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親に預けた1億ウォン、借金返済に使われ…破産から家族解体まで=韓国(1)

登録:2024-02-08 00:57 修正:2024-02-09 06:51
[家族破産]借金はいかにして家族をバラバラにしたのか
妻と離婚し、自己破産したイム・スドンさん(仮名)が昨年11月21日のハンギョレとのインタビューで、債務相談記録を見せている=パク・チュニョン記者//ハンギョレ新聞社

 イム・ホヨンさん(仮名、36)は両親との関係について「『あなたはあなた、私は私』だと思う」と語った。これでも今は怒りがある程度落ち着いたからできる考え方だ。一時は病床にあってせん妄に苦しむ父親の前で、聞こえよがしに大声で一時間も罵詈雑言を並べ立てた。母親と大声でケンカしたこともある。その時、母親に凶器を向けられたほど、家族の空気は深刻だった。

 すべての確執は親の借金から始まった。イム・ホヨンさんは20代初めに軍に入隊し、副士官まで6年間務めた。その間の月給や退職金、退職後の職場生活で稼いだ金に至るまで、すべて両親に預けていた。両親に求められて融資を受けた金まで預け、金額は1億ウォン(約1120万円)を超えていた。だが、両親はその金をすべて借金の利子返済に使ってしまっていた。イム・ホヨンさんはそのことを後になって知った。

 長きにわたって営んできた家業の餅屋が倒産したことで、両親はイム・ホヨンさんが軍にいた時代にもイム・ホヨンさんの数枚のクレジットカードで利子を返済していたと言った。果ては妹の名義でも借金していた。「除隊してから3年たってようやく私に話したんです。その後も生産職として昼夜を問わず働いて稼いだ金まですべて渡していたのに…。正直、みんなで死んでしまえたらという気持ちでした」

 借金は家族をバラバラに解体する。債権者に連帯責任を問われ、債務返済が求められることで、家族は法的に、あるいは物理的にバラバラにされる。返済を迫られた家族が他の構成員の金を吸い取るように持って行ってしまうことで不和が生じ、関係が絶たれることもある。経済的に崩壊した後に、国から少しでも多くの支援を受けるために、法的に世帯を分離して解体される家族もある。

 ハンギョレが128人の自己破産申請者におこなったアンケート調査でも、このような推移が確認できる。自己破産申請者の45.3%(58人)が現在「離婚」状態、または「別居」状態にあると答えた。「既婚」状態と答えた人は34.4%(44人)だった。

 ソウル再生裁判所の「2022年個人破産事件統計調査結果報告書」でも、「扶養家族(同居家族)のいない」債務者は66.4%にもなり、ソウル金融福祉相談センターが2020年の生活実態を調査した1108人の自己破産申請者も、50%が「1人世帯」であることが明らかになっている。同センターはこれについて「自己破産申請者のかなりの数が家族の経済的、心理的支持を受けずに一人で生計を維持しており、一部は悪性負債などの問題で家族解体を経験したとみられる」と分析した。

自己破産申請者の半数は離婚か別居

 イム・ホヨンさんは最初から家族と疎遠だったわけではない。両親が初めて経済的困難を訴えた時は、「家族なのだから、何か必要に迫られて私にまで来て話したのだろうという考えが強かった」と語る。だがそのようなことが繰り返されたこと、不幸と失敗、自分に押し寄せてくる取り立てなどのせいで、怒りが徐々に強まっていった。

 まず、父親が交通事故にあい、全身まひの判定を受けるという不幸に襲われた。病院費が毎月数百万ウォンかかったが、イム・ホヨンさんが扶養義務者として登録されていたため、父親は医療給与の受給対象者から除外された。そのような中にあっても、イム・ホヨンさんは2019年に金を集めて韓国料理店を開いた。家族の生計を維持するとともに、借金を返すためだった。序盤は繁盛したものの、2カ月後にコロナ禍に襲われ、わずか1年で商売をたたむという失敗を経験することになった。

 その間も取り立ては続いていた。ある貯蓄銀行は、電話をかけてきて父親の借金の遅延利子を払えとイム・ホヨンさんに迫っては、「父親の電話機ではないのか」ととぼけた。債務者の家族に債務があることを知らせる行為を禁じている債権取り立て法に違反して息子に取り立てを迫る電話をかけておきながら、違法ではないかのように振る舞ったのだ。「私が軍にいた時から使っていた電話機です。だから『利子を返せということか』と言ったら、『それは私たちには言えません』と言うんです。わざと怒らせてるんですよ」

 イム・ホヨンさんはこのようなことが続いたためストレスが極に達し、父親が入院している療養病院の屋上で自殺すら考えた。しかし、最後に見た父親の顔が頭から離れず、考えを改めた。その後、交際相手の女性の勧めで2021年夏ごろ、城南(ソンナム)金融福祉相談センターに相談し、個人再生を申請することになった。2022年7月に裁判所の個人再生開始決定が下り、今はある会社で働きながら、3年を期限として毎月72万6534ウォン(約8万1000円)ずつ返済している。

 イム・ホヨンさんの両親は協議離婚した。イム・ホヨンさんが債務について助言を受け、進めたものだ。父親と母親にそれぞれ基礎生活保障を受給させるとともに、負債を帳消しにするために、世帯分離はやむを得ない選択だった。こうして知らぬふりのできなかった家族のための法的手続きまで済ませたものの、それまでに隙間が広がってしまった関係が修復されることはなかった。「最初は借金取りを殺したいと思っていたけれど、だんだん家族が憎くなってくるんです。家族に金の話を切り出された時、もう二度と会わないつもりで家を出ていくべきでした。それが私の生きる道だったのに」

 城南金融福祉相談センターのセンター長を務めるソン・ジンソプさんは、「破産や個人再生にまで至ると、長きにわたって借金のせいでひっ迫していたため家族同士の関係が悪化していたり、家族に頼りたくても頼れずに夜逃げしたり、避けたりといったかたちで家庭が解体されてしまっているケースが多い。家族に被害を与えないようにするために離婚するケースもあるが、実際に経済的な問題が解決されれば、離婚していても一緒に暮らすケースもある」と語った。(2に続く)

キム・ジウン、パク・チュニョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1127556.html韓国語原文入力:2024-02-07 05:00
訳D.K

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