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梨泰院特別法までも…韓国与党、大統領に拒否権行使を建議

登録:2024-01-19 07:42 修正:2024-01-19 09:06
梨泰院惨事犠牲者の遺族が18日午後、大統領室前で、9日に国会本会議で可決された「梨泰院惨事特別法」の即時公布を求めて頭を丸めている。この日午前、国民の力は議員総会で同法に対する再議要求権(拒否権)の行使を大統領に建議することを決めた=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 与党「国民の力」は梨泰院(イテウォン)惨事特別法の政府移送を翌日に控えた18日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に再議要求権(拒否権)の行使を建議した。尹大統領はこれを受けて再議を要求するものとみられる。同時に国民の力は法案の不公正さを指摘しつつ、共に民主党に再交渉を提案したが、民主党は「法案をこれ以上後退させることはできない」として拒否した。

 国民の力のユン・ジェオク院内代表はこの日午前、梨泰院惨事特別法についての議員総会の終了後、記者団に対し、「民主党は同法を公正に、与野党の間で円満に処理することを期待するというよりも、大統領の再議要求権行使を誘導したと判断した」とし、「(政府与党に)政治的打撃を与え、総選挙で政争化し続けることを意図したものと判断し、再議要求権(の行使を尹大統領に)建議するとの結論を議員総会で下した」と述べた。

 国民の力は「毒素条項の多い法案を野党が一方的に可決させた」と主張してきた。今月9日に民主党主導で国会で可決された梨泰院特別法は、特別調査委員会(特調委)を設置して一昨年の10月29日に起きた梨泰院惨事(雑踏事故)の原因や収拾過程での問題点などを明らかにすることを骨子とする。国民の力は、特調委の11人の委員のうち7人を野党と国会議長が推薦するとした条項(残りの4人は与党推薦)▽刑事裁判で確定された事件や送検または捜査の中止された事件の記録をすべて閲覧する権限を特調委に与えた条項などを「毒素条項」と主張する。特調委の構成が「野党寄り」であるため公正性が担保できない、特調委が事件記録を閲覧して「二番煎じ、三番煎じの企画調査を行う恐れがある」(ユン院内代表)というのだ。

 ただしユン院内代表は批判世論を意識したかのように、民主党に対して「特調委の構成の公正性を担保しうる案、毒素条項を除いた案をもって再交渉することを提案する」と述べた。国民の力の院内指導部の関係者は、「与野党間で一定程度合意しうる内容が含まれていたなら、拒否権の建議は難しかっただろう」とし、「(再議要求権の行使に対する批判世論を負担に感じているのは)その通りだ。だから再交渉しようということ」だと述べた。

 大統領室は、梨泰院特別法が政府に移送されれば再議を要求する方針だ。大統領室の関係者は「再議要求権の行使に傾いているのは事実」だと語った。ただし再議を要求する時期には苦心しているという。大統領は法案移送日から15日以内(休日を除く)に公布するか、または国会に再議を要求しなければならない。その期間に、尹大統領は世論の説得と再議要求の理由付けにあたるとみられる。尹大統領が梨泰院特別法にまで再議を要求すれば、就任後5回目となり、法案数では9件目の再議要求権行使になる。尹大統領はこれまでに糧穀管理法、看護法、黄色い封筒法、放送3法、2つの特検法(大庄洞50億クラブと、キム・ゴンヒ女史ドイツモーターズ株価操作疑惑に対する特検法)に拒否権を行使している。

 野党は「大統領の使い走りを自任する与党に、国民の怒りが積もっていることを肝に銘じよ」と国民の力を批判した。民主党のイム・オギョン院内報道担当はブリーフィングで、「梨泰院惨事の真相を明らかにし責任を問うことが、総選挙用の政争だとは、恥を知れ」、「本会議を通過した特別法は、特検の削除、特調委の活動および構成など、すでに十分に与党の意見を反映して譲歩した法案であるため、これ以上国民の力に拒否したり反対したりする大義名分はない」と述べた。与党が再交渉を主張していることに対しても、民主党は否定的な立場だ。民主党の院内指導部の関係者は「与党は特調委の構成を揺さぶり、事実上無力化することだけに関心がある」、「国会議長の仲裁を受け入れてできた現在の修正案からさらに後退したら、遺族を説得する方法がない」と語った。梨泰院惨事の遺族たちは与党の再議要求権建議に抗議し、ソウル龍山(ヨンサン)の大統領室前で剃髪(ていはつ)した。

シン・ミンジョン、オム・ジウォン、ペ・ジヒョン、ソン・ダムン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1125037.html韓国語原文入力:2024-01-18 19:19
訳D.K

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