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[ニュース分析]北朝鮮はいつ「怪物ICBM」を作ったのか

登録:2020-10-13 00:58 修正:2020-10-13 12:19
北朝鮮の10日の軍事パレード最後に超大型ICBM登場 
2017年11月に発射に成功した火星-15型よりはるかに大きく 
「多弾頭能力確保」と推定する分析相次ぐ 

2019年2月の「ハノイのノー・ディール」後、12月に連続でエンジン実験 
実験成功後、「もう一つの戦略兵器に適用」談話発表 
朝米交渉が戦略兵器開発に導いたのではなく 
交渉の失敗が北朝鮮の核問題をますます複雑に
北朝鮮が今月10日、労働党創建75周年記念の軍事パレードで、米本土を射程圏内におさめる新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)を公開した。新型ICBMは、火星-15型よりミサイルの長さが長くなり、直径も太くなった/聯合ニュース

 「キム・ジョンシク上将が今、巨大な核戦略武力を率いて金日成(キム・イルソン)広場を通過しています」

 朝鮮労働党創建75周年を迎え、10日0時、平壌(ピョンヤン)の金日成広場で始まった軍事パレードで最も目を引いたのは、同日の行事の最後に登場した巨大な大陸間弾道ミサイル(ICBM)でした。北朝鮮が「巨大な核戦略武力」と表現した同ミサイルは、多くの面で朝鮮半島周辺国の関心を集めるのに十分でした。

 振り返ってみると、北朝鮮はすでに2017年11月29日に火星-15型の発射に成功し、彼らが米国本土を直接攻撃できる大陸間弾道ミサイルの開発に成功したことを立証しました。その後、それよりさらに巨大な弾道ミサイルを開発して公開したので、このミサイルは従来の火星-15型とは異なる特徴を持つと見るのが合理的な理解でしょう。

 まず、このミサイルは既存の火星-15型よりはるかに大きいです。火星-15型(9軸、18輪)よりはるかに大きい11軸(22輪)で支えられる移動式発射車両(TEL)に載せられていました。10日に公開された映像画面で見る限り、長さは約25~26メートル、直径は2.5~2.9メートルと推定されます。大きくなった分、火星-15型に比べて射程距離が長いか、より重い弾頭を積んで運べるに違いありません。しかし、すでに火星-15型が米国のニューヨークとワシントンを打撃できる能力を備えているため、それより遠い南米を狙うのでなければ、射程距離は重要ではありません。

 このため、専門家たちは、このミサイルが複数の弾頭を一度に搭載できる多弾頭(MIRVs)能力を備えているのではないかと推定しています。多弾頭とは、1つの弾道ミサイルに複数の弾頭が搭載されたミサイルを指します。「朝鮮日報」は12日付で、「2~3機の多弾頭を搭載し、ワシントンとニューヨークを同時に打撃できる可能性が高い」という見通しまで示しました。キム・ヨンチョル前統一部長官も12日、「文化放送」(MBC)の「キム・ジョンベの視線集中」に出演し、「今、専門家たちが多弾頭の可能性に注目している。そうした部分については、精密に検討する必要があると思う」と述べました。しかし、北朝鮮はまだこのミサイルの発射実験を行ったことがないため、正確な能力が確認されるまではもう少し時間がかかりそうです。

 ならば、自然に次の質問が思い浮かびます。北朝鮮は一体いつこの巨大な弾道弾を作ったのでしょうか。大陸間弾道ミサイルの開発は、どの国でも極秘とされる「戦略情報」であるため、これを正確に知ることはできません。しかし、ヒントはあります。北朝鮮が戦略兵器の開発過程を公開する方式で、外部世界に自らの考えを明らかにしてきたからです。

 巨大な大陸間弾道ミサイルを作るには、中核となる装置「エンジン」実験が必ず必要です。これに関連し、北朝鮮は、2019年2月28日にハノイで行われた「ノー・ディール」により朝米交渉が事実上頓挫したことを受け、同年末の12月7日と12月13日に東倉里(トンチャンリ)でそれぞれ「重大な実験が行われた」と発表しました。金正恩(キム・ジョンウン)委員長は同年4月に、年末までは米国の誠意ある対応を待つと公言しましたが、その期限の直前に実験を行ったのです。この事実を公開する北朝鮮官営「朝鮮中央通信」の報道をそのまま引用します。

朝鮮民主主義人民共和国国防科学院報道官発表(平壌12月8日発、朝鮮中央通信)

 2019年12月7日午後、西海(黄海)の衛星発射場では非常に重大な実験が行われた。

 朝鮮民主主義人民共和国国防科学院は重大な意義を持つ今回の実験の成功的な結果を朝鮮労働党中央委員会に報告した。

 今回行われた重大な実験の結果は、朝鮮民主主義人民共和国の戦略的地位をもう一度変化させる上で重要な働きをすることになるだろう。(了)

