「慰安婦被害者法」改正案に「事実の摘示による名誉毀損禁止」条項などが設けられ、批判が高まっている。
13日、共に民主党のイン・ジェグン議員は「日帝下日本軍慰安婦被害者に対する保護・支援及び記念事業等に関する法律」の改正案を代表発議した。同改正案には「何人も、公然と被害者や遺族を誹謗する目的で日本軍慰安婦被害者に関する事実を摘示したり、虚偽の事実を流布したりして、被害者、遺族または日本軍慰安婦関連団体の名誉を毀損してはならない」という内容が含まれてている。被害者と遺族だけでなく関連団体まで名誉毀損禁止対象にしている点と、虚偽事実だけでなく、事実の摘示まで名誉毀損と見なす点が問題と指摘された。正義記憶連帯理事長時代に後援金を流用した疑いで裁判にかけられているユン・ミヒャン議員(無所属)が同法案の共同発議者として参加し、「セルフ保護法」という非難の声もあがっている。
本紙は同法案の適切性を調べるため、趣旨と内容が類似した「済州(チェジュ)4・3事件法」「5・18民主化運動法」と比較した。これらは歴史を否定・歪曲して被害者を侮辱して名誉を毀損する事例を防止し、処罰するために作られたという共通点がある。
これら3件の法案及び法律のうち、事実の摘示による名誉毀損まで禁止しているのは「慰安婦被害者法」の改正案だけだ。「済州4・3事件法」は「何人も、公然と犠牲者や遺族を誹謗する目的で済州4・3事件の真相調査結果及び済州4・3事件に関する虚偽の事実を流布して犠牲者、遺族または遺族会など済州4・3事件関連団体の名誉を毀損してはならない」と定めている。虚偽事実に対する禁止条項が設けられているだけだ。「5・18民主化運動法」も5・18民主化運動に対する虚偽の事実を流布した者は、5年以下の懲役または5千万ウォン(約470万円)以下の罰金に処すると定めている。やはり虚偽事実の流布だけが処罰の対象だ。
被害者「関連団体」まで名誉毀損の禁止対象と見たという点は「済州4・3事件法」も同じだ。しかし同法には、「何人も犠牲者または遺族を支援するという名目の下、営利目的で団体を組織したり、団体的な活動または個人的な活動をしてはならず、これに違反した場合、3年以下の懲役または3000万ウォン(約280万円)以下の罰金に処する」という条項もある。被害者や遺族を支援する団体を保護すると同時に、団体の逸脱を牽制する仕組みも設けている。
「事実の摘示による名誉毀損」の処罰が表現の自由を萎縮させ、正当な告発を妨げるという指摘はこれまで絶えず提起されてきた。憲法訴願もあった。2017年8月、A氏は、公然と事実を明記し、人の名誉を傷つけた場合、懲役2年以下または500万ウォン(約47万円)以下の罰金を科すよう定めている刑法307条1項は表現の自由を侵害するとして、憲法訴願を出した。憲法裁判所は3月2日、事実の摘示による名誉毀損罪の条項は合憲だと判断した。