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北「明白な敵」、南「一戦辞さない構えで」…新年早々、朝鮮半島の軍事的緊張高まる

登録:2023-01-03 06:19 修正:2023-01-03 07:25
金総書記「2023年を戦争動員準備の転換の年に」 
戦術核搭載可能な放射砲発射 
尹大統領「挑発には確実な報復を」 
陸参総長、北朝鮮浸透訓練実施部隊を訪問
金正恩朝鮮労働党総書記は、労働党中央委第8期第6回全員会議拡大会議(12月26~31日)で、「南朝鮮傀儡は明白な敵だ」とし、「核弾(核兵器)保有量を幾何級数的に増やすことを要求」としたと、労働新聞が1日付で報じた/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 南北首脳が競い合うかのように「戦争への備え」を掲げ、南北が軍事的に真っ向から対決したことで、朝鮮半島が新年早々から戦争の恐怖の崖っぷちに追い込まれている。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記は、労働党中央委員会第8期第6回全員会議拡大会議(12月26~31日)で、韓国を明白な敵と規定し、「2023年を戦争動員準備と実戦能力向上から転換を起こす年にしなければならない」と述べた。金総書記は大型放射砲30門の実戦配備を控えて「南朝鮮(韓国)全域を射程に収める戦術核搭載まで可能だ」と述べた。

 これを受け、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は1日、主要軍指揮官らとの電話会議で、「韓国軍は一戦も辞さないという構えで、敵のいかなる挑発にも確実に報復しなければならない」と述べた。その後、国防部、合同参謀本部は報道資料を出し、「一戦を辞さぬ」方針を明らかにし、北朝鮮がもし核使用を企てるなら、金正恩政権は終焉を迎えるだろうと警告した。

 金正恩総書記は同日、好戦的かつ敵対的な対南政策の基調を示した。金総書記は「南朝鮮傀儡は明白な敵」だとしたうえで、「核弾(核兵器)の保有量を幾何級数的に増やすことを要求」するとし、「これを基本中心方向とする2023年度核武力および国防発展の変革的戦略を明らかにした」と、「労働新聞」が1日付で報道した。

 金総書記は12月31日、平壌(ピョンヤン)労働党本部庁舎で行われた「30門の600ミリ超大型放射砲贈呈式」の演説では、「南朝鮮全域を射程に収め、戦術核搭載まで可能だ」と述べた。「朝鮮中央通信」の報道によると、1日の未明には「人民軍西部地区の長距離砲兵区分隊から引き渡された超大型放射砲で1発の放射砲弾を東海に向かって発射した」と明らかにした。韓国の合同参謀本部は「1日午前2時50分頃、平壌龍城(ヨンソン)一帯から短距離弾道ミサイル1発が発射されたことを把握した」と発表した。北朝鮮の超大型放射砲は2019年8月、初の発射実験と共に開発事実が外部に公開され、理論の上では戦術核の搭載も可能だが、北朝鮮の核弾頭小型化技術が完成しておらず、まだ実現していない。

 南北首脳は同日、いずれも「対話」の代わりに「戦争」を強調した。金総書記は「対話」を口にせず、尹大統領も同日発表した新年の辞で南北関係と関連して何の言及もしなかった。今は南北首脳いずれも対話と交渉には関心や期待が全くないことを示したわけだ。

 金総書記は「我々の核武力は戦争抑止と平和安定の守護を第1の任務とみなすが、抑止失敗時の第2の使命は明らかに防衛ではなくほかのもの」だと明らかにした。さらに「迅速な核反撃能力を基本使命とするもう一つの大陸間弾道ミサイルシステムの開発に向けた課題」を示したと、「労働新聞」が報道した。韓国を狙った北朝鮮の戦術核兵器など「核反撃能力」強化方針の「抑止信頼性」(核兵器対応の実行能力と意志)を高めようとする意図的な発言だ。金総書記が開発を督励した「もう一つの大陸間弾道ミサイルシステム」とは、固体燃料の大陸間弾道ミサイルを意味する。金総書記は「国家宇宙開発局は最短期間内に朝鮮民主主義人民共和国初の軍事衛星を打ち上げるだろう」とも述べた。

