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フィンランドのベーシックインカム実験は失敗?「幸福感を高める福祉効果を確認」

登録:2020-05-09 03:38 修正:2020-05-09 10:27
5月1日のメーデーのイベントでカーネーションを持っているギリシャの女性労働者。失業者を対象にしたフィンランドのベーシックインカム実験で福祉効果は確認されたが、雇用促進効果は確認されなかった=アテネ/AP・聯合ニュース

 フィンランド社会保障局(KELA)が2017~2018年に世界で初めて政府レベルで実施したベーシックインカム実験を分析した結果が出た。2年前に国内外のメディアが「フィンランドのベーシックインカム実験が失敗に終わった」と報道したが、制度設計と実行を担当した社会保障局のオリ・カンガス局長が2018年5月4日付のハンギョレの単独インタビューで「フェイクニュース」だと釈明した実験の「本当の結果」がようやく出てきた。

 フィンランド社会保障局が6日(現地時間)、インターネットに約190ページの報告書を公開した。この実験は2016年11月時点で失業状態だった25~58歳の労働者の中から無作為で2000人を選び、条件を付けずに2年間毎月560ユーロ(約73万ウォン、約6万5000円)を支給した。社会保障局はこの実験群と一般失業者17万3000人を対照群として比較し、ベーシックインカムの雇用誘発効果、福祉効果、現在と将来の生活に及ぼす効果などを分析した。

 全世界の注目を浴びたこの実験の中心目標は、韓国など各国で提起される社会福祉レベルではなく、失業者の雇用促進効果を分析するという限界が明確だった。さらに、標本数が少なく、実験の途中で強力な「設計変更」が行われた。フィンランド政府は実験2年目の2018年に、求職努力がなかったり職業訓練に参加しない失業者に不利益(失業給付の4.65%没収)を与える「活性化モデル」を取り入れた。このような政策は、失業者にとって他の誘引策がなくてもより積極的に仕事を探すようにすることができ、ベーシックインカムの雇用効果を分析するのを難しくした。ベーシックインカム韓国ネットワークのパク・ソンミ事務局長は7日、ハンギョレに「肯定・否定のどちらの側にも、意味を大きく誇張しにくい結果」としながらも、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により連帯の価値がより重要になった時代に、ベーシックインカムが個人の幸福感と社会に対する信頼を高めるとの教訓を与えた実験だった」と評価した。

 報告書は、ベーシックインカムが受給者の福祉に及ぼす効果は明白だったと明らかにした。ベーシックインカム受給者586人と対照群である一般失業者1047人に対するアンケート調査の結果、ベーシックインカム受給者が感じる精神的ストレスや憂鬱感、寂しさなどが一般失業者より少なく、認知能力はより良好だった。ベーシックインカム受給者の生活満足度は10点満点で7.3点である一方、一般失業者は6.8点だった。特に満足度が9点以上と回答した割合で二つの集団の格差が大きかった。健康状態もベーシックインカム受給者の58.5%が「良い」や「とても良い」と回答した一方、対照群ではこの割合が51.4%だった。ベーシックインカム受給者は、財政的ストレスがはるかに少ないとの反応を示した。特に社会福祉、司法体系、警察、議会、政党や政治家など、社会全般に対する信頼度が一般失業者に比べより高いという点が目立った。

 報告書はベーシックインカムを得た人々が、2017年11月から2018年10月まで比較対象集団に比べ平均6日程度多く働いたことが分かったと明らかにした。また、2017年1~10月の場合は、二つの集団の間に労働時間の差がなかったと付け加えた。子供がいるベーシックインカム受給家族の場合、実験1、2年目の全てで雇用率が改善するなど、互いに異なる集団で多少相違する効果を示したが、確定的な結論に繋げるのは難しい。

 フィンランド公営放送『ウィレ』(yle)は、実験を共同進行した政府経済研究所(VATT)のカーリ・ハマライネン責任研究者の言葉を引用して「2年目の雇用誘発効果は、政府の『活性化モデル』雇用政策と離して考えることはできない」と指摘した。

 社会保障局は実験参加者中の81人に深層インタビューして、ベーシックインカムが失業者の個人的背景や職業的能力などによる格差を緩和するのには力不足であることを確認したと明らかにした。一部の参加者は、ベーシックインカムが自分たちの労働活動に大きな影響を与えたと答えた一方、一部は微々たる影響だけ及ぼしたと答えた。また、ベーシックインカムを受けたおかげで、非公式的なケア活動のような稼ぎと無関係な活動に積極的に取り組むことができたと明らかにした回答者もいた。ある人たちは稼ぎと無関係な活動も一種の労働と認識し、実験期間中に自分の社会的地位が変わらなかったことを「個人的失敗」と考える回答者もいた。

 フィンランド社会保障局の報告書は、フィンランド人の46%がベーシックインカムを正式な社会福祉制度に取り入れることに賛成したという一般人世論調査も併せて公開した。

シン・ギソプ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/943992.html韓国語原文入力2020-05-07 22:47
訳M.S

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