政府は今月4日から、14日以内に中国の湖北省を訪問したり滞在したりしたことがあるすべての外国人の入国を禁止することにしました。これにより、湖北省発行のパスポートを持つ中国人の入国が制限され、湖北省を管轄する公館で発行された既存のビザの効力が暫定停止されます。航空券の発券段階から湖北省を訪問したかどうかを聞き、入国段階で検疫所が再確認します。もし外国人が虚偽供述をしたことが入国後に確認されれば強制退去措置が取られます。
感染症によって特定地域からの訪問者の入国を禁止したのは初めてのことです。このような3段階措置すら不安だという指摘が出ています。地域を限定するのではなく、中国人の入国自体を防ごうという国民請願にも68万人以上が同意しました。政府はなぜ、特定地域の訪問者に限って入国禁止措置を取ったのでしょうか。このような措置が中国人に対する嫌悪を加速させるのではないでしょうか。
こんにちは。私は新型コロナウイルスを取材している社会政策チームのパク・ダヘです。先月保健福祉部の出入り記者に登録してから1週間で最初の国内での感染確定者が発生し、たっぷり洗礼を受けています。一日の間にも時々刻々と変わる状況を追いながら、慣れない保健医学用語を調べていると、まるで「あいうえお」から新しく学ぶような気持ちです。
中国内で新型コロナウイルス感染者と死亡者が急速に増えているのを見て、不安と恐怖を感じる読者の方は多いと思います。特に最近、タイやシンガポールなどの東南アジア諸国からの入国後、感染が確認された患者が発生し、より強力な入国制限措置が必要なのではないかという意見を持つ方もいると思います。
結論から言うと、まだ政府は慎重な立場を取っています。カン・ギョンファ外交部長官は6日、外国人の入国禁止地域を拡大する案を検討するかという質問に対し「中国内の拡散の傾向、国際的な傾向、国内外の防疫対応努力などを総合的に考慮し、状況を引き続き点検している」とし、「必要なら追加措置を検討する」と答えました。
国際機関も入国禁止措置を勧めてはいません。世界保健機関(WHO)は先月30日「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)を宣言しましたが、国家間の移動と貿易を制限することには反対の立場を表明しました。韓国が加盟する「国際保健規則」(IHR)も「感染は統制するものの、必要以上に国家間の移動を妨げてはならない」と規定しています。
このような流れに急激な変化が生じたのは先週末ごろです。国内の感染者の発生スピードが速まり、国民の不安が広がっているうえ、米国・日本などが相次いで入国制限措置を発表し、追加措置を検討せざるを得なくなったのです。
ただ、政府はこうした措置が「中国人」全体に対する措置と映らないように苦心した形跡が目立ちます。パク・ヌンフ保健福祉部長官は2日、このような措置を発表しつつ、「(中国人ではなく)新型コロナウイルスが最も広がっている湖北省から入国する全ての外国人」について「感染症流入の危険度が低くなる時点まで」入国を禁止する措置だと強調しました。もし国籍を根拠に中国の全国民の入国自体を妨ぐのであれば、中国との外交的・経済的摩擦を避けられないだけでなく、国際人権規約に違反する素地もあるため、このような決定を下したものと考えられます。
それでも「ゼノフォビア」(外国人嫌悪)が広がる様相は心配です。国内で「中国人立入禁止」を掲げた食堂ができ、これをスローガンとして叫ぶ集会も開かれました。韓国に限った話ではありません。国外では中国だけでなくアジア人に向けた暴言、暴行行為が発生しました。
入国制限措置の人権侵害をめぐる議論について、このような意見もあります。キム・ウォニョン弁護士は、「国籍を問わず新型コロナウイルスが猛威を振るう武漢と湖北省、または中国全体から来たすべての人に対する入国禁止請願であれば、これがヘイトなのかは明らかではない」と述べています。「(特定の)属性を持った集団全体を排斥すること」ではなく、「特定の時間と場所に存在した事実」に基づいた措置だからです。ある程度「合理的な理由」があると考えるわけです。しかし、制限の程度が過度になり「ウイルスがすべて消滅したのに、武漢出身だという理由で(該当する)人に一生否定的な烙印を押すならば、これは明らかにヘイトだ」と強調しました。
新しい感染病について不安になるのは当然ですが、恐れる対象は「ウイルス」そのものであって、「中国人」ではないということ、患者たちもまたウイルス感染の被害者であることを忘れないでください。くれぐれも「手洗い」にご留意ください!
パク・ダヘ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )