尹錫悦大統領は21日、出勤途上の略式会見(ぶら下がり取材、ドアステッピング)を無期限に中断した。就任から6カ月と10日、略式会見場に仕切りを設置してわずか1日での出来事だ。文化放送(MBC)との対立をテコにした今回の決定については、尹大統領が掲げてきた「メディアとの直接の意思疎通」を自ら覆したという批判が出ている。
大統領室報道官室はこの日午前、「21日付けでドアステッピングを中止することを決めた。先日発生した望ましくない出来事についての根本的な再発防止策なしには継続できないと判断した」と述べた。大統領室の主要関係者は「騒動に近い行為が起き、再発の恐れがある中で、本来の趣旨が脅かされ国民を不快にさせるドアステッピングを維持する理由がない。より良いやり方で発展させうるという確信が持てれば、その時に再開を検討する」とし、無期限中止の方針を明らかにした。
大統領室が言及した「望ましくない出来事」とは、18日の略式会見を指すものとみられる。18日の略式会見で尹大統領は、MBCの取材陣が大統領専用機への搭乗から排除されたことについて、「同盟関係をフェイクニュースによって仲たがいさせようとする悪意ある態度を示したため、大統領の憲法擁護責任の一環として、やむを得ない措置だった」と述べた。その後、MBCの記者が背を向けた尹大統領に向かって「何をもって悪意ある態度と言うのか」と質問を投げかけ、イ・ギジョン広報企画秘書官がこれを制止したことで大声での口論となった。
大統領室は、MBCに対して不利益を与える考えも明確にした。大統領室は19日夜、大統領室記者団運営委員会(幹事団)に対し「再発防止のため、同社の記者に対する相応の措置を検討中だ」とし、出入り記者登録の取り消し(同社に対する1年以内の出入り記者推薦不可)▽記者室への出入り停止▽所属記者の交替要求、などが相応の方策であることを明示し、記者団の意見を求めた。大統領室の主要関係者は「特定のメディアや記者が抜けるからといって、取材を制限するわけではない」と述べた。事実上、略式会見再開の条件としてMBCに対する不利益措置を掲げたのだ。これに対して、大統領室記者団は「(MBCに対する)懲戒について議論できるとした規定がない」とし、意見提示を拒否した。
これにより、尹大統領が「龍山(ヨンサン)に大統領室を移した最も重要な理由」(就任100日記者会見)と強調した略式会見は、尹大統領就任195日目にして存廃の岐路に立たされた。この日、尹大統領は大統領室に出勤したが、前日に1階ロビーの出入り口付近に設置された合板の仕切りのせいで、記者団は大統領の出勤状況が確認できなかった。
野党は強く批判した。共に民主党のパク・ホングン院内代表は最高委員会議で「大統領が野党や国民の前に鉄の壁を作り、大統領室はメディアとの壁を作ったため、大韓民国政治には大きな絶壁が生じた」と述べた。正義党のキム・ヒソ首席報道担当も「(尹大統領が)青瓦台を出て国民との意思疎通を強調したのは見せかけのイベントだった」と指摘した。