尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領夫人であるキム・ゴンヒ女史の株価操作疑惑を「嫌疑なし」で処理し、弾劾訴追されたソウル中央地検のイ・チャンス地検長とチョ・サンウォン第4次長検事が20日、辞意を表明した。政権交代の可能性が高まった大統領選の局面でストレスを感じ、辞意を明らかにしたとみられる。起訴権を乱用したとの理由で弾劾訴追されたソウル高等検察庁のアン・ドンワン検事も辞表を提出するなど、大統領選を前に検事の辞意表明が相次いでいる。
ソウル中央地検はこの日、イ・チャンス地検長とチョ・サンウォン第4次長検事が辞意を表明したことを明らかにした。ソウル中央地検の関係者は「(イ地検長は)弾劾訴追後、精神的、肉体的に相当苦しんでおり、現在は健康状態が良くないが、復帰して中央地検の主要懸案に目途をつけたため辞意を表明した」と説明した。チョ次長検事も健康上の理由で辞意を表明したという。両検事は、キム・ゴンヒ女史のドイツモーターズ株価操作関与疑惑を捜査後、昨年10月にキム女史を嫌疑なしとしたことで、国会で12月に弾劾訴追され、今年3月の憲法裁判所による棄却決定で業務に復帰していた。
尹前大統領が検察総長だった頃に最高検察庁の報道官を務めていたイ地検長は、尹錫悦政権の発足後、文在寅(ムン・ジェイン)政権とイ・ジェミョン氏(現在、野党「共に民主党」の大統領選候補)を標的とした捜査を複数指揮した。2022年7月から水原(スウォン)地検城南(ソンナム)支庁長を務め、イ・ジェミョン候補の栢ヒョン洞(ペクヒョドン)と城南FCの事件を、翌年7月の全州(チョンジュ)地検長への異動後は、文在寅元大統領の元婿の特恵採用疑惑の捜査を指揮した。
昨年5月のソウル中央地検長への赴任後は、キム女史のブランドバッグ受け取り疑惑と株価操作疑惑事件をいずれも嫌疑なしとした。この過程で昨年7月には、イ・ウォンソク検察総長(当時)に報告もせず、キム女史に対して大統領警護処の付属施設まで出向いて「出張聴取」を行ったことから、「手加減捜査」だとの批判を浴びた。イ検事長は公正な捜査によって嫌疑なしとしたと主張したが、ソウル高等検察庁はキム女史の株価操作疑惑の再捜査を決めた。ソウル中央地検が中心となったミョン・テギュン専門捜査チームも、キム女史に出頭要請を通知している。
この日、辞表を提出したアン・ドンワン検事は、スパイねつ造事件でユ・ウソンさんが無罪を言い渡されたことに対し、その4年前に起訴を猶予していた北朝鮮に対する送金の疑いで2014年に同氏を改めて起訴し、物議を醸した。2021年の最高裁による公訴棄却判決で「起訴権乱用」が確認され、2023年9月に憲政史上初めて国会に弾劾訴追されたが、憲法裁判所によって認容5、棄却4で弾劾は棄却されている。