仁川大学のキム・チョルホン教授が定年退任を控えて政府が与える勲章・褒章を受けないという「退職教員政府褒賞未申請者確認書」を大学に提出した。尹錫悦(ユン・ソクヨル) 大統領の名前の入った勲章を受けたくないという趣旨だ。
仁川大学産業経営工学科のキム・チョルホン教授は28日、ハンギョレとの電話インタビューで、「非道な政権の下で、その政権の代表である大統領の名前が入った勲章・褒章を、到底受けることができない」とし、勲章・褒章を拒否する理由を説明した。キム教授は「国民の安全を守るのが国の基本義務だ。その義務のために選出職の公務員である大統領を選ぶわけだが、今の大統領はこの国が自分のものであると考えているようだ」とし、「弾劾まで取りざたされている人から勲章を受けるのは理にかなっていないと考え、拒否感もあった」と述べた。
キム教授は、作家ハン・ガン氏のノーベル文学賞受賞をまともに祝うことができない雰囲気を作った点、研究開発(R&D)予算を大幅に削減する一方、外遊に予備費まで使った点、検察共和国を作った点なども勲章・褒章を拒否する理由に挙げた。
キム教授は1993年3月1日に仁川大学助教授に任用された後、32年(退任時期の2025年2月まで)間教授として在職した。勤政勲章は33年以上の経歴があれば受けることができるが、キム教授は3年間の軍経歴も含め、勤政勲章の対象者に分類された。キム教授は1990年代から仁川の労働現場を訪ね、労働災害、労働者の健康権と関連した研究を続けてきた。2002年に「健康な労働世界」を創立して2023年まで初代代表を務め、2001年には仁川大労働科学研究所の創立にも関わった。さらに全国教授労働組合では2000年から2023年まで国公立大学委員長を担った。
以下は、キム教授の勲章放棄趣旨の文章全文。
こんな勲章、要らないから、持っていけ!
キム・チョルホン(仁川大学教授、前教授労組国公立大学委員長)
数日前、大学本部から定年を控えて勲章・褒章を授与するため、教育部に提出する功績調書を作成してほしいと言われた。功績調書の文書を前にして、様々な考えが頭をよぎった。まず、これまで大学の先生として自分がやってきたことにどんな価値があって、勲章の対象になるのかをじっくり考えてみた。
勲章とは国家のために犠牲を払ったり明確な功績を立てた者に授与され、功績の程度と基準によって授与される勲章が違うという。大学の教授といえば、以前より社会的地位やプライドが大分低くなったとはいえ、まだ一定のレベルの経済社会的既得権層に含まれる。すでに社会的既得権で多くの恩恵を受けた人が、一定以上の時間が経てば受け取ることのできる、まるで皆勤賞のような勲章・褒章に何の意味があるのかと思った。
また、勲章・褒章の証書に書かれる授与者の名前に強い拒否感があった。勲章・褒章の授与者がなぜ大韓民国または職責上の大統領ではなく、「大統領尹錫悦」にならなければならないのかだ。尹錫悦は選出された5年任期の政務公務員だ。もし勲章・褒章を受けるとしても、祖国の大韓民国の名前ならまだしも、まともに国を代表する価値と資格のない大統領から授かりたくない。勲章や褒賞をするに当たっては、受け取る人にもそれに値する資格が必要であるが、授与する人にも十分な資格が備わっていなければならない。
ノーベル文学賞の受賞をまともに祝うこともできない雰囲気を作ったのはもちろん、イデオロギーと地域感情で罵倒し、ついに有害図書に指定する無知な政権だ。国家の未来のための基本となるべき研究関連のR&D予算は大幅に削減し、外遊を口実にした海外旅行には国家の緊急予備費まで惜しみなくつぎ込む非道な政権だ。法務部の公務員に過ぎない検事たちが司法機関を僭称し、恐怖政治の先鋒隊に転落した検察共和国のトップである尹錫悦の名前が付けられた勲章に、何の意味と価値があるだろうか。
国を両極端に切り裂き、陣営間の政治的利益だけを狙う、人間の住む世界を獣の世界にして、民衆の暮らしのことは無視したまま、自分の家族と一部支持層だけを気にする大統領にもらった勲章・褒章が、わが家の居間に置かれることを想像するだけでおぞましい。
毎週末、(集会のために)龍山(ヨンサン)と光化門(クァンファムン)に向かうことのないよう、支持率20%なら恥ずかしいと思って自ら退くべきだ。国をうまく率いる能力も意志もないなら、(大統領の座から)降りてきて、長くない秋の日に夫人の手を握って紅葉でも楽しむことを勧める。勲章を拒んだ憂さ晴らしと言ってもいいし、勇気のない世間知らずの学者の小さな抵抗と言われてもかまわない。
「こんな勲章、要らないから、持っていけ!」