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「尹政権の対日外交の最大の敗着は、加害者の論理で和解の過程を断ち切ったこと」

登録:2025-03-05 06:40 修正:2025-03-05 11:54
国際和解学会のソウル大会を準備するナム・ギジョン・ソウル大学教授 
「韓国では『和解』をあまりにも簡単に言う…和解できない関係もある」
ソウル大学のナム・ギジョン教授が先月28日、ソウル中区のプレスセンターでハンギョレのインタビューに応じている=チョン・ヨンイル先任記者//ハンギョレ新聞社

 「韓国社会は『和解』についてあまりにも簡単に言うのではないかと思います。今回の大会を通じて、この点について真剣に疑問を投げかけてみようと思います。和解は加害者の『お詫び』と被害者の『許し』で置き換えることのできない複雑な問題です。本当に和解できない関係もあり得るし、そういう時は『和解の不可能性』まで考えなければなりません」

 ソウル大学日本研究所のナム・ギジョン所長職務代理は、7月14〜18日にソウル大学で開かれる国際和解学会(IARS)のソウル大会を準備している。韓国ではまだ馴染みのない「和解学」(Reconciliation studies)を研究する国際和解学会は、この問題について長い間取り組んできたドイツのフリードリヒ・シラー大学イェーナと日本の早稲田大学の学者たちが中心となって2020年に作られた。ナム所長は「和解学は対立解消学と記憶学のような平和学の一分野」だとし、「暴力行使などの衝撃によって関係が崩壊した後、これを回復していく過程について研究する学問」だと説明した。ナム所長は先月28日、ソウルプレスセンターで行われたハンギョレのインタビューで、「私たちは、ウクライナやガザなどで暴力が人生を破壊している姿を目撃している。いま停戦が議論されているが、和解の過程について深く考えず(停戦が)行われた場合、暴力の連鎖を防げないだろう」と語った。

 国際和解学会の大会は、学会の発足とともに開かれ始めた。2020年の第1回大会はウクライナの対立をテーマにドイツでオンラインとオフラインの混合方式で開かれ、以後日本(2回)、米国(3回)、ルワンダ(4回)、イタリア(5回)など大陸別に順番に毎年開かれている。ソウル大会は6回目。

 ナム所長は「学会側で今年の大会はアジアで開こうという意見が集まり、韓日関係などいろいろな『和解』問題を抱えている韓国が開催するのが良いという意見が出た」と話した。なかなか決断を下すことができず悩んでいたところ、シアル財団(シアルは種粒、民衆の意)が救いの手を差し伸べてきた。ナム所長は「財団のキム・ウォンホ理事長の勇断で大会事務局運営など財政支援を受けることになり、大会の開催を決断することができた」と語った。その後、昨年秋から事務局や組織委員会、執行委員会などを構成し、ホームページ(www.iars2025seoul.org/)をオープンした。現在は大会にふさわしく和解の韓国的意味について「基調講演」を行う演説者を確定するなど、いくつかの重要な詰めの作業を残している。

 大会期間中は全世界から参加したパネラー30人が和解をテーマに様々な発表を行う。韓国では組織委員会を構成する団体であるシアル財団(朝鮮半島の平和に対する周辺国の立場と国内の対立する視線)、金大中学術院(和解の政治家、金大中)、対話文化アカデミー(日本軍「慰安婦」問題と対話)、アジア平和と歴史研究所(誰が和解を語ることができるのか)、外交広場(転換期における終戦の定義)、平和財団(平和と和解のためのアジアの宗教間対話)などが参加する。日本からは東芝国際交流財団、 渥美国際交流財団などの参加が予定されている。

 「韓国だけを見ても、韓日の和解、南北の和解、済州(チェジュ)4・3事件や5・18光州(クァンジュ)民主化運動などの国家暴力による犠牲など、和解しなければならない問題があまりにも多い。様々な問題で関係が破壊されたら、和解の過程を通じてこれを乗り越え、『原状回復』をしなければなりません。そのような過程で再発防止策が導き出されるべきです。原状回復が不可能な場合は、新しい関係を作らなければならず、時には和解が不可能な場合もあります。和解というのはあまりにも『難しい』過程なのに、韓国ではこの言葉が簡単に使われ、汚染された形で使われる場合もあります」

 和解という言葉が汚染された極端な例が、映画『シークレット・サンシャイン』(イ・チャンドン監督、2007)でみられる加害者が自らを許す状況や、和解のために植民地出身女性の被害者に加害者である日本人男性の論理まで理解することを求める『帝国の慰安婦』(2015)のような試みだ。ナム所長は「和解とは、加害者の責任所在の把握とそれに立脚した処罰の過程を飛び越えるのではなく、そのようなことを含む過程」だとしたうえで、「この過程で映画『シークレット・サンシャイン』のように、被害者が神の力を借りて努力しても和解できない可能性もあることまで考え、議論しなければならない」と語った。そのような意味で、和解学は社会科学と歴史学を越え、必然的に人間の本質について問う神学と倫理学につながる。「映画『シークレット・サンシャイン』の最後の部分で、俳優のソン・ガンホがそうしたように、ただそばにいることが和解の不可能性と可能性を同時に示していると思います。これは加害者と被害者の間の和解ではありませんが、和解に向かうための入口になり得ます。ここまで努力しなければならない理由は、私たちがより良い共同体を目指すべきだからです」

ソウル大学のナム・ギジョン教授=チョン・ヨンイル先任記者//ハンギョレ新聞社

 ナム教授は革新陣営の代表的な日本専門家でもある。彼は和解学の枠組みから見た時、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権がこの2年半にわたり行ってきた「対日外交」の最も大きな敗着は、加害者の論理をそのまま受け入れ「和解の過程を完全に断ち切ったこと」だと語った。「尹政権の対日外交の最大の過ちは、『これ以上謝罪するわけにはいかない』という安倍談話(2015)の論理に立った日本のやり方に、韓国が同意したことです。和解は長期的に未来に開かれていなければならないのに、これを断ち切ってしまったのです」。ナム教授はそのような意味で、尹錫悦政権の対日外交は「朴正煕(パク・チョンヒ)大統領時代に韓日国交正常化で作られた『65年体制』を克服することよりも、韓国の政治と外交にさらに大きな障害として働く可能性がある」と懸念した。

 幸いなことは、尹政権が推進しようとしていた韓日パートナーシップ宣言(金大中-小渕宣言)2.0プロジェクトが12・3内乱事態によって中断された点だ。「尹錫悦政権の2.0宣言は、歴史問題はすべて終わらせ、韓日が無限に積極的な安保協力に進もうというものでした。事実上、準同盟になろうということでした。これは韓国外交の選択肢を非常に狭める結果をもたらしたはずです」。ナム教授は「この計画が中断されたおかげで、韓日が再び(韓国に対する植民地支配の不当性を認めた)菅談話(韓国併合100年談話、2010)から出発できる可能性が開かれた」と語った。

 「韓日関係は対称的かつ水平的な関係に向かっています。韓国は先の植民地支配を『違法』と捉え、日本は菅談話に戻り『韓国人の意思に反して』行われた強制的支配だったと認識するようになれば、両国間の溝ははるかに浅くなります。今後、このような溝を埋めようとする取り組みが必要です」。この至難な過程がナム教授の言う和解であるように聞こえた。

キル・ユンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1185302.html韓国語原文入力:2025-03-04 21:12
訳H.J

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