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最悪の大統領、売国奴尹錫悦…国民の命を担保に「戦争博打」

ソン・ハニョン先任記者の政治舞台裏 
内乱特検、外患罪一般利敵容疑で追加起訴 
韓国政治に北朝鮮を引き込む分断既得権勢力 
日帝強占期に仲間を密告した売国奴や密偵の遺伝子
尹錫悦前大統領が今年7月5日、内乱特検の取り調べを終え、ソウル高等検察庁から出てきている。右は昨年10月に北朝鮮が「韓国から送られてきた無人機」だとして公開した写真/聯合ニュース、朝鮮中央通信・聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)とは一体どのような人間なのでしょうか。私は彼が検察にいた時からかなり長い間、尹錫悦検事総長、尹錫悦候補、尹錫悦大統領、尹錫悦前大統領について記事を書いてきました。しかし、今もどのような人間なのか正確には分りません。私の想像の限界を超えた言動と犯罪が絶えずあふれ出てくるからです。

 内乱特検が、尹錫悦前大統領、キム・ヨンヒョン前国防部長官、ヨ・インヒョン前国軍防諜司令官を刑法上の外患の罪(一般利敵)で起訴したのは、11月10日のことでした。

 外患の罪は複雑で難しい犯罪です。1953年に制定された韓国の刑法は、1編の総則、2編の各則、そして附則で構成されています。各則は処罰対象の犯罪を列挙しています。第1章が内乱の罪、第2章が外患の罪です。内乱と外患はそれほど重大な犯罪なのです。

 外患は外換(外国為替。外患と発音が同じ)とはまったく別の言葉です。外患の罪とは、外国の指示で武力行使、または敵対的な行為に及んだり、敵国に人的または物的利益を提供して国の存立と安全を危険にさらすことを指します。

 外患の罪にはいくつかの類型があります。外患誘致、与敵、募兵利敵、施設提供利敵、施設破壊利敵、物品提供利敵、スパイです。これら7つ以外に「大韓民国の軍事上の利益を害したり、敵国に軍事上の利益を供与」したりする犯罪がまさに一般利敵です。無期または3年以上の懲役に処されます。

 特検が尹錫悦、キム・ヨンヒョン、ヨ・インヒョンの3人を外患の罪で追加起訴したというのは、途方もないことです。しかし、意外と波紋は広がっていないようです。

 2つの理由があります。1つ目、ある程度予想されていたことだからです。2つ目、検察による大庄洞(テジャンドン)裁判の控訴放棄に埋もれてしまったからです。

 とにかく、私は3人の容疑の内容にとても興味があります。しかし、起訴状が手に入りませんでした。検察や特検の起訴状は普通、国会を通じて公開されます。記者もしばしば、国会議員室から起訴状の内容を受け取ります。

 今回はそうではありませんでした。特検は配布とコピーを禁止することを条件に、起訴状を国会に送りました。敏感な軍事機密が多く含まれているからです。国会も、訴状を閲覧できるのは秘密を取り扱う認可を受けた人のみとしました。

 およそ1週間後から、記者たちの取材によって起訴状の内容がマスコミに流れ始めました。尹錫悦大統領が2022年11月に大統領官邸でキム・ジョンヒョク非常対策委員らに「私には非常大権がある。一掃してやる」、「私が銃殺されることがあろうとも一掃してやる」と言っていたこと、2024年7月の外遊中にハワイのホテルで「ハン・ドンフンはアカ」だと言っていたことなどが、まさに起訴状に記されていた内容です。

 しかし私は、尹錫悦大統領の刺激的な発言よりも、「なぜ北朝鮮を引き込もうとしたのか」の方がはるかに重要だと考えました。このことについて、起訴状にはこのような内容が記されているということです。

 「被告人たちは、非常戒厳を宣布するためには『戦時、事変またはそれに準ずる国家非常事態であるため軍事上必要、または公共の安寧秩序の維持のために韓国軍の兵力の投入が必要な状況』、または少なくともそれに準ずる状況の発生が先行する必要があると考えた。そのような非常戒厳宣布の法的要件を作り出すと同時に、非常戒厳宣布の大義名分および正当性を確保するために、停戦状態にある北朝鮮を刺激して韓国軍と国民に対する武力またはそれに準ずる水準の挑発を誘導するとともに、南北間の軍事的緊張関係を高めるなどの方法で、国家的非常状況を造成することを決意した」

 「被告人たちは戒厳状況を造成するため、短期間で結果が作り出せる効果的な方法を考えていたが、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長をはじめとする最高位職の指導者たちの体面を傷つけるなどの方法で、北朝鮮を心理的に刺激する軍事作戦である、いわゆる心理戦を活用して北朝鮮を刺激、および軍事的挑発などを誘導するとともに、それによって局地戦などの北朝鮮の武力挑発状況や南北間の軍事的緊張関係の高まりによる国家的な安保危機状況を造成することを決めた」

 もちろんこの部分は、特検が起訴した内容です。今後行われる裁判で、特検は起訴内容を裏付ける証拠を提示するでしょう。裁判所がこの部分を最終的にどのように判断するのか、とても興味をそそられます。

国民は命落とし経済は真っ逆さま

 もし金正恩国務委員長が尹錫悦大統領の心理戦に引っかかって武力挑発をおこなっていたら、どうなっていたでしょうか。少なくとも局地戦につながっていたはずです。何のかかわりもない軍人と民間人が命を落としていたでしょう。経済は致命的な打撃を受けていたでしょう。輸出入は止まっていたでしょう。資本は流出し、株価は暴落していたでしょう。

