本文に移動

コロナ禍でもフレックス勤務を「選択」できなかった…空気のような女性差別のため

登録:2022-05-17 00:37 修正:2022-05-17 07:47
世界10カ国の職場で働く女性の約半数が職場内でのジェンダー差別やバーンアウトなどを理由に職場を2年以内に辞めたがっているとする調査結果が公開された=クリップアートコリア//ハンギョレ新聞社

 米国、英国、日本など世界10カ国で働く女性の約半数が、職場内での差別やバーンアウト(燃え尽き症候群)などを理由に、職場を2年以内に辞めたがっているとするアンケートの調査結果が公開された。一方、女性を支持し包容的な文化を備えた企業で働く女性は、9%だけが1~2年以内に職場を離れたいと答え、企業が女性労働者の流出を防ぐためには、コロナ禍の期間中に後退した職場内でのジェンダー平等を改善しなければならないとする指摘が出ている。

 世界的な企業コンサルティング会社のデロイトグループが16日に発表した報告書『2022職場女性サーベイ』によると、コロナ禍がワーク・ライフ・バランス(work-life balance・仕事と生活のバランス)やウェルビーイング(心身と社会的な健康)などの女性の生活やキャリアに深刻な影響を及ぼしたことが調査でわかった。回答者の半数以上(53%)は、ストレスの水準が1年前より高くなったと答え、46%がバーンアウトを感じていると明らかにした。デロイトグループは、10カ国(オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、ドイツ、インド、日本、南アフリカ共和国、英国、米国)の女性5000人を対象に、昨年11月から2月にかけアンケート調査を行った。

 特に注目される点は、「ジェンダー平等に先進的な組織」で働く女性の実態は、それとは異なるということだ。それらの企業で働く女性のうち、バーンアウトを経験したと答えた回答者は、全体の3%に過ぎなかった。ジェンダー平等組織は、真の包容的な文化を育成し、女性を支持する企業であり、全回答者のうち5%がこのような企業に勤務していることが調査でわかった。

 報告書は、職場で働く女性のバーンアウトが「大量退職」(Great Resignation)につながりうると予想した。大量退職は、コロナ禍の後、米国の労働市場から相当数の労働者が自発的に職場を離れる現象を指す新造語だ。調査対象の女性の52%が、2年以内に現在勤務している職場を離れると答え、10%だけが5年以上残る計画だと明らかにした。一方、ジェンダー平等企業で働く女性は、現時点では離職を考えてはおらず、9%だけが今後1~2年以内に勤務する職場を離れる計画だと答えたことが調査でわかった。

 コロナ禍のもと、在宅勤務や混合型勤務を導入する企業が増えたが、職場内のジェンダー差別を経験してきた女性労働者たちは、簡単にはフレックス勤務制度を選択できなかったことが明らかになった。企業が勤務場所や時間に対するフレックス勤務制度を提示したと答えた人は33%にとどまった。全回答者のうち94%は、フレックス勤務制度を要請することは、昇進に否定的な影響を及ぼすと判断した。

 勤務形態の「ニューノーマル」(コロナ時代以降の新たな標準)に対する懸念が現実化した点もとらえられた。「ハイブリッド勤務方式」(遠隔勤務と職場への出勤が混合した形態)で働く女性のうち58%は、業務の過程で疎外感を感じると答え、45%は、リーダーに自分の業務能力が十分に示されておらず、重要な機会を逃すことがありうると懸念した。ジェンダー平等企業で働く女性は、そうではない女性に比べ、ハイブリッド勤務に肯定的な反応を示した。業務過程で疎外感を感じたとする回答は14%にとどまり、自身の業務能力がリーダーに十分に示されていないとする回答も7%に過ぎなかった。

 過去1年間に「微妙な差別」を経験したとする人は増加した。回答者の半数以上(59%)は、過去1年間に職場内でのいじめや微妙な差別(話を遮る、意見黙殺、見下す)などの非包容的な態度を経験したと答えた。これは、昨年(52%)より7ポイント上昇した値だ。非包容的な態度は、性的少数者などのマイノリティー集団の女性がよりいっそう経験したことが調査でわかった。性的少数者の女性の場合、性別のため、上司が自分を見下したり士気を半減させたと答えた割合は13%だったが、これは、全体での比率(2%)より11ポイント高かった。

 差別や排除、いじめなどの非包容的な態度は、組織に伝えないケースが多かった。微妙な差別や職場内でのいじめなどを経験した人のうち、31%だけが組織に伝えたと答えた。微妙な差別(23%)は、明白ないじめ(66%)より報告されるケースがはるかに少なかった。

 デロイトグループは報告書で、「職場内のジェンダー平等が(コロナ禍で)2年間後退したいま、雇用主が行動に出なければならない」として、「女性の人材を維持し誘致するのを望むのであれば、ジェンダー平等企業を模範とすべきだ」と助言した。具体的な方法としては、急激に広がったバーンアウトの解決▽精神的なウェルビーイングを最優先にする▽女性のために実際に適用可能なフレックス勤務制度の実施▽包容と柔軟性を念頭に置いたハイブリッド勤務制度の樹立▽真の意味での包容的な企業文化の形成などを提示した。

パク・コウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/women/1043040.html韓国語原文入力:2022-05-16 16:23
訳M.S

関連記事