トップの逮捕で韓国IT大手「カカオ」が創立以来最大の危機に陥っている。人工知能(AI)を中心とする産業が急速に再編される過程で突破口を見出せていないカカオが、リーダーシップ危機にまで直面したためだ。さらにカカオを巡る捜査・規制当局のまた別の事件に対する調査と制裁も控えており、リーダーシップ危機の深さは計り知れない。
23日未明、経営刷新委員長を務めているカカオ創業者のキム・ボムス氏逮捕のニュースに、カカオ内部の関係者らは予想できなかったという反応を示した。匿名を希望したカカオの重要関係者はハンギョレに「ここまでなるとは思わなかった」と述べ、当惑を隠さなかった。逮捕は避けられるとみていたという意味だ。
キム氏は最近まで潔白を強調してきた。18日、系列会社の経営陣を招集した席で「進行中の事案なので詳しく説明できないが、いかなる不法行為も指示したり容認したりしたことはない」と発言している。その上、キム氏を拘束に導いた株価操作疑惑にかかわったカカオの関連者らに対する拘束令状が棄却され、一部は逮捕されたが保釈されたため、カカオ内部ではキム氏が不拘束状態で裁判を受けるだろうという期待があった。
キム氏が持たれている「SMエンターテインメント株価操作疑惑」の疑いの中心となるのは、キム氏が芸能事務所大手「HYBE(ハイブ)」の公開買収を妨害するための株価引き上げに関与したかどうかだ。昨年2月7日、SMエンターテインメントの株の9.05%を確保し2大株主となったカカオは、その後「SM買収戦」に飛び込んだHYBEが公開買収を宣言すると、私募ファンドなどを用いて2400億ウォン規模の買収に乗り出し、相場を不当に引き上げたという容疑が持たれている。
キム氏の拘束で、まずは約1年間続いたカカオの刷新活動が支障をきたすものとみられる。キム氏は、カカオ経営陣が相次いでモラルハザードの物議をかもして捜査・規制当局の標的とされると、非常経営を宣言し、昨年11月にCA協議体経営刷新委員長を担って経営刷新作業を陣頭指揮した。
カカオの司法リスクはSM株価操作疑惑事件だけではない。検察はキム・ソンス前カカオエンターテインメント代表などが2020年にドラマ制作会社のパラムピクチャーズに相場差益を集中させる目的で持ち株を高く買い入れたという疑惑も調査しており、カカオモビリティがタクシー配車市場で圧倒的なシェアを持つプラットフォーム「カカオT」を利用して加盟タクシーに「コール(呼び出し)」を集中させたという疑惑も捜査中だ。金融当局は、この過程でカカオが売上を膨らませたとみなし、制裁を検討している。
カカオが重要系列会社でありインターネット専門銀行であるカカオバンクの筆頭株主の地位を取り下げる可能性もある。SM株価操作疑惑の裁判結果によっては、カカオバンク株を売却しなければならない。インターネット銀行関連法は、大株主がここ5年間で金融関連法、公正取引法などの違反で罰金刑以上の処罰を受けた場合、大株主の地位を取り下げるよう定めている。
経営陣および主な系列会社が司法リスクにさらされている間、「事業リスク」も高まっている。最近、生成AIの登場などで産業パラダイムが変化しているが、カカオはゲームやAIなどの主要系列会社の事業不振が続いている。今年に入って約30%も急落したカカオの株価は、新しい成長動力を見つけられていない状況で、従来の事業も不安定なカカオの現状がそのまま投影されている。第1四半期のカカオの営業利益(連結基準)は、1年前に比べて約55%の大幅減。SK証券は先日発表した報告書で「利益成長が容易ではない状況」だとし、目標株価を7万8千ウォンから6万2千ウォンに大きく引き下げた。
カカオは同日、報道資料を出して「現在の状況は残念だが、チョン・シナCA協議体共同議長(現カカオ最高経営者)を中心に経営の空白を最小化するために最善を尽くす」と明らかにした。この日、国内の証券市場でカカオ株が前日に比べ5.4%急落するなど、カカオの系列会社の株価は急降下した。カカオペイ(-7.8%)、カカオゲームズ(-5.4%)をはじめ、カカオバンクも3.8%下落で取引を終えた。この日のカカオの上場系列会社の合算時価総額の損失は約1兆7千億ウォン。