傘3本と氷水で暑さに耐えるキムさん
「サンチュ3千ウォン、コシラクナムル5千ウォン」
日中の気温が34度まで上がった今月1日午後、ソウル江西区禾谷洞(カンソグ・ファゴクトン)のある銀行の前に陣取ったキム・ウォルイェさん(82)は芋づるの下処理をしていた。この日午前10時から午後3時までの5時間もの間、キムさんは照りつける日差しを防ぐ術がないため、長い2本の傘と短い1本の傘で身一つ隠す陰を作って耐えつつ、野菜を売っていた。
「横断歩道前の日よけがある場所は『区役所の土地』だってことで、いたらだめだって言われるんです」。キムさんは熱くなったアスファルトの上に発泡スチロール一枚を敷いて座っていた。家から持ってきたという2本の氷水はすでに溶けて温かくなっていた。キムさんは「孫娘が大学院の試験に合格したのでお金がたくさんかかるだろうから、家計の足しにしようと思って出てきた」と言い、帽子の下を流れる汗をぬぐった。
記録的な猛暑が続く中、「食べていくためには仕方ない」と言って街頭に出る高齢者の健康が脅かされている。暑さは高齢者にとってはより過酷だからだ。高齢層は汗をかくなどの体温調節機能が低下しているうえ、熱中症を認知する機能も若年層より弱まっている。疾病管理庁の集計によると、2日現在で今年の熱中症患者の30%は65歳以上の高齢者で、熱中症によって死亡したと推定される16人のうちの13人も高齢者だった。
古紙を積んだリヤカーのそばで休むキムさん
1日午後3時ごろ、永登浦区永登浦本洞(ヨンドゥンポク・ヨンドゥンポボンドン)の路地で出会ったキム・ウォンファさん(74)は、古紙を山のように積んだ小さなリヤカーをそばに置き、1時間以上陰で呼吸を整えていた。キムさんは「危なくても食べていくためには仕方ないので出てきた。出てこなければこの程度も拾えない」と言ってため息をついた。
「死ぬのが心配で」出てこない仲間もいるという。近隣の古物商チェ・スングァンさん(72)は、「季節や天気に関係なく出てくる。暑くても生業だから仕方がない」と話した。別の古物商のAさん(42)は、「1日に30~40人ほど来る。危険だから午後には来るなと言っても来る方たちがいる」と語った。
清涼里(チョンニャンニ)駅近くで果物の露天を広げていたBさん(78)は、腰を押さえたままぼうっとした表情だった。午後4時ごろに取材に応じたBさんは「腰が痛くて病院費もかかったので何か売ろうと思って出てきた。朝から出てきて売れるまでいようと思っているが、あまり売れない」と話した。健康食品を売りながら市場を歩き回っていたCさん(82)は「この歳ではどこも働かせてくれないから、これでも売ろうと思って出てきた」と吐露した。
自治体の公営駐車場を清掃するLさん
地方自治体が提供する「高齢者雇用」の仕事も、酷暑期の野外作業は容易ではない。2日にソウル恩平区鷹岩洞(ウンピョング・ウンアムドン)の公営駐車場で出会ったLさん(77)は、早めに朝9時から掃除を始めていた。すべての階の床が鉄でできているため、時間がたてば空気が熱くなるからだ。駐車場で休む場所といえば事務所が唯一だが、エアコンもつけさせてくれないため家から大きな扇風機を持ってきてつけている。Lさんは、「上(屋上)に上がると長くいられないから、すぐ下りてこなきゃならない。午前11時になると暑くていられない」と言いながらしきりに手で顔をあおいだ。
区役所は、酷暑期には午後の時間帯の作業を午前に移動させてはいる。しかし、午前から照り付ける日差しは避けられない。高齢者雇用の仕事の一つとして安養川(アニャンチョン)で環境美化活動をしているJさん(68)は、40分連続で草むしり作業を行い、午前10時ごろにひと息ついた。河川周辺の木々には葉がないため、日差しをまともに浴びなければならなかった。Jさんはアームカバーとつばの広い帽子で重武装し、腰をできるだけかがめて日差しを防いでいた。Jさんは「生活費を稼ぐためにやっている」と言ってから、持っていたアイスクリームをあっという間に食べて再び草むらへと向かった。
嘉泉大学のユ・ジェオン教授(社会福祉学)は「猛暑の際には慢性疾患のある高齢者が無理に野外で働かないよう指針が必要であり、高齢者雇用事業も夏には屋内作業を中心として増やす必要がある」と述べた。