第4次産業革命と称される技術革新の波の一つの軸を担っている人工知能(AI)は、2010年代に入り飛躍的な発展をとげた。米国のスタンフォード大学の「人間中心AI研究所(HAI)」が発表した報告書によれば、2010年代のAIの性能改善のスピードは「ムーアの法則」より7倍も速かった。ムーアの法則は、コンピューターチップの性能(演算能力)が2年で2倍向上するという法則だ。2012年のジェフリー・ヒントン氏による画期的なディープラーニング(深層学習)技術の登場後に加速し、2010年代後半には3.4カ月で2倍向上した。
AIの潜在力を確認した主要先進国は、2010年代後半、中国を筆頭に相次いで国家レベルでのAI戦略を樹立した。主要国の間でAIの技術競争が始まり、伝統の最強国である米国とそれに挑む中国の間での神経戦も激しくなった。
各国がAIの技術開発に心血を注ぐ理由は、人間の生活に及ぼす影響力が大きいからだ。AIは、人間の職業や労働時間、労働方式はもちろん、日常生活全般に広範囲な影響を及ぼす。そのような人間社会全般に幅広い影響を与える技術を汎用技術と呼ぶ。電気やコンピューター、自動車エンジンなどが汎用技術に属する。
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2030年の最強国を狙う中国は9万件で「圧倒的な1位」
AIに技術革新の新風が吹いた2010年代に、韓国のAI技術も大きく跳躍したのだろうか。
国際的なデータベース分析会社のクラリベイトと韓国科学技術院(KAIST)の革新戦略政策研究センター(CISP)は25日、2010年代における韓国を含む主要10カ国のAI技術の革新成果を比較分析した報告書『グローバルAI革新競争:現在と未来』を発表した。韓国に対する評価は、端的にいって、量的な成長は目立ったが質的な成果は不十分だと要約される。
2010~2019年の世界のAI特許(発明)の件数と内容を分析した同報告書によれば、同期間中に全世界で出願されたAI技術特許は14万7000件で、年平均31%増加した。そのうち上位10カ国の特許件数は13万6000件で、全体の92%に達する。10カ国が全世界のAI技術の発展を主導しているということだ。
上位10カ国の特許件数は「2強・2中・6弱」の様相を呈した。なにより中国が9万1236件で、全体の60%を上回る圧倒的な1位だった。2030年のAI最強国を目標としている中国政府の大々的な物的・人的資源の投入が後押しした結果だ。伝統の強国である米国のAI特許は2万4708件にとどまった。
両国と大きな差をつけ、日本が6754件で3位、韓国が6317件で4位となった。5位以下のグループも韓国や日本との差が大きかった。ドイツ、台湾、英国、カナダ、フランス、インドがそれぞれ2280~529件で5~10位に入った。
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韓国、量から質中心の戦略に転換する時
韓国は量的な指標である特許件数では4位となったが、質的な評価指標は低調だった。出願特許のうち「特許引用指数(CPI=combined patent impact)の上位10%に入る割合」は平均8%にとどまった。特許出願された技術の影響力を意味するCPIは、他の技術に引用される度合いを示す。10カ国のCPI平均が14%である点を考慮すれば、特許技術は多かったが波及力は落ちるという話だ。
質的な面では、米国はCPIの上位10%に入る割合が43%で、圧倒的に世界最高だ。報告書は「米国は少なくない特許件数を有しながら最も優れた影響力を示しており、世界のAI技術の革新を導いているとみなせる」と評価した。
AI技術の水準を評価するもう一つの指標は、海外特許出願数だ。この分野では中国の自国出願の割合は約96%で、非常に独特な姿を示した。米国を始め、韓国、台湾、日本の自国出願の割合が60%であることとは対照的だ。しかし、このような数字は、中国の技術を見下す根拠にはならない。報告書は、中国の場合、自国の市場規模があまりにも大きいという要因が作用していると説明した。報告書は、国内市場が小さい韓国の場合、市場が大きい米国や日本より、海外出願が今以上にさらに活発でなければならないと指摘した。
報告書は「最終的には、グローバル市場での技術競争力は、技術革新の規模の競争ではなく、質的にいかに優秀な技術力を確保できるかによって左右される」とし、「今は量的な成長より、優れたな技術力を基盤とする質的な成長につなげられる戦略を確立しなければならない時」だと強調した。
報告書の作成を主導したキム・ウォンジュン教授(革新戦略研究センター長)は「研究主体別にみたAI特許の分布では、韓国は中国に次いで大学の割合が高いが、影響力の指標では大学は極めて低調だ」とし、「大学の技術開発の専門家と産業現場の専門家が有機的に協力し、競争力のある技術を作るAI環境の構成が必要だ」と述べた。