本文に移動

韓日ACSAが「パンドラの箱」と呼ばれる理由とは

登録:2024-09-21 06:25 修正:2024-09-21 07:41
昨年11月、日本の宮崎県東部の日向灘海域で、米海軍と日本の海上自衛隊が参加した米日掃海(機雷除去)特別訓練の場面。朝鮮半島有事の際、日本の自衛隊が掃海作戦に乗り出すと予想されている=日本海上自衛隊ホームページより//ハンギョレ新聞社

 先月27日午前、国会の国防委員会全体会議。キム・ソンホ国防部次官が韓日物品役務相互提供協定(ACSA)の締結に賛成する考えを明らかにした。この日、祖国革新党のチョ・グク議員が「李明博(イ・ミョンバク)政権時代から進められてきたACSAの締結に同意するか」と尋ねると、キム次官は「現在の韓米日軍事協力と有事の際の対北朝鮮抑止力を確固たるものにし、われわれの対応態勢を強化するため、そのようなことが必要な措置だと考えている」と答えた。

 波紋が広がると、キム次官は同日午後の会議で、「(韓日ACSAは)政府レベルで同意せず、検討していない」と自分の発言を否定した。ACSAは有事の際に弾薬や食糧、燃料などの軍需物資をやり取りできるようにする協定だ。

 キム次官はわずか3時間の前言を撤回したが、韓国軍内部では韓日ACSAの必要性を認めた発言がキム次官の率直な考えだと言われている。公の場で主張するには時期尚早だから、前言を翻しただけということだ。キム次官だけでなく国防部と軍高官の多くがプライベートでは「韓日ACSAが必要」と主張する。

 彼らは北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対抗するには必ずこの協定が必要だと主張する。「国連軍司令部の後方基地7カ所が日本にあるため、朝鮮半島有事の際、在日米軍と国連軍司令部に対する円滑な後方軍需支援のためには、日本の自衛隊の協力と支援が必ず必要だ」とし、「韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)とACSAが必要だ」と主張する。韓米同盟と米日同盟の隙間をGSOMIAとACSAで埋めていけば、韓米日安保協力体制をより実効的に強化していけるということだ。米国と日本はこの協定の締結に賛成している。

先月27日、国会国防委でキム・ソンホ国防次官(中央)が答弁している/聯合ニュース

 キム次官がACSAに賛成する本音をさらけ出すことが難しい理由は、この協定が韓日関係の「パンドラの箱」であるためだ。同協定の最大の争点は、日本の自衛隊の朝鮮半島進出のルートになる恐れだ。

 同協定に賛成する側は、自衛隊の朝鮮半島進出への懸念については言及を避けようとする。彼らの主張からは、朝鮮半島有事の際、日本の後方支援と軍事協力が必ず必要であり、この過程で自衛隊の朝鮮半島進出が避けられないならやむを得ないという認識が読み取れる。2015年10月14日、当時のファン・ギョアン首相が国会対政府質問の答弁で、「やむを得ない場合、韓国政府が同意すれば日本の自衛隊が入国しうる」と発言したことと似たような内容だ。

 韓日ACSAに反対する側は「20世紀に日帝強占のつらい経験をした韓国が、日本の自衛隊が合法的に朝鮮半島に入る道を自ら開くことは容認できない」と強調する。李明博政権時代から進められてきたGSOMIAとACSAのうち、GSOMIAが朴槿恵(パク・クネ)政権時代の2016年に締結されたが、ACSAはこのような否定的な国民感情に阻まれ、まだ公論化も難しい状況だ。

 朝鮮半島有事の際に米国が自衛隊に期待する軍需支援には、単なる物資支援だけでなく、海の機雷除去作戦(掃海作戦)、対潜水艦作戦、潜水艦救助のような軍事作戦が含まれているという。自衛隊が韓国海域や公海で掃海作戦を展開した場合、韓国海軍が自衛隊艦艇の入港・出港支援、通信支援、飲料水、食糧、燃料、修理・整備などの軍需支援を担当するものとみられる。韓日ACSAの内容自体が自衛隊の朝鮮半島進出、滞在を保障するものではないが、自衛隊が朝鮮半島内で必要な港湾・空港施設や軍事基地利用、物品または用役支援を要請することができ、韓国がこれを支援する構造になっている。この協定で、朝鮮半島有事の際に自衛隊艦艇や輸送機が朝鮮半島に派遣されたり、滞在したりすることが可能な条件を備えることになる。自衛隊の朝鮮半島進出のルートになるという懸念の声があがる理由だ。

北朝鮮が高重量通常弾頭を装着した新型短距離弾道ミサイルの試験発射に成功したと19日に発表した。韓日ACSAに賛成する側は、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対抗するためには必ずこの協定が必要だと主張する/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 朝鮮半島有事の際、朝鮮半島で作戦を遂行する米軍を支援するために、米軍の要求で自衛隊が投入される可能性がある。朝鮮半島で戦争が起きれば、韓国に戦時作戦統制権がないため、自衛隊の朝鮮半島投入を制御することは難しい。

 これに対し、李明博政権時代、日本とACSAの締結を推進したキム・グァンジン国防部長官(当時)は、国連平和維持活動(PKO)、人道支援、災害救護活動、海軍間の捜索・救助訓練などの分野で、両国間の物資・食糧・燃料などのやり取りに限定されると述べた。平時だけを対象にし、人道的災害救助活動に限られたもので、軍事活動とは関連がないという説明だった。

 しかし、米国と日本のACSA改正過程を見る限り、この説明は説得力がない。1996年に初めて結んだ両国のACSAは、国連平和維持活動と人道的国際支援活動のような平時のみに適用された。ところが、1999年の第1次改正の時、平時だけでなく朝鮮半島有事の際のような周辺事態にも適用されるものへと変わり、2004年改正の時は当初提供が禁止されていた弾薬が提供可能になった。韓日ACSAも、当初は国連平和維持活動と人道的災害救助、非殺傷軍需物資で始まり、改正作業を通じて朝鮮半島有事や弾薬などに拡大する可能性が高い。

 キム・ソンホ次官は国会で「パンドラの箱」を急いで閉じたが、すでに自衛隊の朝鮮半島進出への懸念が急速に高まった後だった。

クォン・ヒョクチョル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/polibar/1158975.html韓国語原文入力:2024-09-2009:56
訳H.J

関連記事