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被害者のキムさんの元妻のパク・チウンさん(仮名)は、「医務記録に出ている『不正確な発音』、『しどろもどろ』のような内容は、薬物過多で舌が動かなかったという証拠。舌だけでなく筋肉も力が入らなかったのだろう」と話した。また、「(診療記録でも)故人が自ら身体の異常を感じ、他の病院の服用薬を当たってくれと言ったくらいだから、まさに過剰投薬だ」と述べた。経過記録では、キムさんが「注射は打たれ過ぎて打つのが嫌です」と述べたことが確認できる。
キムさんは入院中、計5回も連続拘束されていたが、最も短い3回目の拘束(16時間10分間)でさえ保健福祉部の定めた「1回最大許容時間4時間、連続8時間」という指針の2倍にのぼる。1回目の拘束は実に78時間30分間に及び、死の直前の5回目の拘束は2番目に長い66時間50分だ。被害者のキムさんは全身が拘束されている間中ずっと、足をバタバタさせたり体をひねったりして苦しむ様子を見せたが、拘束は死の瞬間まで解かれることはなかった。このような状況で致命的なアチバンとハロペリドールを毎日打たれていたのだ。
「ゾウ注射」の他に毎日飲まされていた経口薬も、高用量であることに変わりはなかった。記録を見ると、ほぼ毎日キュロケル錠(明仁製薬)400~600ミリグラム、バレプトル徐放錠(丸仁製薬)900~1800ミリグラム、スリバン錠(明仁製薬)3ミリグラム、明仁ベンズトロピンメシレート錠1ミリグラム、リスペン錠(明仁製薬)2~4ミリグラムなどが投薬されているが、精神科専門医は「これらも決して少ない容量ではない。そこに注射投与が加わったため、身体的に弱った患者にとっては、より大きな負担になっただろう」と診断した。病院側は「(被害者の)攻撃的傾向と行動調節の困難」を隔離・拘束の理由としているが、隔離室内の防犯カメラ(CCTV)の映像を確認すると、それは事実ではなかった。
精神科の専門医たちは、たやすく処方される精神科薬物の危険性を警告する。彼らは、「精神科薬物は少なくない副作用が伴うため、用量が多くなるほど慎重でなければならない。しかし、現場では簡単に処方される傾向がある」、「精神科薬物は決して私たちが期待するように心の症状のみを理想的に調節してはくれない。特に被害者は、精神と身体の機能の両方を抑える薬の影響を強く受けた。そのことに留意すべきだ」と述べた。
2022年1月8日の死亡事件時に出動した警察は、わずか3時間半で事件を「変死」として終結処理した。遺族は病院の4人の医療スタッフを業務上過失致死などで告訴したが、警察は7カ月で嫌疑なしとした。国家人権委員会(人権委)の捜査依頼を受けてようやく、今年3月に8人の看護師を医療法違反で送検した。病院長、主治医、当直医は除外された。春川(チュンチョン)地検は4月、8人の看護師に対して各罰金30万ウォンの略式命令を求め、6月に裁判所で処分が最終確定した。「犯罪が軽いため、正式の裁判は行わず罰金30万ウォンを宣告してくれ」という意味だ。
キムさんの元妻のパク・チウンさん(仮名)と息子のキム・ジンスさん(仮名、21)は、病院長や主治医らを殺人罪で改めて告訴する準備をしている。保健福祉部はハンギョレの報道直後、全国の精神病院の実態調査を約束したが、同病院に対する調査については、まだ独自の報告書も作成していないという。