7日から新型コロナウイルス感染症の診断の対象者が拡大された。広がった防疫網により感染者を発見できると期待されるが、万一いちどに患者が選別診療所に押し寄せた場合、感染が広がる恐れも排除できない。感染症専門家たちは「過剰恐怖」や「扇情報道」を自制し、落ち着いて対応するよう訴えている。
6日夜に大韓感染学会が設けた記者懇談会は、国民の不安が大きい今、時宜にかなったものとなったと考える。2015年のMERS事態を決定的に大きくした院内感染を防ぐことが最も重要で、拡散が加速した場合、保健所、国公立・公共病院、民間病院の役割を段階的に区分すべきという専門家らの指摘に、政府は耳を傾けなければならない。特に、ある専門家が「メディアが不要な恐怖を作り出しているのではないか。物は言いようで、どう表現するかによって社会は恐怖を感じるようにもなるし、落ち着いて対応するようにもなる」と訴えたことは、マスメディアが痛切に感じるべき部分だ。
事態の初期から、少なくないメディアが「江南(カンナム)、一山(イルサン)、平澤(ピョンテク)闊歩」「防疫に穴があいた」「コントロールタワーはいったいどこなのか」などの見出しで埋め尽くされ、武漢からの帰国者たちの臨時生活施設が確定する前に他の場所を報道し、混乱を煽る単独記事も出た。中国国内の感染者が9万人を超えるとか、患者1人が最大14人まで感染させるという根拠の薄い主張、武漢の病原菌研究施設と感染症を結び付けた英国メディアの推測記事を引用した報道は「現時点までに事実と明らかになっている情報を提供するとともに、信頼できる根拠がなければならない」との感染症報道準則の第1原則にもそぐわない。帰国者たちのプライバシーを侵害する臨時生活施設のクローズアップ写真や内部生活に対する一部の誤報は、視聴者と読者の抗議で削除されてもいる。政府の方針と関係なく、世界の主要メディアがほぼすべて守っている常識だが、依然として国内の一部マスコミが差別と嫌悪をあおる可能性のある地域名が入った病名を使っているのも理解し難い。
政府の発表に混乱があり、方針が覆された事例はこのかん数回あった。確定患者の動線公開が遅れれば、市民の不安が拡大するのも事実だ。メディアによる正当な批判と監視に政府が過剰に反発するのは適切ではない。しかし、メディアもクリック数だけを追い求め、扇情的な表現で不信を助長していないか、振り返ってみる必要がある。保健・防疫当局がマスコミを意識してアリバイ的な政策に流れたり、反論・対応に汲々とするならば、その損害はそのまま国民に跳ね返ってくるだけである。