世界で急速に広がっている新型コロナの変異ウイルス「デルタ株」について十分な免疫を持つ“ワクチン接種完了者”が韓国の人口の10%以下である中、韓国で7月から緩和された新しい距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)が施行されれば、国内のデルタ株の感染拡大が加速化する可能性があるという懸念の声が高まっている。一部の専門家は食堂やカフェなどの営業制限を緩和しても、屋外マスク規則の緩和計画は撤回するなど、“個人防疫”の手綱を引き締め、“7月の瀬戸際”を乗り越えるべきと助言している。
新型コロナウイルス予防接種対応推進団は、韓国で25日0時までにワクチン接種を完了した人は、累積452万1785人だと発表した。人口の8.8%水準だ。60歳以上の高齢者層など1回目の接種が終わった人は1500万人以上で、人口の29.6%を占めているが、インドで初めて確認されたデルタ株への防御力が高い接種完了者は10%にも満たない。
英国の公衆保健局(PHE)は、デルタ株に対するワクチンの予防効果は、2回目まで接種を完了した場合はファイザー製が87.9%、アストラゼネカ製は59.8%に上るが、1回目だけの場合はそれぞれ33.2%、32.9%と低いレベルという分析結果を発表した。国内で最も多く発見されるアルファ株(英国型)も、1回目だけだと予防効果はファイザー製が49.2%、アストラゼネカ製は51.4%に過ぎない。
これに先立ち韓国政府は、屋外では人との間に2メートル間隔を置くことが難しい場合に限りマスクをつけるようにした防疫規則を緩和し、来月からは1回目の接種者は屋外で他人との距離を気にせずマスクを外すことができるとした。さらに7月からは改編距離措置のもと、私的な会合の人数制限や施設営業時間の制限などが大幅に緩和される。首都圏は私的な会合が可能な人数が4人から6人に増え、食堂やカフェの営業時間は首都圏は夜10時から午前0時までに延長される。非首都圏は私的な会合の人数制限がなくなるか、段階的な緩和措置が行われる可能性がある。中央事故収拾本部のソン・ヨンレ社会戦略班長は「27日に来月1日から施行する地域別距離措置の内容を具体的に説明する」とし、「ただし、一部の地方自治体では27日以降、さらに数日状況を見守ってから(最終内容を)決定する可能性もある」と述べた。
政府は距離措置の改編は予定通り進めるものの、7月第3週まではデルタ株に十分な対応力を備えたワクチン接種完了者の拡大に集中し、その後からは50代を対象にした1回目の接種を本格的に行う計画だ。政府は国内ではまだデルタ株が多く検出されていないと強調するが、すでに地域社会への拡散が始まっているだけに、広範囲な感染拡大は「時間の問題」だとの指摘も少なくない。高麗大学安山病院のチェ・ウォンソク教授(感染内科)は「デルタ株の対応戦略も結局は国内防疫対策を活用して拡散スピードを遅らせるのが重要」だとし、「ただし、防疫と日常の間のバランスも重要なので(距離措置の改編を猶予するよりは)屋外マスク着用規則を維持し、警戒心を緩めないようにすべきだ」と述べた。チェ教授は「屋外では比較的に感染リスクが低いが、だからといってマスクを付けなくてもいいことになれば、全般的に警戒心を緩めるきっかけになるだろう」と付け加えた。
一方、中央防疫対策本部は25日午前0時基準で、634人の感染者が新たに確認されるなど、3日連続で600人台の新規感染者数を記録したと発表した。