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最高裁「李承晩、朴正煕の親日行為扱った『百年戦争』制裁は違法」

登録:2019-11-22 03:27 修正:2019-11-22 08:00
李承晩、朴正煕大統領を扱った歴史ドキュメンタリー 
2013年放映後、放通委が制裁…一、二審「制裁は合法」と判決 
制裁から6年経て最高裁7対6で原審破棄、差し戻し 
「視聴者制作放送、信頼度・影響力考慮すべき」 
「客観性・公正性・バランス・死者名誉尊重義務違反でない」
『百年戦争』//ハンギョレ新聞社

 最高裁は、李承晩(イ・スンマン)、朴正煕(パク・チョンヒ)両元大統領の親日行為などを扱ったドキュメンタリー『百年戦争』を2013年に放送通信委員会が制裁したのは違法との判決を下した。朴槿恵(パク・クネ)政権時代の制裁を適法と判断した一審、二審判決を最高裁が覆すものだ。

 最高裁判所全員合議体(裁判長キム・ミョンス最高裁長官、主審キム・ソンス判事)は21日、市民放送RTVが百年戦争に対する放通委の制裁処分の取り消しを求めて起こした訴訟の上告審で、原告敗訴の原審を破棄した。最高裁判事7人(キム・ミョンス最高裁長官、キム・ソンス、キム・サンファン、キム・ジェヒョン、ノ・ジョンヒ、ミン・ユスク、パク・ジョンファの各判事)は多数意見として「百年戦争が公正性、客観性、バランスの維持義務および死者の名誉尊重義務に違反したと見なすことはできない」と判断した。

 最高裁は、視聴者が制作したドキュメンタリー番組は、放送事業者が直接制作した番組より緩い審査基準を適用すべきとの前提を示した。放送に対する信頼度が異なり、放送が社会に与える影響力の違いを考慮すべきというのだ。最高裁はまた、『百年戦争』が主流の歴史的事実と解釈に疑問を呈し、多様な意見が交される場を設けようとしたが、それ自体が異なる解釈の可能性を前提としていると判断した。視聴者制作番組に対して既存の放送会社に適用するのと同じ審議基準を適用してはならず、番組自体も歴史的人物に対する多様な解釈を提示する内容だということだ。

 また最高裁は、百年戦争は李元大統領と朴元大統領の名誉を傷つけるものではないと判断した。最高裁は「歴史的事実や人物に対する後代の評価は、それぞれの価値観や歴史観によって多様に表れる。放送内容のうち、歴史的評価の対象となる公人の名誉が損なわれる事実が指摘されたとしても、特別な事情がない限り、死者の名誉尊重を規定した審議規定に違反したとはみなせない」と判断した。また「この放送は歴史的事実と人物に対する論争と再評価を目的にしているので、もっぱら公共の利益のためのもの」とし、「真実と多少違う部分があったとしても、真の事実だと信じる相当な理由があると思われる」と述べた。

 キム・ジェヒョン判事は多数意見に対する補充意見で、「表現行為に対する行政の制裁は表現の自由を侵害しかねないので、自律審議体系で行われるべき」と述べ、キム・ソンス、キム・サンファン両判事は「国民の歴史解釈と表現に対する国家権力介入の限界と程度」に言及し、「裁判所の慎重な姿勢が求められる」と述べた。

 一方、少数意見を提示した6人の判事(クォン・スニル、パク・サンオク、アン・チョルサン、イ・ドンウォン、イ・ギテク、チョ・ヒデの各判事)は、多数意見が主張する「緩い審査基準」の意味するところは、処分事由があるとき、放通委の証明責任の度合いを強めたり、制裁処分内容を決める際に裁量権行使を考慮せよという水準だと指摘した。また、『百年戦争』は両大統領に有利な部分は抜け落ち、編集意図に合致する一部分だけを抜粋して使用し、制作意図と異なる意見を紹介していないと指摘した。また侮辱的な表現で両大統領を嘲笑し、公共の利益に関するものと見ることはできないため、死者の名誉尊重義務を規定した審議規定に違反すると判断した。

 最高裁は今回の判決で、放送の客観性や公正性、バランスについても初めて判断した。客観性とは「事実を歪曲せずに証明可能な客観的事実に基づいて、可能な限り正確にありのままの事実を扱わなければならないということ」であり、公正性とは「社会的争点や利害関係が鋭く対立する事案について、多様な観点と意見を伝えることにおいて、偏向的に扱わないこと」と定義した。またバランスは「関連当事者や放送対象の社会的影響力、事案の属性、番組の性格などを考慮し、実質的に均等な機会を提供して公平に扱うこと」とした。最高裁の関係者は、「表現の自由を最大限保障すべきであり、根拠を備えた歴史に対する解釈と評価を国が制裁してはならないという趣旨の判決」と説明した。

 百年戦争は、進歩的性向を持つ歴史団体「民族問題研究所」が2012年に制作し、翌年1~3月にRTVが『百年戦争-二つの顔の李承晩』編を29回、『百年戦争-フレイザー報告書』編を26回放送した。韓国近現代史100年を独立運動家と親日派、その後裔たちの戦争と見て、両元大統領の功罪などを扱った。放通委は同年8月、放送審議に関する規定(公正性、客観性、名誉毀損)に違反したとして、番組関係者を懲戒・警告し、この事実を放送で伝えるよう命じた。

 2014年8月に一審、2015年7月に二審が、放送通信委員会による制裁を合法と判断した。朴槿恵前大統領の任期中だった。当時、裁判所は「元大統領に対する肯定的な評価なしに否定的な事例と評価のみで構成し、制作意図とは違った解釈がなされ得る部分は意図的に排除しており、事実を歪曲した」と判断した。死者に対する名誉毀損の疑いで起訴されたキム・ジヨン監督とプロデューサーのAさんは6月に最高裁で無罪が確定している。

チェ・ウリ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/917967.html韓国語原文入力:2019-11-21 17:04
訳D.K

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