尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が「国民の力」の大統領候補を選ぶ予備選挙で勝利した2021年11月から、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)が尹錫悦候補支持の方針を立て、比例代表の候補枠を得ることを目的に接近していたことが確認された。旧統一教会が推進する事業に対する政府の支援だけでなく、教会関係者の政界進出を目標としたものといえる。ミン・ジュンギ特別検察官(特検)チームは、尹前大統領の妻のキム・ゴンヒ女史側が旧統一教会の支援を受けたことで教会に比例代表枠を1議席分約束したとみている。
17日のハンギョレの取材の結果、旧統一教会のユン・ヨンホ元世界本部長は2021年12月初めから、世界日報のユン・ジョンノ元副会長と「尹錫悦の当選を積極的に支援すると言おう」、「尹錫悦が当選する。信じて支援してこそ実現する」と述べつつ、尹錫悦候補の支持を企てた。旧統一教会の主要幹部クラスであるこの二人は、「国民の力」の予備選挙の結果が出た直後から尹錫悦候補に接近することを決め、尹氏の側近のクォン・ソンドン議員(当時は国民の力事務総長)らと接触したという。彼らは「旧統一教会が米国と日本の基盤を固めてくれたら領事や大使への起用も可能であり、支援に比例して全国区や公認(推薦)の要求も可能だ」と議論していたという。特検チームは、その後ユン元本部長が2021年12月29日と2022年1月5日の二度にわたってクォン議員と会い、二度目には「少ないが候補のために大切に使ってほしい」と言って現金1億ウォンを渡したとみている。
特検チームは、旧統一教会側が「コンジン法師」ことチョン・ソンベ氏を橋渡し役として意思疎通していたキム女史を通じて比例代表枠の獲得などを成功させようとしていたことも把握した。ハンギョレが国会から入手したキム女史らの政党法違反容疑の起訴状によると、キム女史とチョン氏は2022年11月に旧統一教会側に「クォン議員が党代表になるよう、組織的に支援してほしい」と要請し、その見返りとして「国会議員の比例代表候補者の推薦過程で、国民の力に入党した旧統一教会所属の信者を入れる」と約束したという。このことをユン元本部長が韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁ら指導部に「キム女史が比例代表の1枠を旧統一教会にくれると言った」と報告し、教会信者の集団入党を実行した、というのが特検チームの判断だ。
クォン議員が2023年1月に突如として党代表選挙への不出馬を宣言した際に、ユン元本部長がチョン氏に「比例代表枠の約束を理由に非常に無理をして信者の入党を強行した」と言って困っていた様子も、起訴状に記された。チョン氏は「比例代表は得られるよう措置を取るだろうし、キム女史が取り持つと言っていた」と言ってユン元本部長をなだめたという。その後、旧統一教会側はチョン氏の要請に沿い、キム・ギヒョン議員の党代表就任支持へと路線を変更した。
このことについてキム女史の弁護団は、「キム女史が国会議員の比例代表を見返りとして旧統一教会の党員加入に介入したという事実も証拠もない」と反論した。キム議員も「私は旧統一教会に支持を要請してもいないし、旧統一教会が私を支持すると言ってきたこともない」として、「旧統一教会とは何の関係もない」と強調した。キム議員は2023年3月8日の党大会で党代表に当選しており、党大会から9日後の同年3月17日にキム議員の妻がキム女史に「党代表当選への支援に感謝する」という内容の手紙と共に、100万ウォン台のロジェ・ヴィヴィエのハンドバッグを渡していたことが明らかになっている。