9月16日(現地時間)、イランの首都テヘランで、ヒジャブをきちんとかぶっていなかったとの理由で道徳警察に捕まった22歳のマフサ・アミニさんが死亡した。アミニさんの診療記録を見た医師たちが殴られて死んだ可能性を提起したことで、イランの女性たちは怒った。翌日から「女性、命、自由」を叫ぶイラン反政府デモが起き、デモは2カ月目に入った。その間の死者は200人を超え、中高校生から1979年のイスラム革命を経験した世代までもが街頭に出ている。彼らはなぜ勇猛なライオンのようにデモを続けているのか。イランの青年世代を研究してきたソウル大学アジア研究所のク・ギヨンHK研究教授がデモ参加者に問いを投げかけた。街頭に出た「テヘランの獅子たち」が答える。(編集者)
9月にヒジャブ取り締まりで捕まった22歳のマフサ・アミニさんの死は、イランの女性たちの激しい共感を得てデモへと拡大した。「私も死ぬ可能性があった」と怒った女性たちは勇敢にヒジャブを脱ぎ捨て、見てくれだけの共和国の象徴を燃やしてしまった。
ヒジャブを脱いで髪をしっかりと結った10代、20代の女性デモ隊のそばにはイランの男性たちが立っていた。「私の姉と妹、あなたの姉と妹、私たちの姉と妹」のために彼らは共にデモに立ち上がった。韓流にはまり、イランから韓国に留学している25歳の男性アリ・レジャさん(仮名)は、昼夜を問わずデモ関連の投稿を上げている。ソウルで行われる週末集会に毎週参加しているアリ・レジャさんに聞いた。「なぜヒジャブ反対デモに参加しているのか」
「マフサ・アミニさんの死から始まってはいるものの、このデモはこれまでの数年間続いてきたデモの延長線上にあるんです。これまで人々の不満がうっ積していたのです」。アリ・レジャさんは答えた。2009年の大統領選挙の結果を不服としたグリーン・ムーブメントの時はまだ、イラン人たちはイスラム政権の下で変化をなし遂げられると考えていた。しかし今は、この体制の下では何も変えられないということを知っているということだ。「人々は怒りに満ちています。この怒りが人々を街頭に導いたんです。この怒りが強すぎるから、死をもって脅す政権も怖くありません」
イランの男性も自由を抑圧されてきた。イスラム的規範を強制することによって発生する「自己決定権の侵害」は男女を区分しないからだ。男性は半ズボンが履けず、恋人と手をつなぐ自由も得られない。道徳警察は女性だけでなく、これらの男性も捕らえる。アリ・レジャさんも取り締まりを経験している。
「ただ友達の女の子と公園を歩いていたら、パトロール中の(道徳)警察に捕まったんです。『なんで未婚の男女が一緒に歩いているのか、どういう関係なのか』って。ワゴン車に乗せられて教育センターに引き渡されました」。アリ・レジャさんはすぐに解放されたが、一緒にいたガールフレンドはさらに尋問された。「『お前、服がちょっと変だな』って。その場で理由を作っている感じでした。罰金を払わせようとして。(ヒジャブ取り締まり後に死亡した)アミニさんもそんな風に捕まったんでしょう」
イランの男性たちは、自身も強圧的な全体主義的政権の被害者だと証言する。金融業界で働く1981年生まれのモハンマドさん(仮名)は1979年のイスラム革命直後に生まれ、「ムスリムキッズ」として教育を受けた。自分のことを抑圧的な社会環境で育った「抑圧された世代」と呼ぶ。「イランの政治構造はこの40年間変わっていません。全体主義的な政権は多様な民主的意見を無視してきました。私たちの世代はそれを無理やり受け入れるしかなかったんです」
旧世代はイラン社会で息を殺して2つの顔を使い分けて生きていくしかなかった。しかし今回のデモを主導する「インターネット世代」は違う。「最近の10代、20代はインターネットと衛星チャンネルを通じて外国の同年代がどんな生活を送っているのか毎日見て育ちました。そんな子たちに保守的な宗教人の言葉が通じますか。今も未来がないので、彼らは死を恐れていません」
今のデモ状況は危険で厳しいが、アリ・レジャさんは誓う。イランを取り戻すと。イラン人の民主主義に対する熱望を必ず示すと。「イランの自由のために、もう一度頑張ってみます」