先週、慶州(キョンジュ)で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議は、一方的な関税賦課を前面に掲げ「保護主義」の象徴と化した米国と、「自由貿易の守護者」を標榜する中国の「対決」として世界の注目を集めた。2大経済大国の利害関係が両極端に分かれたことで、閉幕時に「慶州宣言」が採択されるかどうか、宣言文が採択された場合は、「自由貿易」を支持する内容が含まれるかどうか、予測不可能だった。
難航の末、21の加盟国は1日、「連結・革新・繁栄に基づきアジア太平洋地域の経済統合を推進しよう」という内容が盛り込まれた「慶州宣言」を採択したが、宣言文で自由貿易に対する明確な支持を表明することはできなかった。その代わり、「我々はアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)アジェンダに関する取組等、アジア太平洋地域において市場主導型の経済統合を推進する」という内容が含まれた。
首脳宣言に盛り込まれた自由貿易関連の内容は、外交通商合同閣僚会議(AMM)の共同宣言文に含まれた。21のAPEC加盟国の外交・通商閣僚らは声明で、「我々は貿易課題の推進における世界貿易機関(WTO)の重要性を認識する」とし、「WTOにおいて合意されたルールが国際貿易を円滑化するための鍵となることを認識する」と述べた。米国が自由貿易に関する文言を入れることに強く反対し、他の加盟国と何度も調整を繰り返した結果だった。
慶州宣言には自由貿易とWTOで合意されたルールを認めることへの言及が抜けたものの、閣僚らの共同宣言文に関連の内容が盛り込まれたという点で、国際貿易体制の未来をめぐって競争してきた米国と中国の両方の声が反映された「引き分け」とも評価できる。
特に慶州宣言に盛り込まれた「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の推進」は、今回のAPEC首脳会議で中国の習近平国家主席が主要なアジェンダとして提案した内容だ。習主席は1日、APEC首脳会議の第2セッションで「未来の変化に備えたアジア太平洋のビジョン」というテーマで演説し、「中国は(来年のAPEC首脳会議を)機に各国と手を取り合ってアジア太平洋共同体を構成し、地域成長と繁栄を促進するとともに、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)などの実務協力に努めたい」と述べた。米国が安保論理を強調するインド太平洋戦略での中国包囲戦略を展開することに対抗し、中国は自国が主導するアジア太平洋自由貿易地帯に経済統合を成し遂げるという構想を示したのだ。
先月30日に訪韓した習主席は、3日間にわたりAPEC首脳会議の日程に出席し、世界の自由貿易の守護者としての存在感を誇示することに力を入れた。多国間主義の外交舞台と自由貿易を快く思わず、APEC首脳会議の本会議に出席せず帰国したトランプ大統領と明らかに対比を成す行動だった。
習主席は1日、李大統領から次期議長国の地位を受け継ぎ、第33回APEC首脳会議を来年11月、中国広東省の深センで開催すると発表した。習主席が、中国の改革開放を象徴する深センを来年のAPEC首脳会議の開催地に決めたのも、「自由貿易」と「改革開放」の継続に向けた中国の意志を強調したものと言える。