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李大統領がトランプ大統領に「原子力潜水艦の燃料供給」を公式要請したわけは

登録:2025-10-30 06:24 修正:2025-11-01 07:53
韓米海軍が2023年7月29日、済州南方海域で北朝鮮の潜水艦浸透に備え、合同対潜戦訓練を実施している。上が韓国海軍のイージス駆逐艦「栗谷李珥」で、下が米海軍の原子力潜水艦「アナポリス」=韓国海軍提供//ハンギョレ新聞社

 李在明(イ・ジェミョン)大統領が29日、ドナルド・トランプ米大統領に「(韓国が)原子力潜水艦の燃料供給を受けられるようトランプ大統領が決断してほしい」と公式に要請した。

 李大統領はこの日、国立慶州博物館で行われたトランプ大統領との拡大首脳会談の冒頭で、「もう一つさらに申し上げたいことがある。トランプ大統領に十分に説明ができず、若干の誤解があるようだ」としたうえで、「(原子力潜水艦の)燃料供給を許可してほしい。原子力潜水艦の燃料供給を受けられるよう大統領が決断してほしい」と述べた。

 原子力潜水艦は核兵器を運ぶ潜水艦ではなく、原子力を動力として使う潜水艦を意味する。潜水艦は推進方式によって「ディーゼル-電気潜水艦」(ディーゼルエンジンを稼動して発電機を回して作った電気でプロペラを回転)と「原子力潜水艦」(高濃縮ウランU-235核分裂させたエネルギーでプロペラを回転)がある。

 ディーゼル潜水艦は水中で蓄電池に充電された電気で動く。充電が足りなくなると、水面近くに上がって空気を取り入れ、ディーゼルエンジンを回すことで、再び蓄電池を充電しなければならないため、二日ほどしか潜水できず、非大気依存推進(AIP)システムを装着しても最大2~3週間以上は潜れない。潜水艦が水面近くに上がれば位置が露呈するため、海上哨戒機などの攻撃を受ける可能性がある。原子力潜水艦は理論の上では無限大に潜航が可能だが、乗組員の交代などを考え、数カ月まで必要な時間だけ水中で航行できる。

 李大統領は「核兵器を積載した潜水艦を作りたいわけではなく、ディーゼル潜水艦は潜航能力が劣るため、北朝鮮や中国の側の潜水艦を追跡する活動に制限がある(ため)」とし、「燃料供給を許可していただければ、韓国が独自の技術で通常兵器を搭載した潜水艦を数隻建造する」と説明した。こうして「朝鮮半島の東海(トンヘ)と西海(ソヘ)に海域防御活動を行えば、米軍の負担も相当減らせると思う」とも補足した。

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権以降、韓国政府は20年以上にわたり原子力潜水艦の確保を検討し、その準備作業を内部的に進めてきた。原子力潜水艦を確保する条件には、国家的意志▽技術水準▽核燃料の安定的確保が挙げられる。

 今回の李在明大統領の発言は、原子力潜水艦の確保に向けた国家的意志を国内外に表明したものだ。北朝鮮の核・ミサイル能力が高度化しているのに核武装が不可能な韓国としては、原子力潜水艦で北朝鮮の核対応力を高めることで、国内の安全保障に対する不安を和らげるようとする狙いもある。

 韓国は3600トン級ディーゼル潜水艦の「蒋英実(チャン・ヨンシル)」を国内で独自に設計・建造し、22日に進水式を行っており、潜水艦技術の水準にも問題がない。

22日、ハンファオーシャンの巨済事業場で潜水艦「張保皐-IIIBatch-II」1番艦「蒋英実」の進水式が行われている=韓国海軍提供//ハンギョレ新聞社

 結局、核燃料の安定的確保がカギとなることから、この日、李在明大統領の「核燃料供給」要請発言が出たといえる。韓米原子力協定は、米国が同意すれば、米国製のウランと装備を使用する場合、濃縮度20%未満でウランを濃縮できるよう規定している。米国ではない第3国から核燃料を購入する場合は米国と協議する必要はないが、韓米同盟を考慮すると、韓国が第3国から核燃料を購入することは不可能だ。

 米国が核燃料を供給する場合、韓国は国際社会の「核兵器開発」の疑いを免れるために、20%未満の濃縮ウランを原子力潜水艦の推進体にのみ使用すると約束してから、受け取る案が有力だ。米国の原子力潜水艦は核燃料でウランU-235を40%か90%ほど濃縮するが、フランスのルビー級原子力潜水艦は濃縮度20%未満のウランを使用している。

クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1226179.html韓国語原文入力:2025-10-29 20:41
訳H.J

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