無人機平壌浸透事件を報じるハンギョレ新聞//ハンギョレ新聞社
無人機平壌浸透事件を報じるハンギョレ新聞//ハンギョレ新聞社

 こうした状況を期待していた尹錫悦大統領は、堂々と非常戒厳を宣布していたでしょう。国会は戒厳解除を決議できなかったでしょう。実際に戦争が起きていたら戒厳解除の大義名分がないからです。李在明(イ・ジェミョン)、ハン・ドンフンなどの政治家は、戒厳軍に連行されていたでしょう。報道機関は戒厳軍に掌握されていたでしょう。考えただけでもぞっとします。

 幸いなことに、現実ではそのようなことは起こりませんでした。理由は分かりませんが、北朝鮮指導部は心理戦に引っかかりませんでした。尹錫悦大統領は大義名分もなしに非常戒厳を無理やり強行し、弾劾されて裁判を受けています。

 国には国民の命と財産を守る義務があります。大統領は国家の元首です。特検の捜査の結論の通り、尹錫悦大統領が戒厳の大義名分を手に入れるために北朝鮮を刺激したことが事実なら、裁判所が特検の起訴内容を有罪と認めたら、尹錫悦大統領は国民の命を担保に博打を打った大韓民国の大統領になるわけです。天人共に怒る、道に背いた、売国奴など、どのような言葉でもその邪悪さを表現するのは難しいように思われます。

 尹錫悦前大統領の容疑は、韓国で選挙のたびに吹き荒れた「北風」の延長線上にあります。1987年12月の大統領選挙の前日、大韓航空機爆破犯のキム・ヒョンヒが韓国に連行されてきました。人々の関心は大統領選挙よりキム・ヒョンヒに注がれました。このような雰囲気は、軍出身の民正党の盧泰愚(ノ・テウ)候補に決定的に有利に働きました。

 1992年12月の大統領選挙を前に、国家安全企画部は「イ・ソンシル・スパイ団事件」を発表しました。安企部は、民主党の大統領候補だった金大中(キム・デジュン)氏の秘書が国防部の予算に関する資料をスパイに渡したとして事件を膨らませました。

 民自党のパク・ヒテ報道担当は「北朝鮮のスパイ団の指令文を見ると、民主党候補を単一候補として推して必ず当選させよという内容がある」と主張しました。安企部は、北朝鮮がスパイ団に対してそのような指令を下したのは事実だとお墨付きを与えました。安企部はまた、選挙戦の終盤に「北朝鮮の金日成(キム・イルソン)主席が今回の選挙で金大中候補を支持するよう対南放送をおこなっている」と虚偽情報を流しました。

 1996年の4・11第15代総選挙の前には、北朝鮮は板門店(パンムンジョム)の共同警備区域に重武装した兵士を大量投入しました。金大中総裁の新政治国民会議は、北朝鮮軍の武力デモは韓国政府と示し合わせておこなった北風である可能性があるという疑惑を提起しました。証拠はありませんでした。

 1997年12月の大統領選挙の前にも、やはり北風が吹きました。越北した天道教のオ・イクチェ元教領が平壌(ピョンヤン)放送に出演し、「国民会議の候補と統一問題をよく語り合った」と述べたとする「政府当局者」の主張が報道されました。北朝鮮を訪問した在米の牧師が東京で、北朝鮮のキム・ビョンシク副主席が金大中候補に送ったという3通の手紙のコピーを公開しました。北風工作でした。しかし、工作は通じませんでした。選挙になると厳しく吹き付け、選挙が終わると消える北風の実体に、有権者が気づいたからです。北風の抵抗を突き抜けて金大中大統領が当選したのです。

 金大中大統領の就任後、1998年にハン・ソンギ、オ・ジョンウン、チャン・ソクチュンの3人が、大統領選挙時にイ・フェチャン候補を支援するために、北朝鮮側に板門店での銃撃を要請していた疑いで拘束起訴されました。いわゆる「銃風」事件です。イ・フェチャン総裁は強く反発しました。裁判の過程で拷問問題が持ち上がりました。裁判所は、銃撃要請はあったものの、「事前謀議」によるものではなく偶発的、突出的な行動だったとの判決を下しました。

 このように分断既得権勢力は、国内の政治や選挙に絶えず北朝鮮を引き入れてきました。分断既得権勢力のこのような行動は、国を日本に売り渡して独立運動家たちを日本の警察に密告した売国奴や密偵たちの遺伝子をそのまま受け継いだものだと私は思います。

ヨ・インヒョン前防諜司令官の携帯電話のメモ=11月11日付ハンギョレ新聞5面//ハンギョレ新聞社

 まとめます。特検が外患罪の証拠として確保したヨ・インヒョン前防諜司令官の携帯電話のメモには、次のような内容があります。2024年10月18日午後2時6分に作成されたものです。

 「不安定な状況において短期間で効果が出せる千載一遇の機会を探り、攻略しなければなりません。そのために、不安定な状況を作るか、または作られた機会をつかむ必要があります。体面が傷ついて絶対に対応せざるを得ないターゲティング-平壌、2カ所の核施設、三池淵(サムジヨン)などの偶像化の本拠地、元山(ウォンサン)外国人観光地、金正恩の休養所。最終状態は低強度ドローン紛争の日常化。(偵察およびビラ作戦。しかし領空侵犯時、物理的撃墜)」

 韓国軍は2024年10月から11月にかけて、北朝鮮の平壌上空に無人機を侵入させ続け、ビラを散布しました。北朝鮮は強く反発しました。朝鮮半島に戦争の危機が作り出されました。大変なことになるところでした。本当に悪い人たちです。許せません。みなさんはどうお考えですか?

ソン・ハニョン|政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1230674.html韓国語原文入力:2025-11-23 09:00
訳D.K