が搭載されている可能性が高い。
国防部の「米国のSSBNが釜山に寄港しても、朝鮮半島非核化宣言には違反しないと考えている」との主張は、SSBNの一時的な入港は非核化宣言違反ではないとの判断にもとづいたものだ。具体的には、SSBNの釜山寄港が朝鮮半島非核化宣言の第1項と抵触しうる部分である「受け取り(receive)」、「貯蔵(store)」、「配備(deploy)」には当たらないというのだ。
軍事手続き上、米国の核兵器を朝鮮半島に貯蔵するには、まず「受け取り(receive)」を行わなければならない。受け取りとは、空港や港湾などに入ってくる外国の人員、装備、物資を韓国が受容し、使用するために準備する軍事的手続きをいう。
今回は米海軍のSSBNが釜山作戦基地の港に「寄港(visit)」したとはいえ、核兵器を韓国の地に下ろさずそのまま持ち帰るのだから「受け取り(receive)」ではないということだ。
しかし、核兵器を搭載した米国のSSBNが42年ぶりに韓国入りしたというのに、受け取りか単なる寄港かを問うのは意味のない言葉だけの論争だとの指摘もある。今後、SSBNなどの核武装が可能な米戦略資産がより頻繁に、かつ周期的に朝鮮半島に来ることになれば、それは「配備」に近いという解釈が可能になるからだ。4月に韓米の首脳が発表したワシントン宣言は戦略資産の「定例的可視性(regular visibility)」に言及しているため、「SSBNの寄港は一時的」との国防部の説明は苦しい釈明に聞こえる。