尹錫悦大統領が今年元日、ソウル龍山の大統領室庁舎で合同参謀本部と陸・海・空・海兵隊など軍首脳部から準備態勢の報告を受け、激励している=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 尹大統領は同日、キム・スンギョム合同参謀議長ら軍指揮官らに、「わが軍は一戦を辞さないという構えで、敵のいかなる挑発にも確実に報復しなければならない」と指示した。その後、国防部は「北朝鮮がもし核使用を企てるなら、金正恩政権は終焉を迎えることになると厳重に警告する」と明らかにした。イ・ジョンソプ国防部長官は続けて、キム・スンギョム合同参謀議長および陸・海・空軍作戦司令官と緊急指揮官会議を開き、「北朝鮮が直接的な挑発を行った場合、自衛権のレベルで躊躇することなく、断固として強く報復しなければならない」とし、「一戦を辞さないという覚悟での報復だけが北朝鮮の挑発を抑制できる」と述べた。パク・ジョンファン陸軍参謀総長は縦心攻撃特殊訓練を実施している特殊任務旅団を訪問し、「皆さんが圧倒的な対応の核心部隊として敵に戦慄と恐怖の対象になるよう訓練に専念してほしい」と指示した。特殊任務旅団は、有事の際に平壌(ピョンヤン)など北朝鮮の中心に侵入し、主要施設の破壊や主要人物の除去作戦などを遂行する最精鋭特殊部隊だ。これに先立ち、尹錫悦大統領は12月29日、国防科学研究所を訪れ、「圧倒的に優れた戦争準備」を強調しており、翌日(12月30日)午後、国防部は固体燃料推進宇宙飛翔体の飛行テストを行った。

 金総書記も「強対強、真っ向勝負の対敵闘争原則」に基づき、「具体化した対米、対敵対応方向」を明らかにしたと、「労働新聞」が報じた。金総書記は米国に対しては「『同盟強化』の看板の下に『アジア版NATO』のような新しい軍事ブロック作りに余念がない」とし、韓国に対しては「敵対的軍事活動を活発に行い、対決的姿勢で挑戦に乗り出している」と述べた。そして「作られた情勢は米国と敵対勢力の軍事的動態に対処し、圧倒的な軍事力強化に倍の努力を傾けることを求めている」と語った。特に金総書記は「国際関係の構図が『新冷戦』体系に明確に転換され、多極化の流れが加速化している」と述べた。このような情勢認識のもとでは、対米・対南対話と交渉は現実性が低いため、政策の優先順位でも後回しにならざるを得ない。

 統一研究院が最近発表した「2023朝鮮半島年次情勢見通し」報告書は、「2023年が北朝鮮の核史上最も危険な年になる恐れがある」という見通しを示した。南北首脳が競い合って感情的な強硬発言を続けることで南北が「エスカレーションラダー(Escalation ladder)」を登り切らないよう、朝鮮半島情勢を管理しなければならないという指摘もある。釜山大学のチン・シウォン教授は「朝鮮半島危機が高まれば、米日は韓米日安全保障協力の強化の好機と捉える一方、中国とロシアも自国の利益に朝鮮半島の危機状況を活用するだろう」とし、「好戦的な雰囲気が続き、朝鮮半島の平和が揺さぶられれば、最大の被害者は南北住民たちになるだろう」と語った。ハンギョレ平和研究所のチョン・ウクシク所長は「今は朝鮮半島の軍事的緊張が激化しないことが重要だ」とし、「南北首脳共に軍事的緊張があまり高くならないよう、危機管理と意思疎通の問題など状況の管理に努めなければならない」と指摘した。

イ・ジェフン先任記者、クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1074008.html韓国語原文入力: 2023-01-02 17:50
訳H.J

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