韓国大統領室は4日、「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が7日に大統領室で日本の岸田文雄首相と会談し、安全保障や先端産業、科学技術、青年・文化協力など両国間の主な関心事について協議する予定」だと発表した。
大統領室のイ・ドウン報道官は同日のブリーフィングで、「岸田首相は、韓日関係の改善を主導した尹大統領の勇気ある決断を高く評価し、これに少しでも応えるべく今回の答礼訪問を決心することになったと、秋葉剛男国家安全保障局長を通じて(3日)伝えてきた」と述べた。両首脳は少人数会合と全体会合を相次いで行った後、共同記者会見に臨む予定だという。
大統領室は、岸田首相の7~8日にわたる1泊2日の訪韓には「両国間シャトル外交が本格的に稼動する意味がある」と強調した。韓日シャトル外交は2011年12月以来12年ぶりで、尹大統領と岸田首相の会談は3月16日に東京で開かれてから52日ぶり。
しかし、今回の首脳会談で岸田首相が過去の歴史問題に対する謝罪と反省に直接言及しなかった場合、韓国の「一方的な譲歩外交」という批判は免れない見通しだ。今夏に予想される福島第一原発汚染水の海洋放出問題も、今回の会談の敏感な議題だ。
過去の歴史問題をめぐり、岸田首相は謝罪と反省に直接言及する代わりに、従来の立場を再確認するという見通しが示されている。共同通信は2日付で、外交筋の話として「岸田首相は、歴史認識に関する歴代内閣の立場を引き継いでいるとの姿勢を表明する方針」だと報道した。これは今年3月の韓日首脳会談で岸田首相が「1998年の日韓共同宣言を含め歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体的に引き継いでいる」と述べたのと同じ水準だ。当時、韓国では「謝罪とはいえない」という批判が出た。「歴代内閣の立場」には、「痛切な反省と心からのおわび」を表明した1998年の「金大中(キム・デジュン)-小渕共同宣言(日韓パートナーシップ宣言)」だけでなく、「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」という安倍談話(2015年8月14日)も含まれるからだ。
日本政府と東京電力が早ければ7月に福島原発汚染水を海に放出する計画であるだけに、今回の会談ではこれと関連した具体的な意見交換が行われる予定だ。大統領室関係者は「福島原発汚染水は両国間で議題に関する協議が終わっていない」としながらも「マスコミと国民が重要視するなら、あえて懸案から外す必要はないと思う」と述べた。韓国政府は2019年から韓日両国による調査も検討してきたが、これは国際原子力機関(IAEA)の検証過程を否定するものととられる可能性もあり、実際採択されるかは不透明だ。政府は現在、日本側から受け取った情報をもとに福島原発汚染水について独自の検証を行っている。しかし、これもまた日本が提供した情報に基づいたものであり、限界があると指摘されている。
高度化する北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対する両国の協力案も主要議題として取り上げられる予定だ。北朝鮮のミサイル警報情報をリアルタイムで共有する案などに関する後続協議が行われる見通しだ。ワシントンで韓米首脳会談が開かれてから10日後に開催される会談であることから、韓米日安保協力強化についての協議も予想される。経済分野では、半導体サプライチェーンの強化が主な関心事だ。岸田首相は訪韓翌日の8日、キム・ビョンジュン全国経済人連合会会長職務代行、チェ・テウォン大韓商工会議所会長、ソン・ギョンシク韓国経営者総協会会長、キム・ギムン中小企業中央会会長、チェ・ジンシク韓国中堅企業連合会会長ら6大経済団体長と面会し、韓日経済協力強化案について話し合う予定だ。同日、韓日議員連盟所属の与野党議員との面会も進められている。
両首脳と尹大統領の夫人のキム・ゴンヒ女史、岸田首相の夫人の岸田裕子女史が親交を深める行事にも関心が集まっている。今年3月に東京で歓待された尹大統領は、両首脳夫妻が参加する夕食会の会場として、ソウル漢南洞(ハンナムドン)の大統領官邸を最終候補に検討しているという。炭火焼肉などの伝統的な韓国料理と、日本酒を楽しむ岸田首相の好みを考慮し、韓国の清酒も用意されるという。
ただ、今回の会談で両国共同宣言文が発表される可能性は高くないとみられる。同関係者は「共同記者会見はするが、そこで何らかの宣言が出るとは考えにくい」と語った。