(1の続き)
続いて福祉分野の発表をおこなった仁荷大学のユン・ホンシク教授(社会福祉学)は、「弾劾だけでは、もう一人の尹錫悦(ユン・ソクヨル)を防ぐことはできない」として、「尹錫悦大統領を弾劾して新政権が発足すれば、尹錫悦政権が蹂躙(じゅうりん)した民主的手続きと権利は復元されるだろう。しかし、韓国社会の持続可能性を脅かす構造的リスクは解消されない可能性が高い」と述べた。それは「選挙は毎回途方もなく期待されたが、例外なく途方もない失望に帰結した。部分的な制度変化と公的福祉の量的拡大を除けば、どれだけ政権交代をしても社会経済的リスクを作り出す生産方式の根本的な変化は作り出せなかった」からだと指摘した。そして、今回の弾劾は政権交代にとどまらず、生産と分配(および再分配)のあり方の改革を含む「体制転換」の出発点にしなければならないと提案した。ただしユン教授は、権力構造の改革は必要不可欠だとしつつも、「矛盾しているが、私たちに必要な権力構造は民主主義を安定的に維持しうる分権化されけん制が可能な権力構造であると同時に、韓国社会が直面する社会経済的な危機を効果的に改革していく強力な権限を持つ権力構造でなければならない」と述べた。
環境分野の発表を担当した檀国大学のチョ・ミョンレ碩座教授は、現在の政治や社会的危機と同様、気候危機も深刻だとして、「韓国は『気候後進国』だが、特に尹錫悦政権ではグリーン転換のエンジンが止まっていた。気候危機をグリーン転換の機会とすべきだ」と述べた。そのためにグリーンニューディールの再推進と、国家政策の優先順位のグリーン転換中心への再設定を提案した。
ソウル科学技術大学のチョン・ホンジュン教授(経営学)は、韓国の「二重労働市場」問題を指摘してから、同一労働に対する同一水準の補償、労働基本権の死角地帯の解消、セーフティーネットの着実な拡大などを労働分野の実践案として提示した。
漢陽大学のイ・チャンミン教授(経営学)は、尹錫悦政権を「右派ポピュリズム」の枠組みで分析しつつ、現政権が執着した「健全財政と減税」、「釜山万博と財閥トップとの伝統市場の視察」、「金融投資所得税の廃止」を例示した。イ教授は続いて「右派ポピュリズムはまだブラックボックス(実体が分からない)だ。2000年代以降、西欧中心に復興したもので、再分配という左派ポピュリズム風の共通した議題もなく、リーダーのみが過剰な自信をほとばしらせているから」だとして、「政策決定者は社会厚生の最大化を追求する社会制度の設計者だという幻想から脱し、彼らの私益追求を阻まなければならない」と述べた。
忠南大学のユン・ジャヨン教授(経済学)は、こんにちの時代精神は「ケア社会の構築」だとして、持続可能な社会の構成にケアは必要不可欠な要素となりつつあると述べた。ユン教授はまた「ケアを個人や家族ではなく社会全体の責任とするために、ケアが再構成されなければならない」と語った。
専門家による7つの分野の発表後に行われた円卓討論には、中央大学のイ・チャンゴン教授(元ハンギョレ新聞記者)の司会で、中央大学のシン・グァンヨン名誉教授、韓国労働組合総連盟のチョン・ムンジュ事務処長、民主労働研究院のイ・チャングン研究委員、グリーン転換研究所のキム・ビョングォン研究委員、ソウル科学技術大学のキム・ヨンスン教授、生産と抱擁金融研究会のキム・ヨンギ会長(亜州大学教授)、延世大学のチェ・ヨンジュン教授、参与連帯のイ・ジヒョン事務処長らが参加した。
総括論評をおこなったシン・グァンヨン名誉教授は、憲法裁判所で弾劾が認容されたら、その後どうするのか、という問いを投げかけ、「(学者同士の議論にとどまらず)韓国の政策形成過程についての研究と、効率的な政策形成に影響を及ぼしうる民主的な政策形成システムの構築が模索される必要がある」と述べた。シン教授は、政策で社会を変化させることができればと思うと付け加えた。