国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長が北朝鮮を「事実上の核兵器保有国」と呼び、北朝鮮の核問題におけるリスクを管理する外交に乗り出すべきだと呼びかけた。北朝鮮の核能力が急速に強化され、米国でも「北朝鮮の非核化」を前提としない「核軍縮交渉」の必要性を主張する声が高まる中、核不拡散体制の中核であるIAEAの首長が北朝鮮の核保有を認めるような発言をしたことで、波紋が広がっている。
グロッシ事務局長は26日(現地時間)、AP通信とのインタビューで、北朝鮮の核計画が国連安全保障理事会の制裁と国際法に違反した点では非難されるべきだとする一方、2006年に北朝鮮が「事実上の核兵器保有国」(a de facton uclear weapon possessor state)になって以来、国際社会の対話の試みがなく、以後北朝鮮の核計画が大幅に拡大したと懸念を示した。また「北朝鮮との対話を中断したことが、少しでも北朝鮮の核計画をめぐる問題を解決したのかについて疑問を持っており、むしろ状況を統制不可能な状態に悪化させているのではないか」と問い返した。
また、13日に北朝鮮が初めて高濃縮ウラン生産施設を公開したことについて、「北朝鮮は国際核安全基準が守られているか確認できない広大な核プログラムを保有している」と強調した。さらに、北朝鮮が30~50発の核弾頭を保有していると予測する専門家もいるとして、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が「核兵器を幾何級数的」に増やすよう指示したことが何を意味するだろうかと述べた。
グロッシ事務局長の今回の発言は、北朝鮮の核リスクを減らす外交の必要性を強調したものだが、事実上、北朝鮮の核保有を容認する発言とみられざるを得ない。これについて韓国外交部当局者は27日、「北朝鮮の非核化は朝鮮半島と全世界の平和と安定を達成するための必須条件であり、国際社会の一致した目標だ」と反論し、「私たちはIAEAを含む国際社会と協力して北朝鮮の非核化の達成に向けて取り組み続ける」と述べた。
しかし最近の北朝鮮の核開発加速化と朝ロ密着の中で、国際的に北朝鮮非核化に対する懐疑論が広がっている。ウクライナ戦争を機に北朝鮮と密着したロシアは、北朝鮮の非核化はもはや意味がないと主張し、国連安保理の対北朝鮮制裁履行を監視する専門家委員会の活動延長に拒否権を行使するなど、北朝鮮の核開発を阻止する制裁を形骸化させている。
米大統領選挙を控え共和党と民主党が今年打ち出した政綱政策にも、朝鮮半島非核化の目標は含まれていない。ドナルド・トランプ前大統領が再選された場合、事実上北朝鮮の核保有を認め、米国を脅かしうる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を抑止する方向の核軍縮交渉に本格的に乗り出す可能性が高いものとみられる。民主党でも短期間で朝鮮半島非核化を実現するのは難しいと判断し、北朝鮮の核能力増大の遮断とリスク管理に力を入れようとする声が高まっている。今年3月には米国家安全保障会議(NSC)当局者が「米国の目標は依然として朝鮮半島の完全な非核化」とする一方、その過程で北朝鮮と「中間段階の交渉」を検討すべきだと述べた。