日帝強占期(日本による植民地時代)の強制動員生存被害者、イ・チュンシクさん(100)が日本の戦犯企業ではなく民間の寄付金形式の支援金で被害者賠償金を支給する尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の「第三者弁済案」を受け入れたことが確認された。イさんの長男は「父親は正常な意思表示ができる状態ではない」として、賠償金の受領を取り消す意向を明らかにした。
日帝強制動員被害者支援財団(財団)は30日、イ・チュンシクさん側が同日午前、財団から最高裁(大法院)の徴用被害損害賠償勝訴判決による賠償金と遅延利息を受け取ったと発表した。2018年の最高裁の強制動員日本企業の損害賠償責任認定判決後、日本側の反発で韓日対立につながったことを受け、尹錫悦政権は昨年3月、韓国企業から募った寄付金で財団が判決金を支給する「第三者弁済案」を示した。
最高裁の確定判決後、被害者15人中4人の被害者・遺族は「まず過ちを犯した人たちが謝罪すべきだ」として、判決金の受領を拒んできた。そんな中、今月23日にヤン・クムドクさん(93)が第三者弁済案を受け入れ、1週間後のこの日、イさんも政府案を受け入れたのだ。
イさんの判決金受領が知らされた直後、イさんの長男、チャンファンさんはソウル瑞草区(ソチョグ)中央地方裁判所前で記者会見を行い、「父が第三者弁済を受領した事実について、全く知らなかった」とし、「第三者弁済方式の被害賠償の受け入れを取り消すことができるかについてこれから話し合う」と語った。さらに「父は先日から老衰とせん妄症で療養型病院に入院しており、まともにコミュニケーションを取るのが難しい状況」だとし、「そのような状況で、父が『第三者弁済に同意する』という意思表示を強制動員支援財団にしたということが、息子としては納得できない」と付け加えた。
「第三者弁済案」に反対したチャンファンさんは兄弟の一部が第三者弁済の受領に署名したと主張した。チャンファンさんは「兄弟の一部が最近財団と接触し、第三者弁済の受領可否について話し合ってきたことを知っていた。兄弟たちが昨日、私に(第三者返済の受領に)署名をするという意思を明らかにしたので、今日、兄弟たちを説得するために光州(クァンジュ)に行く予定だった。ところが今日の昼頃、ニュースを見て父に判決金も支給されたことを知った」と語った。
これで2018年最高裁確定判決を受けた被害者15人のうち13人が第三者弁済案にともなう判決金を受領した。故パク・ヘオクさん(1930~2022、三菱重工業強制動員)と故チョン・チャンヒさん(1923~2012、三菱重工業強制動員)の遺族は判決金の受領を依然として拒否している。
一方、この日ソウル中央地裁民事37単独のキム・ミンジョン判事は、Kさんなど9人が日本製鉄を相手取って起こした損害賠償訴訟で、原告らに1億ウォン(約1100万円)の支給を命じる原告一部勝訴判決を言い渡した。また、Cさんなど5人、Lさんなど3人が三菱重工業を相手に起こした損害賠償訴訟でも、原告らにそれぞれ8800万ウォン(約890万円)、1億ウォンずつ支給を命じる原告一部勝訴判決を言い渡した。