 2回目の発表では周辺国の耳目を集めたかったのか、実験時間を分単位まで正確に発表しました。

朝鮮民主主義人民共和国国防科学院報道官発表(平壌12月14日発、朝鮮中央通信)

 2019年12月13日22時41分から48分まで、西海衛星発射場では重大な試験が再び行われた。

 我が国防科学者たちは、現地で党中央の熱いお祝いの言葉をいただく栄光を持った。

 最近、我々が相次いで成し遂げている国防科学研究成果は、朝鮮民主主義人民共和国の信頼できる戦略的核戦争抑制力を一層強化するのに適用されるだろう。(了)

 その後、今回の軍事パレードにも登場したパク・ジョンチョン朝鮮人民軍総参謀長は(2019年12月)14日の談話で、「最近行われた国防科学研究実験の貴重な資料や経験、そして新しい技術は、米国の核の脅威を確固かつ頼もしく牽制・制圧するための朝鮮民主主義人民共和国のさらなる戦略兵器の開発にそのまま適用されるだろう」と述べました。さらに金正恩委員長は今年の新年の辞の代わりに発表した朝鮮労働党第7期第5回全員会議の結果発表を通じて「世界は遠からず北朝鮮が保有する新しい戦略兵器を目撃することになるだろう」という意味深長な発言を残しました。このような情報をもとに、この日登場した怪物大陸間弾道ミサイルのエンジン実験が昨年12月、2回にわたって行われ、その後10カ月程度の準備期間を経て、同日公開されたと合理的に推定することができます。

米国のドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長が昨年2月28日、1対1の単独首脳会談を終え、ベトナム・ハノイのソフィテル・レジェンド・メトロポールホテルの庭園で並んで歩いている/ 聯合ニュース

 この地点で非常に重要な疑問を抱くようになります。我々はこの怪物大陸間弾道ミサイルの開発を阻止することはできなかったのでしょうか。確かに、チャンスはありました。北朝鮮はこのエンジンの実験が、よく東倉里発射場と呼ばれる「西海衛星発射場」で行われたと発表しました。実は、北朝鮮のエンジン実験場とミサイル発射台は唯一ここだけにあります。

 2018年6月12日にシンガポールで開催された第1回朝米首脳会談から、北朝鮮はこれ以上弾道ミサイルを開発しないという“証拠”として、同施設を永久に廃棄する意向を表明しました。さらに北朝鮮外務省は、マイク・ポンペオ米国務長官の3回目の訪朝後に発表した7月7日の談話で、「非核化措置の一環として、ICBMの生産中止を物理的に確証するため、大出力発動機(エンジン)実験場を廃棄する問題」を米国に提案したと発表しました。また、南北首脳が合意した9・19平壌共同宣言では、「東倉里のエンジン実験場とミサイル発射台を、関係国の専門家立ち合いの下、まず永久的に廃棄する」と約束しました。単に廃棄にとどまらず、専門家の検証まで受けるという立場を明らかにしたのです。それで文在寅(ムン・ジェイン)大統領は平壌の共同宣言に対する対国民報告大会を通じてこの措置の意味を「今回、東倉里にあるミサイルのエンジン実験場と試験場と発射台を破棄するなら、もはや北朝鮮はさらなるミサイル発射もできなくなり、また、ミサイルをより発展させていくためのそのようなやり方もできない」と説明しました。しかし、朝米が互いに信頼を築き、一つずつ実効性のある非核化措置を取っていこうという北朝鮮の「段階的非核化」論と、北朝鮮の核施設の申告と検証を通じて一気に非核化を終わらせようという米国の「ビッグディール」論がベトナムのハノイで衝突し、朝米核交渉は事実上長い難関にぶつかってしまいました。

「西海衛星発射場」と呼ばれる東倉里発射台の様子//ハンギョレ新聞社

 米国のこの決定は正しかったのでしょうか。米国は、北朝鮮が望む「行動対行動」の段階的非核化は結局、北朝鮮を核保有国として認める結果につながりかねないという懸念を持っていました。そのため、寧辺(ヨンビョン)と東倉里を廃棄し、米国主導の主な制裁の解除を狙う金正恩委員長の「ハノイ提案」を受け入れませんでした。しかし、考えてみなければなりません。米国がハノイでより実用的で現実的なアプローチを取っていれば、我々は東倉里発射場と寧辺の核施設が消えた今とは全く異なる世界に住んでいたかもしれません。そして、これだけははっきり言えます。北朝鮮は10日に登場した「怪物大陸間弾道ミサイル」を決して作れなかったはずです。

キル・ユンヒョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/965421.html韓国語原文入力:2020-10-12 17:24
訳H.J

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