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[3・1記念日特集]韓-中-日歴史教科書分析 | 韓国・日本教師 共同副教材討論

原文入力:2010-02-28午後07:22:57(4087字)
争点ごとに数時間…日帝‘供出’は‘収奪’と書くことに

パク・ジュヒ記者,キム・ミョンジン記者

←全教組大邱支部所属教師たち(左側)と日本,広島県教職員組合所属教師たち(右側)が去る25日、大邱,壽城洞の全教組大邱支部事務室で開かれた韓国・日本共同歴史教科書執筆のため近・現代史の部分討論会で教材草案を巡り討論を行っている。 大邱/キム・ミョンジン記者 littleprince@hani.co.kr

小早川健‘広島県教職員組合’執行委員長が 「‘供出’を全て‘収奪’に変えて書こう。日本国内で批判があろうと覚悟する」という話で2時間近く引っ張った‘供出 対 収奪’論争を整理した。

韓国・日本共同歴史副教材を執筆する際、日帝強制占領期間に日本が朝鮮で軍需物資を調達していく過程を叙述する部分から‘供出’と書いたものを全て‘収奪’に変えて書くことにした。‘供出’という表現が当時、朝鮮民衆らが自発的に軍需物資を賄ったとわい曲しかねないという指摘を日本の教師たちが受け入れたのだ。

日帝強制占領・戦後処理 歴史 4泊5日 12時間ずつ論争

2月26日大邱,寿城区の全教組大邱支部事務室。韓国・日本共同歴史教科書副教材出版を控え全教組大邱地部と日本,広島県教職員組合所属教師たちが教材草案を巡りきっ抗した討論を行った。

2005年に出した共同副教材<朝鮮通信使>と比べ、日帝強制占領期間と戦後処理が含まれた近現代史を扱った今回の本は執筆過程がはるかに難しかった。本を書くに先立ち両国の教師たちは‘国家的観点を離れ歴史的事実を生徒たちにありのまま伝達する’という原則を立てた。これを忠実に守ったおかげで大きな枠組みでは歴史的事実に対する認識の差は大きくなかった。

だが、その事実を教材でどんな用語で規定し叙述すべきかという具体的な表現方法を定める作業は容易ではなかった。毎日12時間を越えるマラソン討論を4泊5日間継続した。韓国・日本共同副教材が更に客観的な言語に整えられる過程だった。

日本, 王 戦争責任叙述に難色

■天皇の戦争責任
"弾丸をすでに2発受けたので3度目は大丈夫です。" 小早川執行委員長の話できっ抗した緊張を破り一度に笑いが起きた。太平洋戦争の責任を扱う部分で、韓国教師たちが "天皇の責任をより明確にする必要がある" と提案したことに対する返答だ。2003年、広島県教職員組合事務室に実弾2発が発射された事件があった。当時、教職員組合は日本右翼の歴史認識を批判し平和教育の先頭に立つ活動に不満を抱いた勢力らの威嚇を受けた。小早川執行委員長はこの事件を想起させ、日本で非常に敏感な問題である天皇の戦争責任を教材に直接叙述することは容易ではないという返事の代わりにしたのだ。韓国教師たちも日本の状況を十分に理解した。直接的な表現は避けながらも天皇と財閥,軍部に代表される戦争責任の主体を明確にしようということで両国教師たちの意見がまとまった。

‘従軍慰安婦’→‘日本軍慰安婦’に

■日本軍慰安婦
日本軍慰安婦について確認された歴史的事実に対しては論争する必要がなかった。ただし慰安婦を‘性奴隷’と表現するには国籍を離れて教師たちごとに意見が分かれた。ピン・スミン(32・大邱高)教師は "性奴隷と明確に書く必要がある" と主張した。パク・ジェホン(聖光高)教師は "学生たちに伝達するのに適切な表現かも考えてみなければならない" とした。日本教師たちは "日本では性奴隷という表現は書かず、教科書には‘従軍慰安婦’と書く" と説明した。激論の末に個人の意志で軍隊に付いて行ったという意味が含まれる‘従軍’という言葉を除き‘日本軍慰安婦’と書くことにした。この問題を叙述する時は "国家責任を追及するところから抜け出し、徹底して女性の観点で説明しよう" というチャン・デス(51・時至高)教師の意見に皆が同意した。一部の日本教師たちは草稿で慰安所を利用する軍人に対し‘いつ死ぬとも知れない戦場で荒廃して行った兵士たち’と書いた部分をそのままにしようと主張した。当時、戦争の惨状の中で疲弊されていく人間をよく表わす表現が生徒たちの理解を助けると見たのだ。韓国教師たちは驚いて飛び上がった。"女性を性的奴隷とした野蛮性を希薄にする恐れがある"という理由からだ。結局、この表現は日本側で再び検討することにした。

