釜山を訪問中だった野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表が60代の男性に凶器で切りつけられ、病院で緊急手術を受けた。イ代表は命に別状はないが、しばらく安静にして経過を見守る必要があると民主党の関係者は語った。野党第一党の代表が白昼に凶器で襲撃される事態が起きたことから、民主主義の根底を揺るがす深刻な脅威だと懸念する声があがっている。
2日午前10時29分ごろ、釜山市江西区(プサンシ・カンソグ)の加徳島(カドクト)新空港予定地近くの大項(テハン)展望台の前で、イ・ジェミョン代表は支持者だといって近づいてきたK氏(67)に鋭い凶器で首の左を切りつけられ、倒れた。事件当時、イ代表は新空港の予定地を視察後、記者団に対応しながら専用のバンへ向かって歩いていた。王冠をかたどった青い紙の帽子をかぶって専用バンの前で待っていたK氏は、イ代表が近づいてくると取材陣をかき分けて「サインしてほしい」と言って紙とペンを差し出し、イ代表が紙を受け取るとポケットに隠し持っていた凶器で切りつけた。襲われたイ代表は手で首を押さえながら倒れ込んだ。
現場を目撃したある民主党員はハンギョレに「支持者だと思った。おかしな様子もなく特異な点も見られなかったため、イ代表に近づいていっているにもかかわらず、周囲は特別な警戒心を持たなかった」と語った。K氏は犯行直後、党のスタッフと支持者に制圧され、近距離警護中だった警察に引き渡された。
襲撃直後、イ代表は救急ヘリで釜山市峨嵋洞(アミドン)の釜山大学病院圏域外傷センターの救急室に運ばれ治療を受けた。その後、「頸静脈(けいじょうみゃく)の損傷が疑われる」という医療スタッフの所見に従い、再びヘリコプターでソウル恵化洞(ヘファドン)のソウル大学病院に移送され、血管再建術を受けた。イ代表は2日午前10時ごろ、大項展望台から加徳島新空港の予定地を視察した後、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領の住む慶尚南道梁山(ヤンサン)の平山村(ピョンサンマウル)に向かう予定だった。
政界は、警察に厳正かつ徹底した捜査を求めた。民主党のクォン・チルスン首席報道担当は、「(イ代表に対する攻撃は)テロであり、民主主義に対する深刻な脅威」だとし、「警察は一点の疑惑もなく徹底的に捜査してほしい」と述べた。与党「国民の力」のハン・ドンフン非常対策委員長も「韓国社会に絶対にあってはならないことが起きた」とし、「捜査当局は厳正かつ迅速に捜査しなければならない」と述べた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領も「いかなる場合であってもこのような暴力行為を容認してはならない」とし、迅速な真相把握を指示した。
警察は釜山警察庁に捜査本部を設置し、K氏の犯行動機と共犯の有無を捜査中だ。警察は、K氏にはイ代表を殺害するという明白な意図があったとみて、殺人未遂容疑を適用することにしている。