原文入力:2010-07-21午前09:21:03(1877字)
‘目がくらんだ’者たちの都市
所持品 紙幣2枚・バスカード…警察‘70代自殺’推定するのみ
"空き家になって半年が過ぎたが、誰が死んでいようが分かる訳がない"
イ・スンジュン記者
←70代の老人が首を括って自殺したと推定されるソウル、城東区、往十里ニュータウン3区域の空き家の前で、20日午前 警察の接近禁止表示が設置されている。 キム・ミョンジン記者 littleprince@hani.co.kr
"キィーーーン…、カンカンカン." 20日午後、ソウル、城東区、弘益洞。往十里ニュータウン3区域開発が進行中のために、あちこちで空き家の塀を崩す作業員たちの槌音が騒がしかった。まだ引っ越し先が見つからない近隣小規模工場主たちは、鋭い研削機の音を響かせていた。零細工場の後方に醜い姿で建っている3階建て住宅の周辺に、警察は‘接近禁止’と書かれた黄色い線を張った。何があったのだろうか?
一週間前の去る14日、この家から凄惨に腐敗した遺体が発見された。撤去のために石綿解体作業をしていたある作業員がこれを発見した。ぎっしり密集している塀下に斜めに横たわっている遺体からは激しい悪臭が出ていた。下半身の一部を除き肉が腐り骨だけの状態にやせこけていた。テレビケーブルが首に巻かれていた。
申告を受け出動した警察が遺体を収拾したが、遺体の身元はわからなかった。身分証もなかった。財布には1万ウォン札2枚とバスカード1枚しかなかった。腐敗した遺体には指紋すら残っておらず、顔の形も分からず、写真で聞き込みすることも不可能だった。青色の半袖シャツと藍色の洋服ズボン、とても古臭い靴が残っていたが、近隣住民たちの中で彼を知っている人はいなかった。
彼は自ら命を絶つ前に撤去町内の空き家に入り、しばらく生活していたものとみられる。空き家2階の3坪余りの狭い部屋には、彼が身を横たえた古いマットレスと空の焼酎瓶、飲料缶3個が転がっており、故障した冷蔵庫の上には腐敗したパンが残っていた。だが、彼が暮らした跡からも彼が路上生活者であったのか、あるいはこの地域から追い出された借家人であったのか、さもなければ近隣工場労働者だったのかを知る糸口は見つからなかった。
警察は遺体を解剖検査し、DNAと入れ歯を採取し国立科学捜査研究所に送り結果を待っている。警察は「家出人調査、手配犯人照会などをしてはいるものの、歯が入れ歯なので対照することもできず、DNA分析も犯罪経歴がなければ効果がなく身元把握が難しそうだ」と話した。
検案医は「70代の老人の自殺と推定され、死亡時点は少なくとも3週間から二ヶ月程度前のようだ」と判断した。一人寂しく死を選んだ後も、彼は永く放置されたわけだ。
ソウルの真中で死骸が二ヶ月近くも発見されないのは、撤去作業により人跡が途絶えたためだ。彼が留まった空き家は大通りから30mも離れていなかった。家の周辺には‘金属研磨’、‘旋盤加工’等の看板を掲げた零細工場主たちがいたが、零細工場の人々も「そちら側では人が通るのを見たことがないが、異様なこと」と話した。
この地域の金属工場で26年間仕事をしてきたイ・某(50)氏は「借家人と家主が去り、空き家になって6ヶ月を過ぎたが、誰かがどんな理由で入ってきて死んでいっても、分かる訳もない」として苦々しく笑った。
再開発が人々の心までガチガチにがんじがらめにしたためなのか、周辺の住民たちは諦めたような反応だった。こちらで20~30年間、鉄を扱ってきた人々は「もう私たちもここから去る日も残り少なくなった」としてため息を吐いた。自営業を営むイ・某(44)氏は「それでなくても再開発移住補償問題で頭が痛いのに、遺体が発見されたというと不安で心が落ち着かない」と愚痴った。
だが、それだけ、この日午後の熱い日差しの中で、路地には相変らず金属音が響き、人々は昔通りに大粒の汗を流していた。撤去資材とゴミが勝手に舞い散る住宅街の間で、撤去作業員たちはこまめに槌打ちをし装備を運んでいた。
相変らずその老人が誰かわからないまま、再開発地域の一日がまたいつものように過ぎていった。
イ・スンジュン記者 gamja@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/431252.html 訳J.S