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「全世界を揺るがす2つの戦争…『力には力』の対応は状況悪化させるだけ」

登録:2023-10-26 07:32 修正:2023-10-26 08:46
2023ハンギョレ-釜山国際シンポジウム 
基調演説:ストックホルム国際平和研究所のダン・スミス所長
2023ハンギョレ-釜山国際シンポジウムが25日午前、釜山海雲台区のヌリマルAPECハウスで開催され、ハンギョレ統一文化財団のムン・ジョンイン理事長とストックホルム国際平和研究所のダン・スミス所長が対談している=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 「昨年2月のロシアのウクライナ侵略以降、多くの専門家たちは、中国が台湾を武力で攻撃し、北朝鮮が南侵する可能性があると予想していたが、そのような懸念混じりの見通しが現実化する可能性はあまりないようにみえる」

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のダン・スミス所長は25日、釜山市海雲台区(プサンシ・ヘウンデグ)のヌリマルAPECハウスで開催された「第19回ハンギョレ-釜山国際シンポジウム」で基調演説と講演を行い、このように述べた。スミス所長は「ロシア-ウクライナ戦争」と「イスラエル-ハマス戦争」の経過、2つの戦争に対する国際社会の対応を比較・分析しつつ、このような見通しの根拠を多角的に提示した。

 同氏はまず、ロシアによるウクライナ侵略に対して欧州連合(EU)が「団結して迅速に断固とした対応を取ったこと」を想起させた。EUは「主権国に対する侵略は受け入れられない」ということで一致したということだ。同氏は「これは最近ガザ地区で繰り広げられている惨状に対してEUが一致できていない現実とは対照的だ」と付け加えた。そして「韓国(と台湾)も日本と同様に西側」だとし、「中国と北朝鮮の政治指導者たちには(米国やEUなどの)西側がどのように対応するかがすでに分かっているだろう」と述べた。

 二つ目の根拠は「ロシア-ウクライナ戦争」の戦況だ。

 同氏は「戦争が一方の勝利で終わる可能性も、早期終戦の可能性も非常に低い」と断言し、「双方とも互いを尊重するつもりはまったくないため、戦争が1~2年以内に、もしかしたら3~4年かかっても終わりそうにはない」との懸念を示した。また、「ロシアは経済制裁で(侵略の)代価を支払っているが、破局的な状況ではない」と述べた。

 司会を務めたハンギョレ統一文化財団のムン・ジョンイン理事長が「ある専門家は朝鮮半島の過去(の分断)がウクライナの未来になりうるとの見通しを示していたが」と問うと、スミス氏は「EUはロシアが武力でウクライナの領土を奪うことは容認できないと言っている。ウクライナの未来は韓国の状況とは少し異なるだろう」と答えた。また「出口を見出せず、約束なしに長引く戦況やEUの断固たる対応などを考慮すると、合理的な中国の専門家であれば(中国の)台湾侵攻は難しいと考えるだろう」と指摘した。

 スミス氏は「イスラエル-ハマス戦争」を特に懸念しつつ、「中途半端な話ではなく、全体の話をしなければならない」とし、「一方はハマスの暴力性ばかりを強調し、もう一方はイスラエルの空爆によるガザ地区の惨状ばかりを語る。全体を見ようとしてこそ惨状の出口が見出せる」と述べた。

 さらに「ハマスのイスラエル攻撃は衝撃的だが、この10~15年の間にイスラエルとパレスチナとの間にあった出来事を思い出せば驚くべきことではない」と語った。そして「ハマスの完全な除去やガザ地区からのパレスチナ人追放は現実性がまったくないため、解決策とはなりえない」とし、「共存の未来を追求することのみが唯一の現実的な出口」だと強調した。

 同氏は「力」に「力」で対応すれば状況を悪化させるだけだと警告した。

 2001年の9・11事件以降、「米国はテロとの戦争を繰り広げたが、テロは増えただけ」だということだ。同氏はイスラエルが「(パレスチナと共存する)二国家解決策」を受け入れなければ平和は得られないとの見通しを示しつつも、「二国家解決策」の早期実現は難しいだろうと述べた。「イスラエルとパレスチナの人々の大半は二国家解決策に好意的だが、これを実現する政治的基盤が整っていない」ということだ。

 このように、地球を揺るがす「2つの戦争」の早期終結と平和再建問題についてのスミス氏の分析と見通しは、楽観には程遠い。それでも「安保の重要な要素は協力だ。悪循環を好循環に変えなければならない」と強調した。世界の二大平和研究機関と呼ばれるオスロ国際平和研究所(1993~2001)とSIPRI(2015~)でいずれも所長を務めてきた「平和」問題の権威である同氏の訴えは重い。

釜山/イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1113637.html韓国語原文入力:2023-10-25 18:53
訳D.K

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