1971年4月、忠清北道陰城郡笙極面(ウムソングン・セングンミョン)で、密猟者が撃った銃弾で雄のコウノトリが死んだ。韓国の山河から天然記念物199号のコウノトリが消えた瞬間だ。残った雌はソウル大公園に運ばれ、1994年に死んだ。韓国の山河はもちろん、朝鮮半島からコウノトリが絶滅した。
韓国教員大学コウノトリ生態研究院は1996年、ロシアやドイツなどからコウノトリを移入し、人工繁殖、自然孵化などを通じてコウノトリを復元した。
コウノトリ生態研究院などは、2015年に忠清南道礼山郡光時面(イェサングン・クァンシミョン)にコウノトリ公園(13万5669平方メートル)を造成し、同年9月3日には8羽のコウノトリを放鳥した。韓国の山河からコウノトリが消えて以来、44年がたってのことだった。
5年前に山河に戻ったコウノトリはどうなっただろうか。今、韓国の山河には87羽のコウノトリが飛び回っている。礼山コウノトリ公園は今年も8羽を放鳥するなど、5年間で58羽のコウノトリを自然に帰した。
最近、韓国の山河にはコウノトリがぐんと増えている。コウノトリ公園周辺の忠清南道だけでなく、全羅北道、慶尚北道、忠清北道などでもコウノトリが目撃されている。飼育したコウノトリ(教員大学コウノトリ生態研究院47羽、礼山コウノトリ公園118羽)を自然に放してもいるが、自然に適応したコウノトリが野生状態で交尾し、着実に子孫を増やしているためだ。
2016年に1組のつがいが2羽を繁殖したのに続き、2017年には3組が9羽に増え、今年は5組が19羽になった。これまでに野生で繁殖した個体数だけでも49羽にのぼる。その間、放鳥、自然繁殖などで107羽まで増えたが、15羽が野生で死んでおり、5羽は野生への適応過程で怪我をして飼育場に戻ってきた。礼山コウノトリ公園研究チームのハ・ドンス博士は「自然に帰した後コウノトリが野生に適応しているので、着実に個体を増やしている。特に野生で繁殖するつがいが増えているのには励まされる」と話した。
文化財庁やコウノトリ公園などは、野生のコウノトリの全国化に向け、来年から全国各所にコウノトリ放飼場を造成する計画だ。忠清南道礼山に造成した6カ所の放飼場に続き、忠清北道清州(チョンジュ)、慶尚南道金海(キムヘ)、全羅北道高敞(コチャン)、全羅南道海南(へナム)の4カ所に放飼場を造成する計画だ。ハ博士は「すでに放鳥されたコウノトリの主な生息場所を調査したところ、これら4カ所に飛来したり生息したりする頻度が高かった。西海岸、干潟、湿地などがあり、コウノトリの生息に適した場所だ。清州は内陸部だが美湖川(ミホチョン)が流れており、最後のコウノトリが生息していた場所であるうえ、教員大学のコウノトリ生態研究院があるためか、よく飛んでくる」と話した。
コウノトリの北朝鮮訪問記録も興味深い。2015年のコウノトリ放鳥以降、全地球測位システム(GPS)が装着された47羽のうち15羽(32%)が北朝鮮を訪れている。2017年に放鳥された「カルファン」は、北江原道元山(ウォンサン)、黄海南道甕津(オンジン)、中国の丹東などを行き来していたことが分かっている。同じ年に放鳥された「ヘンウン」は北朝鮮、中国を超え、ロシアのアムール地域で営巣した。ハ博士は「かつてのコウノトリは餌、気候、生息環境などを求めて南北はもちろん中国、ロシア沿岸をまたにかける鳥だった。自然に帰ったコウノトリが南北を行き来し、活動範囲を広げているのは、ちゃんと野生に適応している証拠」と述べた。