韓国裁判所がセウォル号惨事当時の海洋警察の指揮部に対して検察が請求した拘束令状を棄却した。検察が事故発生から5年9カ月たって海洋警察指揮部の責任を認め、令状を請求したが、裁判所は救助指揮の法的責任をどこまで問えるのかをめぐり、法的な争いが必要と判断したものとみられる。救助遅延疑惑の究明後、政府の対応と外圧疑惑などに進もうとしていた検察の捜査日程に支障が避けられなくなった。
ソウル中央地裁イム・ミンソン令状専担部長判事は9日夜12時30分頃、キム・ソクキュン元海洋警察庁長とイ・チュンジェ前海洋警察治安監(当時海洋警察の警備安全局長)、ヨ・インテ済州(チェジュ)海洋警察庁長(当時海洋警備課長)などに対する拘束令状を棄却した。イム部長判事は「指揮ラインにいた被疑者が業務上過失による刑事責任を負うべき余地がある」としながらも、「現段階で逃亡および証拠隠滅の拘束事由や拘束の必要性と相当性を認めることは難しい」と述べた。同裁判所のシン・ジョンヨル令状専担部長判事も同日同じ時刻、「拘束の必要性および相当性が十分に証明されたとは考えにくい」とし、キム・スヒョン元西海地方海洋警察庁長やキム・ムンホン元木浦(モッポ)海洋警察署長、ユ・ヨンシク前海洋警察総警(当時西海庁状況担当官)らに対する拘束令状を棄却した。これに先立つ6日、セウォル号惨事特別捜査団(団長イム・グァンヒョク安山支庁長)は、キム元庁長など6人に対し、業務上過失致死傷や虚偽公文書作成および行使、職権乱用などの疑いで事前拘束令状を請求した。
検察は、キム元庁長らに救助指揮の責任があると主張したが、裁判所は法理の争いが必要だと判断した。キム元庁長は「道義的責任はあるが、法的責任はない」という立場だ。同日、拘束前被疑者審問(令状実質審査)を受けるため裁判所に出頭したキム元庁長は、「(惨事当時)緊迫した状況で、海洋警察は1人でも多く救助するため、渾身の努力を傾けた」と強調した。これについて、「民主社会のための弁護士の会」セウォル号TFチーム長のイ・ジョンイル弁護士は、「キム元庁長は受難救護法で定められている救助本部長としての法的責任を果たしていない」と述べた。
法曹界の一部では、業務上過失致死が認められるためには、「直接的な因果関係」が証明されなければならないという主張もある。検事長出身のある弁護士は、「海洋警察指揮部の過失が死亡の直接的な理由にならなければならない」とし、「業務上緻密ではなかったという理由だけで、業務上過失致死を認めるのは容易ではない」と説明した。
一方、セウォル号遺族は、キム元庁長らに対する令状実質審査が終わる頃、法廷に入り、事件の“被害者”として意見を提示した。4・16家族協議会のチャン・フン運営委員長は「責任を負うべき人が責任を負う姿を見せてこそ、惨事が再発しないという事実を強調した」と明らかにした。