原文入力:2010-11-18午後05:26:33(2551字)
[現場] 蔚山現代車 非正規職 工場占拠 潜入取材記
段ボール箱を毛布代わりに丸まって眠る…ラーメン・パンで食事 間に合わせ
"解雇されるか ヒヤヒヤしながら生きるよりは堂々と正規職化を要求"
ホ・ジェヒョン記者
←工場のラインが止まり17日午後、蔚山現代自動車第1工場。ストライキに参加したある組合員が作業の止まった車両のそばで休息を取っている。労働と世界提供
現代自動車の非正規職労働者たちが占拠籠城を行っている‘第1工場’は要塞のようだ。工場に通じる出入口は幅1mの階段だけだ。その前を正規職労働者で構成された死守隊と非正規職労働者たちが一緒に守っている。‘第1工場’は引火物質が山積みされている塗装工場とも隣接している。ややもすれば大事故がおきる可能性も少なくない。現在籠城中の労働者は500人余り。正規職労働者50人余りが籠城場入口で死守隊を設け一緒に戦っている。
籠城場の中は罹災民の宿舎同然だった。夜になれば冷気が工場内を包むが、労働者たちはホームレスのように段ボール箱を毛布代わりにして眠りにつく。食べ物も不足している。毎日ラーメンとパンで食事を間に合わせ、一部の労働者たちは消化不良を訴えている。しかし籠城場の中には医療スタッフがいなく、そのまま横になっているのが治療の全てだ。
労働者たちはこれ以上、時給5000ウォンの人生は生きないとし決意を新たにしていた。しかし展望はそれほど明るくなく見えた。金属労組現代自動車支部が非正規支部と現代車側の交渉を仲裁しているが、会社側の立場は頑強だ。現代自動車広報室は「(労組が主張する)最高裁判決は確定判決ではなく、高等裁判所へ差し戻された段階であり、もう少し見守らなければならない」とし「会社が下請け業者労働者たちと臨時団体協議に出る理由がない」と説明した。
籠城場で会ったキム・ソンジン(仮名)氏の顔には切迫感が感じられた。キム氏は「もうこの道しかない」と言った。キム氏は10年近く現代自動車蔚山工場で仕事をしている。しかしキム氏は現代自動車の職員ではない。同じ場所で同じような仕事をしているが、彼の身分は現代自動車の下請け業者職員だ。
10年の歳月を過ぎ、彼が体験した下請け労働者の悲しみは到底言い尽くせなかった。作業支援班所属の彼は手当たり次第に働いた。「部品組み立てをしろと言われれば部品を組み立て、シートを組み立てろと言われればシートを組み立て、塗装しろと言われれば塗装の仕事まで一手に引き受けた。」正規職は一つのラインだけで仕事をすれば良いが、彼は呼ばれればどこへでも走って行かなければならなかった。正規職が休暇や私的事情で席を外せばその場を埋めるのも彼の役割だった。
周囲では現代自動車で仕事をしていると羨むが、下請け企業職員の彼の月給は一ヶ月毎日残業と夜勤を繰り返しても月200万ウォン程度に過ぎなかった。彼が受け取る給与は時給5千ウォンで、正規職社員の60%に過ぎない。正規職より厳しい仕事をするが戻ってくる代価は思わしくなかった。それでも彼は黙々と働いた。正規職になれるという信頼のためだった。いつかは家族に 「俺も現代自動車職員」と堂々と話せる日が来るだろうと信じていた。
彼は非正規職労働組合に加入したが活動には消極的だった。彼は法を信じた。非正規職を保護するとして政府が作った非正規職法には‘非正規職として2年以上仕事をすれば正規職に転換’するようになっていた。希望は目の前まで近づいた。しかも去る7月、最高裁が現代車蔚山工場社内下請け勤労者が起こした訴訟で‘現代車の社内下請けは正常な請負契約ではなく、不法派遣業者で2年以上勤めた勤労者は現代車の勤労者であることを確認する’と判決した時、彼は飛び上るほどうれしかった。
←17日午後、蔚山現代自動車第1工場作業場内で使用側管理人たち(写真中央の黄色い箱の前方)と現代自動車正規職・非正規職組合員たち(黄色い箱の後方)が対峙している。 労働と世界提供
しかしその希望は粉々に砕けた。彼はドンソン企業事態を見ながら自身の未来を推し量ることができた。最高裁判決後、現代車社内下請け企業であるドンソン企業は突然、廃業申告を出した。キム氏は最高裁判決により現代自動車で働くドンソン企業の職員たちは契約が終わった後に現代自動車に雇用されると期待した。しかし、そうではなかった。社長は顔を一度も出さないまま潜伏してしまい、去る12日から突然‘チョンムン企業’という名前の会社関係者が現れ、新しい雇用契約を結べと言った。その上、チョンムン企業は労組脱退を要求した。拒否すれば解雇だった。彼は絶望した。裁判所の中でも最も高い最高裁の判決が紙くずになるということが信じられなかった。
ドンソン企業労働者29人は去る15日明け方、現代自動車蔚山工場14ラインを占拠し籠城を始めた。現代車会社側は1時間も経たない内に用役警備業者職員を動員し片っ端から労働者を引きずり出した。消化器粉末がまかれ、前が見えない状況の中で攻防が起き、鉄製のボルトやナットが籠城場の上を飛びかった。会社関係者と労組員、双方がひどく負傷したまま朝7時頃、占拠籠城は解除され、労組員の大部分は警察に連行された。
キム氏はこの様子を見守りながら、より一層絶望した。そして怒った。彼は他の非正規職労働者900人余りと共に15日午後から蔚山1工場の占拠に入った。何度も迷い工場占拠に参加した。彼は時給5000ウォンの人生で永遠に生きるよりは、いっそ解雇される方がマシだと思う。“息子にいつまでも現代自動車社内下請け職員だと言わなければなりませんか。もう、そうしたくありません。”
蔚山/文・映像 ホ・ジェヒョン記者 catalunia@hani.co.kr, 写真 労働と世界提供
原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/449441.html 訳J.S