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カンボジア就職詐欺のわな…「今年だけで脱出した韓国人は400人以上」

登録:2025-10-13 01:36 修正:2025-10-13 08:43
拷問で死亡の大学生の目撃者が証言 
「殴られ過ぎて息もできなかった」 
2022年9月、カンボジアの海岸都市で、大規模な犯罪団地が集中しているシアヌークビルのグレートウォールパーク団地の外に、鉄条網が設置されている。カンボジア当局はこの場所を急襲し、人身売買、拉致、拷問などの証拠を確保したと発表した=シアヌークビル/ロイター・聯合ニュース

 「殴られ過ぎて治療したのに歩けず、息ができないほどだった」

 カンボジア・カンポット州のボコール山の犯罪団地の近くで監禁され、8月9日に救助されたAさんは、自身の目撃した大学生のPさん(22)の生前の様子をこのように描写した。Aさんは、Pさんは麻薬の運搬を強いられ、自身を監禁していた組織に売られてきたとして、「激しい暴行で口もきけない状態」だったと証言した。Pさんは8月8日午前2時ごろ、カンポット州のサンカトカンポンベイで黒い車の中から遺体で発見された。現地警察は検視後、Pさんの死亡証明書に「心臓まひ(拷問による激しい痛み)」が死因だと記している。

 「高収益の仕事を保障する」という言葉にだまされてカンボジアに向かった韓国の若者たちが現地で脅迫、強要されてフィッシング犯罪に関与したり、監禁・拷問を受ける事例が急増している。ついには冷たい遺体となって発見される事件まで発生している。現地の事情に詳しい在留韓国人や警察の12日の話によると、被害者はおおかた、テレグラムや求職サイトなどへの「月に数百万~数千万ウォン稼げるテレマーケターやITの仕事がある」という投稿にだまされた若者たちだ。カンボジア韓人会のチョン・ミョンギュ会長はハンギョレに「昨年(犯罪集団から)逃げてきて韓国に送り帰した人は200人にはなると思う。今年はすでに400人を超えていると思う」と話した。

 航空券と宿と食事を提供すると言われ、飛行機のチケットまで買ってプノンペン国際空港に到着した韓国の若者たちは、普通はワゴン車に乗せられ、わけも分からないうちに「ウェンチ」と呼ばれる犯罪団地に連れて行かれる。パスポートや携帯電話などの所持品を奪われた若者たちは、「ロマンス詐欺」などの各種フィッシング犯罪に関与することで被害者と加害者の立場を行き来する境遇に陥る。犯罪への加担を拒否すると拷問を伴う脅迫が続けられる。犯罪団地に拘禁されていたAさんも、ボイスフィッシングの仕事を拒否したため、手錠をかけられて鉄パイプで殴られ、気絶すると電気ショックが加えられて正気を取り戻させられ、再び暴行されたと証言する。アムネスティ・インターナショナルは今年6月に発表した報告書で、カンボジア全域にこのような詐欺組織が少なくとも50以上は存在すると分析している。

 現地警察に通報しても当局の対応が消極的なことが、事件を大きくする要因となっている。カンボジア警察は被害者の「本人による直接の通報」原則にこだわっており、さらに出動の際には「監禁されている様子を写した写真や映像」まで要求する。現地の事情をよく知る警察関係者は、「かつて大使館や家族から通報を受けて出動した際には、被害者に『自分は監禁されてはいない』、『ここでずっと金を稼ぐつもりだ』と言われることもあったため、本人による直接通報だけが受理されるようになった」と語った。社団法人韓人救助団のクォン・テイル団長は、「友人を呼んだら解放してやると言われて知人を引き入れ、その後、脱出する例もあると認識している」と語った。

 チョン会長は「被害者は金に困ってやって来ることが多いが、現実的に考えてカンボジアで大金を稼ぐのは容易ではないということを、若者たちには知ってほしい」と話した。

チョ・ヘヨン、パク・チャンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1222919.html韓国語原文入力:2025-10-12 20:34
訳D.K

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