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韓国保守野党「国民の力」の内輪もめの本質(1)

登録:2022-01-10 08:23 修正:2022-01-11 08:14
国民の力のユン・ソクヨル大統領候補が1月6日午後、ソウル汝矣島の党本部で開かれた青年補佐役たちとの懇談会で発言している=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 国民の力が内輪もめに陥りました。選挙を2カ月後に控えて大統領選候補が選挙対策委員会を解散し、委員長を追い出しました。候補と議員たちが党代表を辞任に追い込もうとしました。急いで取りなして縫合しましたが、いつまた傷口が開くか分かりません。これは一体なぜ起きたのでしょうか。

 多くの国民の力の関係者はイ・ジュンソク代表が悪いと言います。キム・ジョンイン前委員長のせいだという言う人もいます。 しかし、それは本質ではありません。国民の力が、大統領選に向けて間違った候補を選んだためです。言い過ぎだと思いますか?そうではないはずです。

 ユン・ソクヨル候補は選挙対策委員会を解散しました。党務優先権を活用し、事務総長と副総長も変えました。候補を除いてすべて変えたのです。こうすれば世論調査の支持率が上がるでしょうか。そんなはずはありません。問題は選対委ではなく、ユン候補自身にあるからです。

ソン・ハニョン先任記者の政治舞台裏//ハンギョレ新聞社

 最近の「国民の力問題」の本質を正確に理解するためには、過去をじっくり振り返る必要があります。一体誰がユン・ソクヨル候補を「国民の力」の候補にしたのでしょうか。

 始まりは朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾でした。朴槿恵大統領弾劾とその後に行われた検察の積弊清算捜査は、李明博(イ・ミョンバク)-朴槿恵保守政権10年の破産手続きでした。破産した企業や団体の回生には骨身を削って肉を切る苦しみが伴います。かなりの時間が必要なのです。

 保守を再建するためには、2017年の大統領選挙の敗北後、むしろ自由韓国党(国民の力の前身)を解散した方が良かったかもしれません。しかし、大邱(テグ)・慶尚北道に地域基盤を、60代以上の高年齢層に世代基盤を持っている保守勢力には、それほどの忍耐力がありませんでした。大韓民国のすべての問題を文在寅(ムン・ジェイン)大統領と与党の共に民主党政権のせいにし、2022年3月の大統領選挙の勝利を目指したのです。

 問題は、これといった大統領候補がいない現実でした。歯に衣着せぬ発言で有名なホン・ジュンピョ議員は保守勢力にあまり歓迎されませんでした。ユ・スンミン議員には裏切り者のレッテルが貼られていました。

ユン・ソクヨルの始まり、2年前の世論調査

 2019年12月に実施された韓国ギャラップの次期政治指導者選好度調査によると、共に民主党のイ・ナギョン26%、自由韓国党のファン・ギョアン13%、共に民主党のイ・ジェミョン9%、国民の党のアン・チョルス6%、正義党のシム・サンジョン5%、正しい未来党のユ・スンミン5%、共に民主党のパク・ウォンスン5%、自由韓国党のオ・セフン4%、共に民主党のチョ・グク4%、自由韓国党のホン・ジュンピョ4%でした。朴槿恵政権で大統領権限代行をしたファン・ギョアン代表が次期大統領候補に挙がるほど、保守層の支持は定まっていませんでした。

 その隙にチョ・グク元法務部長官をめぐる捜査で知名度を上げたユン・ソクヨル検察総長が入り込みました。2020年1月の「世界日報」の世論調査で、ユン・ソクヨル検察総長は10.8%で、ファン・ギョアン代表を抑えて2位につけました。ユン・ソクヨル候補が後日告白しましたが、この世論調査を機に大統領選への出馬を決心したのです。

ユン・ソクヨル検察総長が保守支持層で大統領候補として急浮上したことを報じた2020年1月31日付の「世界日報」の記事//ハンギョレ新聞社

 ユン・ソクヨル候補をけしかけた人として、「朝鮮日報」のコラミニスト、キム・デジュン氏は欠かせません。2020年12月22日付の同紙に「ユン・ソクヨルに注目する」というコラムを書きました。2021年7月13日には「文在寅 5年間をかき消す掃除屋を」というコラムも載せました。国家経営能力が足りなくても、文在寅政権を清算する人なら、大統領選挙の候補の資格は十分だという論理でした。

「朝鮮日報」2020年12月22日付のキム・デジュン氏のコラム「ユン・ソクヨルに注目する」//ハンギョレ新聞社

 キム・ジョンイン前委員長の強い欲もユン・ソクヨル候補の誕生に一役買いました。2021年3月にユン候補が検察総長を辞任し、世論調査で急浮上したことを受け、キム・ジョンイン前委員長は「星の瞬間を捕まえたようだ」と論評しました。その後、駆け引きを経て、国民の力を総括する選対委員長の座に就きました。「星の瞬間を捕まえた」のは、ユン・ソクヨル候補ではなく、キム・ジョンイン前委員長でした。

 キム・ジョンイン前委員長は政治から手を引いた状態だった2020年3月、『永遠な権力はない』という著書を出版しました。エピローグで望ましい権力者と参謀の関係の事例として、ドイツのビスマルクとヴィルヘルム1世、米国アメリカのニクソンとキッシンジャーを挙げました。最高権力者の絶対的な信頼に基づき、有能な参謀が全権を行使したケースです。

 実はキム・ジョンイン前委員長自身がまさにそのようなやり方で働いてきた人です。 朴正煕(パク・チョンヒ)大統領時代に労働者財形貯蓄と医療保険を導入し、全斗煥(チョン・ドゥファン)大統領時代に改憲を通じて経済民主化関連条項を作りました。盧泰愚(ノ・テウ)大統領時代には、財閥の非業務用不動産の売却をはじめとする改革政策を推し進めました。激しい反対にもかかわらず、最高権力者の信頼を基に自分の信念を貫くことができました。

 しかし、キム・ジョンイン前委員長が2012年の大統領選挙で朴槿恵セヌリ党候補を助け、2016年の総選挙で文在寅共に民主党代表を支援した際、問題が生じました。全権を要求して、政党内部の既存勢力と衝突したのです。

 結局、朴槿恵候補とは財閥の循環出資の解消をめぐって対立し、大統領選前に決別しました。文在寅代表とは対立の末、総選挙が終わった直後に決別しました。(2に続く)

ソン・ハニョン政治部先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1026516.html韓国語原文入力:2022-01-09 21:48
訳H.J

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