とても平凡で、職場や道ですれ違っていたら目立ちもしなかったであろう服装だ。28歳の国会議員リュ・ホジョンが4日の国会本会議場に着てきた服は、同年代の同僚や友人がよく着るワンピースだった。しかし、その平凡さは国会議事堂のエメラルド色のドームの下では見慣れない装いだった。リュ議員のワンピースは「国会にふさわしくない服装」という議論を巻き起こし、一気にネットのリアルタイム検索キーワード第1位になった。
若い女性の平凡な服装がこのように爆発的な反応を起こしたということは、それだけ国会が韓国社会の「現実」とは異なる異質な空間であることを示している。第21代国会議員300人の平均年齢は54.9歳で、男性が81%を占める。平均財産は21億8千万ウォン(約1億9千万円)、出身職業は国会議員・政治家(220人)、法曹家(20人)、教授などの教育者(19人)、企業家(9人)の順だ。平均年齢42.6歳、性別の割合(女性50.1%、男性49.9%)、世帯平均資産4億3191万ウォン(約3800万円)である韓国社会の「平均」とは、様々な面でかけ離れている。55歳・男性・専門職・22億ウォンの資産家が支配する国会に登場した28歳・女性・前職労働者・財産7078万9千ウォン(約620万円)を持つリュ議員は、単に「ワンピース」のためではなく、存在そのものが「多様な人々の国会」という新たな代表性を象徴する。
西江大学現代政治研究所のソ・ボクキョン研究員はハンギョレの電話取材で「第17代国会で身体障がい者のチャン・ヒャンスク議員が当選した後、国会に初めて建物ごとに車椅子のための通路が作られた。その時初めて、障がい者が国会でセミナーも行ない、抗議もする機会を得た。チャン議員によって国会は初めて障がい者という新しい『社会的代表性』を獲得した」とし、「リュ議員は現実に存在する20代の女性たちはこのように考え、このような服を着て暮らしているという点を示したのだ。議会には黒いスーツもあり、赤いワンピースもあるべきだと思う」と述べた。また「リュ議員がマスコミの注目する対象になり、賛否の意見集団が分かれて論争するだけでも、韓国社会の政治的多様性に対する議論の進展だと思う」と評価した。
フェミニズム研究家のクォンキム・ヒョンヨン氏は、「20代の男性政治家を見るとほとんどが普段着ていないスーツを着ている。これまで20代にそのような公式な場に登場する機会が与えられていなかったため、他の世代と違って20代だけのTPO(時間・場所・状況による服)が存在しなかった」とし、「20代の服が国会に似合わないというのは、国会がこれまで20代を全く代表していなかったことを裏付けている」と分析した。
「民意の殿堂」というが、外国でも議会は国民に親しくアプローチするよりは、既得権の利害関係を代表し、権威を重視する空間として受け止められがちだ。このため「見慣れない衣装」は差別と慣行に抵抗するメッセージでもあった。米下院議員であり黒人のボビー・ラッシュ氏は、2012年に議事堂の演壇に上がり、黒人青年がパーカー姿で歩いていた時、白人の自警団員の銃に撃たれて死亡した事件に触れ、スーツの中に着ていたパーカーの帽子をかぶった。米女性下院議員らは2017年、ノースリーブの服を禁止する議会の暗黙的なドレスコードに対抗し、「ノースリーブ金曜日運動」を展開した。今年2月、英国のトレーシー・ブレイビン議員が片方の肩を露出した黒い服を着て議事進行発言をし、物議をかもした。ブレイビン議員は英国の政界で性差別問題について地道に発言してきた人物だ。特別な主張やメッセージを伝えようとする意図ではなく、単に業務の効率性のためにラフな服を着る議員も増えている。
リュ議員による「国会での服装」をめぐる物議は、2003年に当時ユ・シミン改革党議員が「白ズボン」を着て登院し、世論の非難を浴びてから17年後に起こった。しかし「ユ・シミンからリュ・ホジョンまで」流れてきたこれまでの歳月には変化があった。ユ元議員は、白ズボンをはいてきた翌日にはスーツを着た。リュ議員には、同僚議員の応援メッセージが数多く寄せられている。シム・サンジョン正義党代表はこの日、「ワンピースを着たい朝」と言い、リュ議員を激励した。イ・ウォヌク、コ・ミンジョン、キム・ナムグク議員など共に民主党の議員らも、フェイスブックで応援の書き込みを残した。
リュ議員の対応もこれまでとは違っていた。「ワンピース」の記事があふれた翌日の6日、彼女は空色のシャツにジーンズ、運動靴を履いて国会議員会館に出勤した。