日帝強制動員の被害者の損害賠償請求権を認める判決が相次ぐ中、被害者には請求権がないと判断して物議を醸した一審判決が控訴審で覆された。
ソウル高等裁判所民事33部(ク・フェグン裁判長)は1日、Sさんら強制動員の被害者とその遺族16人が三菱重工などの日本企業7社を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、「一審判決には問題があるため差し戻す」として、ソウル中央地裁に差し戻した。
一審は2021年6月7日、韓日請求権協定に則り、被害者の賠償請求権は制限されるとみるべきで、被害者に訴訟を起こす権利はないとして訴えを却下した。このような判断は2018年10月30日の最高裁全員合議体の判断を拒否しており、少数意見の趣旨にもとづいた判決であるため、物議を醸した。
事案の実体について判断することなしに下した一審の却下決定は誤っているとして控訴審が破棄し、差し戻したことで、この事件は一審で改めて判断が下される見通しだ。
一方この日、Kさんら強制動員の被害者と遺族43人が三菱重工を相手取って起こした賃金請求訴訟の控訴審も同じ法廷で行われ、一審と同様にKさん1人のみに対する1000万ウォンの賠償を三菱重工に命じる判決が下された。
Kさんら強制動員の被害者と遺族は、日帝強占期(日本による植民地時代)に日本の端島(通称)軍艦島などに連れて行かれて強制労働させられたにもかかわらず、賃金を受け取れなかったとして、2013年に訴訟を起こした。一審は、Kさんを除く被害者については「三菱重工に強制労役をさせられたということが証明されていない」として原告敗訴の判決を下していた。
強制動員の被害者と遺族は、裁判所がより積極的に立証責任を被告に取らせ、被害事実を確認するよう求めた。被害者のイ・ギテクさんの息子のイ・チョルグォンさんはハンギョレに、「父は強制動員から戻ってきてじん肺を患い、還暦にもとどかずに亡くなった。父ははっきりと船に似た島(軍艦島)で働かされたと言っていた。今になって客観的資料を持って来いと言われても方法がない。政府が事実確認に取り組むべきだ」と述べた。
被害者の法律代理人を務めるカン・ギル弁護士は、「強制動員の被害者がどの企業で働かされていたかに関する資料は日本の政府と企業にあるが、日本が協力しないため立証が困難な状況にある。証拠を持っている日本は積極的に訴訟に取り組むべきで、韓国の裁判所も積極的に証拠を調査すべきだ」と述べた。