‘賠償’という表記、さらに議論することに

■国家賠償問題
日帝強制占領期間の強制徴用,徴兵,慰安婦などの被害に対する回復問題に移り、これを‘賠償’と書くか‘補償’と書くかについて、両国教師たちの間で意見が対抗した。韓国教師たちは戦争の責任が日本政府にあるという点を明確にしようとすれば‘賠償’と書かなければなければならないと主張した。これに対しキクヤマ マサミチ(57・宮島工業高校)教師は“(戦争責任を回避しようとする)日本政府に対し批判的”としながらも、教材に‘賠償’という用語を使うことには速やかに同意しなかった。日本教師たちは‘日本社会で賠償と区分せずに幅広く補償という表現が使われているので、あえて賠償と直して使う必要はない’という意見を明らかにした。これに反し、カン・テウォン(49・大邱科学高校)教師は“一般人が具体的に問い詰めずに補償と書くが、それがまさに政府の責任を隠そうとする意図であり‘補償’という用語に固執する日本政府や一部右翼言論が狙うこと”と指摘した。長い討論を経て両国教師たちは皆‘賠償’という言葉を使う趣旨には共感した。だが日本側は自国の情緒を無視し賠償という用語を使うことは難しいという意見を曲げなかった。こういう意見の差が狭まらなかったためなのか、一部韓国・日本共同歴史教材には日本本には‘補償’、韓国本には‘賠償’と表記している。両国教師たちは共同教材の正しい意味を生かすには便宜上両国教材に各々別の表現を使ってはならないという原則を守りたがった。今後、時間を置いて再び議論しなければならない課題として残した。

韓国人被爆者に対する賠償問題では日本教師たちが“南韓だけでなく北韓にいる被爆者らに対する賠償問題まで生徒たちに教える必要がある”と提案した。これに韓国教師たちが“私たちもそこまで考えなかったので、日本教師たちが先に言及してくれてありがとう”と答え、今回の教材で北韓被爆者賠償問題も扱うことにした。

大邱/パク・ジュヒ記者 hope@hani.co.kr

“支配者でなく民衆の観点で見た”

韓国側 チャン・テス教師

←韓国側チャン・テス教師

-今回の教材は歴史教科書とどのように変わっているか?

“概して教科書では国家主義的,民族主義的観点で歴史を扱っている。この副教材では支配論理ではなく民衆の観点で歴史的事実を叙述しようとし、教科書では外された地域史を補充した。”

-韓国・日本共同作業を通じて得た最も大きな成果は何か?

“日本について知らなかった多くの事実を知ることになり、深く理解することになった。依然として残っている植民史観の影響を克服できる機会にもなった。戦争の歴史を集中的に探ってみて、ぞっとする歴史の中の加害者や被害者とならないよう生徒たちを教育することが重要だという点を改めて悟った。”

-10年間 韓-日共同副教材作業をしてきて、どんな困難があったか?

“すべての討論と執筆過程が韓国語と日本語で同時になされた結果、通訳と翻訳を経て作業が予想よりはるかにゆっくりと進行された。時間的,経済的制約から執筆陣が会って議論する時間が常に不足していた。”

-新副教材は学校現場でどのように活用されるのか?

“事実だけを伝える授業ではなく、歴史認識と思考力を高める授業で資料として使えるだろう。生徒たちが入試にばかりしがみついていて授業時間に歴史副教材を活用する機会が不足した点が残念だ。”

大邱/パク・ジュヒ記者

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“政府次元での共同研究 はやくできることを”

日本側 小早川教組委員長

←日本側 小早川教組委員長

-‘歴史的事実とその意味については共感しながらも、教材にそのまま表現するには勇気が足りない’という韓国教師の指摘があったが?

“この本が日本社会で幅広く読まれるようにしたい。それでどちら側にも偏らずに歴史的事実をありのまま正確に書こうとした。韓国教師たちが主張する意味はよく分かりながらも、日本で広く使われている用語を使おうという理由でもある。だが右翼が意図的に使う言葉に対しては批判的な対応を続けるだろう。”

-現在の日本歴史教科書にはどんな問題点があるか?

“扶桑社や自由社教科書などは侵略戦争を美化し植民支配を正当化している。生徒たちに戦争加害の歴史について正確な事実を知らせていない。”

-今回の副教材が完成されれば学校現場でどのように活用されるか?

“管理・統制教育が強化されており、校長の許諾なしに教師が願ったからと授業時間に全面的に教材として使うことは難しい。補充教材として活用することはできる。”

-歴史教育と関連して日本教育当局に望む点は何か?

“民主党政権になり、自律教育が保障される側に政策が変わっていることに期待をかけている。鳩山総理が韓・中・日共同歴史研究に言及した経緯があるので一日も早く行動に移したら良い。この時に現場教師たちの役割を十分に生かすことができることを願う。”

大邱/パク・ジュヒ記者

原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/407304.html 訳J.S